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第7話 ずっと好きでした

日菜子は魔物になった智也のためにメイスを振るい魔物との駆け引きに入る。


恋煩いで苦しむような悲痛な叫びは日菜子自身も重く響いている。


そこで日菜子はメイスをギュっと強く握りしめて魔物に立ち向かった。


「智也!私に好きな人がいるって言ったけど…ずっと前からあなたが好きだったんだよ!でも…好みの女性とは程遠くて!私の恋は無駄なんじゃないかって思うと…辛くて仕方がなかった!でも今なら言える…いつも音楽に真っ直ぐで!私の女の子らしくないところも…笑うと可愛いって褒めてくれた!だから智也のために…プロのアイドルになれた!ありがとう!大好きっ!」


「ウグッ…!」


「だから必ず…あなたを助けてもう一度告白するもん!やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「グハァッ…!」


「ほう…恋心とは面倒な感情ですね…」


「もう一般の人は全員避難したわ!魔物はもう弱っているから必殺技を放って!」


「う、うん!わかった!ありったけの大好き…あいつに届け!クラブクラッシュ」


「ウア…!」


「なるほど…人間の恋愛というのはなかなか面白いですね…。ですが次はこうはいきませんよ」


日菜子はメイスに神々しい光を一点集中させて魔物の急所を思い切り叩き込む。


同時に魂に響き渡るように浄化させて元の体へ還る。


すると智也は目を覚まし、何が起こったのかわからないのか辺りを見渡す。


「ここは…?俺って何をしてたんだっけ…?」


「気が付いた?もう大丈夫だよ!」


「日菜子…?」


「さっき化け物が現れてね、誰かがその化け物をやっつけてくれたんだ!」


「そっか…。でも…不思議だ…。俺が檻の中に入っている間に…日菜子に似てた女の子が助けに来たような…。それに…大好きって告白されたような…気のせいだったのかな…」


「ううん…実は…」


「日菜子ちゃん…ミューズの騎士については秘密だよ?」


「う、うん…。きっと智也の幻だよ。でもね…私が…智也の事が好きっていうのは本当だよ…?幼稚園の頃にさ…私が男の子に混ざって遊んでたからさ…ガキ大将でもあった私の事を女らしくないってバカにされたの覚えてる…?」


「ああ…覚えているさ」


「その時に智也は…私の事を笑うとアイドルみたいで可愛いって言ってくれて…それが凄く嬉しかったんだ…。それからずっとアイドルになろうって頑張って…。アイドルになろうって思ったのも、もっと可愛くなろうって思えたのは智也のおかげ…。本当にありがとう…。それにね…私は智也が世界の誰よりも好きなの…。智也がいなかったら…夢だったアイドルになれなかった…。だから…ありがとう…大好き…///」


「なんだよ…結局同じだったのか…。俺も…日菜子の事が好きだ…。けど…こんな陰キャな俺がアイドルになった日菜子に振り向いてもらえるはずがないと諦めてた…。そして本当にプロになって遠くに行っちまったって思って…でも気のせいでよかった…。その…これからもよろしくな…日菜子…///」


「うん…大好き…///」


「どうしよう結衣ちゃん…アイドルって恋愛禁止じゃなかったっけ…?」


「いいえ、最近はアイドルも恋愛はOKなのよ。でも…引退までは秘密にしないといけないわね。それか開き直ってアイドルになったきっかけは大好きな人のためですってプロフに書くとかするかしら?」


「結衣ちゃんって何か楽しんでる…?」


「さぁね。それよりも日菜子の恋愛成就をお祝いしましょう。彼も一緒に喫茶店でも寄りましょう」


「うん!」


「けど…レコーディングはどうしようか?」


「やろうよ!せっかく智也が私のために作ったんだもん!無駄になんかしたくない!」


「そうだな…日菜子のためにも絶対成功させないと!やろうぜ!」


「うん!」


こうして日菜子は長くて淡い恋を成就させ、幼なじみとの共同レコーディングも成功に収めた。


そして結衣のご厚意によって4人で渋谷の喫茶店でお茶を飲み智也の作曲の理論について話したり結衣の芝居への情熱を話したりした。


しばらくすると帰りが遅くて心配になった秋山プロデューサーが目撃情報を頼りに喫茶店に着き少しだけ気まずい空気になった。


「先ほど代々木に魔物が現れてまさかと思ったけど…どうやら無事だったみたいだね…。よかった…」


「秋山プロデューサー!?ご迷惑をおかけしました!」


「いいんだ。それよりも君がTOMOこと…松田智也くんだね。君の作った曲をあれから探してみたんだ。有名なウタロイドプロデューサーだったとはね。君の作った曲は僕よりも素晴らしい。どうか今後はSBY48の作曲担当をしてほしい」


「え…いいんですか?この俺で…」


「君じゃないと困る。元々滝川留美先生だったが、彼女は世界的音楽家で多忙で契約更新が困難だったんだ。代わりを探したところ、君はアイドルソングが得意と知ってどうしても我がグループに欲しい逸材だったんだ」


「それじゃあお言葉に甘えます」


「それから篠田さん…この後に松田くんを連れて劇場の裏口に来てほしい」


「はい…!」


もしかしたら代々木の化け物の件で巻き込んでしまったことへのお咎めかと思った日菜子は恐る恐る劇場の裏口へ向かう。


緊張のあまりにドキドキが止まらないために智也の手を強く握り、智也は俺が護るから心配するなという目線でサインをする。


裏口に着いた日菜子たちは秋山プロデューサーの咳払いで覚悟を決めた。


「さて…あの事件の事は前田さんと大島さんから全部聞いたよ。君もミューズの騎士に選ばれたそうだね?」


「えっと…はい。」


「それも松田くんが魔物となってしまった。そこで篠田さんが助けて場を収めた。そこまではいい。でもね…まさかその彼に告白してお付き合いするとは予想外だったよ」


「う…!それは…ごめんなさい!」


「いや、アイドルによる恋愛自体は悪い事じゃない。ただ公になって売れなくなっても困る。だからといって引退や追放はしたくない。そこでプロフィールのアイドルになったきっかけに大好きな人に振り向いてもらうためと開き直りなさい。その代わりグループにいる間に別れたりしたら…もう仕事はないと思うんだよ?いいね?」


「はい!ありがとうございます!」


「松田くん…篠田さんの事をよろしくお願いします」


「こちらこそ…篠田さんの幼なじみとして、作曲担当として恥じないよう頑張ります!」


こうしてこの場を収めた秋山プロデューサーの懐の広さに日菜子はホッとする。


同時に恋愛が動機でアイドルになった事への責任感を強く持つようになる。


西暦時代はアイドルの恋愛自体は禁止で見つかったら炎上では済まなかったが、新暦になってからは多様性を重視された上にファンの民度も上がり恋愛が自由となった。


幸せは何も恋する事や結婚することだけではないし無理にする必要はないが、それでもそうする事で違った幸せを得る事が出来る。


だからといって恋愛するべきとか結婚するべきではなく、個人の自由で別々の幸せを感じる事が出来ればそれは未来への一歩ではないだろうか…。


つづく!

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