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第6話 恋心

彼女は篠田日菜子。


プロ野球チームの東京神宮スワローズを応援している天真爛漫な女の子。


そんな彼女は実は学校の部活でスクールアイドルとして活動している。


その中で彼女に届いたオファーとは…


「え…もう私がメジャーデビュー曲ですか!?」


「うん。当初の予定にはなかったけど、突然私宛てに完成された一曲が送られてきてね。素人からなのだが僕よりも完成度が高かったんだ。それも君にだけに送られたラブソングらしい。作詞はまだ甘いところはあるが僕のアレンジでそれなりになったと思う。そこで君には代々木にあるスタジオでレコーディングを行ってほしい。作曲者もそこに来るから頑張ってね」


「は、はい!頑張ります!」


日菜子は予想外の初仕事に意気揚々として張り切って歌のレッスンに励む。


元々歌う事が得意で視聴した人々の耳に残る明るくて朗らかな歌声が武器だったので歌う仕事は彼女にとって天職みたいなものだ。


レコーディング当日になり、日菜子はレコーディングするスタジオへ向かい、到着してすぐに発声練習を行った。


「あ~あ~あ~あ~あ~…♪」


「うん、今日もいい調子ね。篠田さんの歌声は聞いていると元気になれるよ」


「ありがとうございます!」


「おや?早速曲の提供者が来たみたいよ。いらっしゃい!」


「え…作曲者ってまさか…!?」


「ああ、日菜子。俺だ」


「智也じゃん!」


「ん?二人は知り合いなのかい?」


「はい。俺は松田智也です。篠田日菜子の幼なじみで、よく彼女の曲を作っていました」


「じゃあTOMOって…智也の事だったの!?」


「まぁ今までは学生だから本名でやってたもんな。知らなくて無理もないか。それよりもお前のために作ったラブソングだからしっかり歌ってくれよ。せっかくのデビュー曲を最高にしたいからさ」


「そこは任せてよ!私だってもうプロだもん!」


「ふーん…。二人は幼なじみねぇ…♪」


久しぶりの再会に盛り上がっていると歌のトレーナーは二人を見てニヤニヤと微笑んでいた。


それを見て気が付いた日菜子は照れ隠ししながらつっけんどんな態度になり、トレーナーはさらにニヤニヤしていた。


何を隠そう日菜子は十年間も松田智也に淡い片想いをしているのだ。


ただ日菜子は同じアイドル部の同級生から噂ながらお淑やかな黒髪ロングが好みのタイプと聞いていて、もう自分の恋は叶わないんだとやや悲観気味なのである。


それでも何故か彼は日菜子の事をずっと気にかけていて、小学校からやっていた大好きな野球をケガが理由とはいえやめて作曲を勉強し、日菜子をサポートし続けていた。


レコーディング中に日菜子は緊張のあまりにいつもの声が出なくなり、トレーナーは一旦レコーディングを中断させる。


「うーん…やっぱり身近にいる人が近くにいると緊張しちゃうのかな?それともずっと練習ばかりで疲れちゃった?」


「すみません…もう一回お願いします!」


「いいえ、これ以上連続で続けると喉に負担がかかるから一度休憩しましょう」


「すみません…。はぁ…」


「とりあえずお疲れ。神宮飲料のノムルト、好きだったよな。これでも飲んでくれ」


「ありがとう…」


「まぁ、誰しもはじめての事なんて緊張して思うように出来ないものさ。俺もはじめての作曲は苦労ばかりで…これじゃない、こうじゃないばかりだったんだ。でも経験を重ねる事でようやく秋山拓也さんに認められるようになったんだ。日菜子もあのプロデューサーに認められたんだろう?自信持っていつものように…」


「わかってる!わかってるけど…私さ…好きな人がいてさ…その人に振り向いてもらおうと思ってアイドルのオーディションに応募して…。それが合格してさ…もっとその好きな人から遠のいてしまって…。私…ダメな女だよね…。今のアイドルは恋愛が自由になったからっていい気になって…振り向いてもらおうなんて…お姫さま思考だよね…。こんな事…智也に愚痴言っても仕方ないよね…」


「そうか…。俺も…好きな人が遠くに行っちまって、このままじゃダメだと思って今の曲を作ったんだ。これは俺の敵わない淡い恋心を歌ったラブソングで、代理として日菜子に歌ってほしかったんだ。俺の気持ちを…代弁してほしくて…」


「おや?なかなか面白いですね。恋ですか…くだらない幻想を捨てて不幸にさせてでも奪えばいいのですよ。では早速…ダークネスパワーよ…くだらない幻想を捨て、この世界を未来なき世界に変えよ!」


「うっ…!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「智也!どうしたの!?智也っ!」


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「化け物がまた現れたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「え…?化け物…?」


「篠田さん!レコーディングは中断よ!早く逃げなさい!」


「でも智也が…!」


「今は檻の中だから無理だよ!あなたのことも大事だから逃げなさい!」


「はい…ありがとうございます!」


突然智也の胸から黒い魂が胸から出てきて智也は檻に閉じ込められ、その瞬間にヘッドホンを付けた人型の魔物が現れて代々木を暴れ回っていた。


日菜子たちは外に避難していると、謎のリーゼントヘアのインテリ風の男がポツリと立っていて、日菜子は勇気を出してその男の元へ向かう。


「オレノ…カタオモイ…カナワナイ…!」


「ちょっと!今化け物が現れて危ないから早く逃げてください!」


「いいえ、いいんです。あの化け物はこの私が生み出したのですから」


「何を言ってるの…?」


「申し遅れました。僕はアクムーン帝国の三銃士のブレインです。人間共の夢の力であるドリームパワーを奪いにやって来ました」


「それって確か…あかりがプロデューサーと話してた…」


「篠田さん!」


「とりあえず愛だの恋だの煩わしくて鬱陶しい感情など捨ててしまえばいいのです。現に彼だって叶わない恋をして苦しい思いをしています。そんなくだらない夢や幻想など諦めて自分の得意なものだけを極めればいいのです。それとも…その恋は都合のいい様に利用しているものですか?」


「何言ってるの…?彼は好きな人のために…どれだけ作曲の勉強をして、やっとプロに認められたっていうのに…その努力を全否定するの…?私だって彼に恋をしているし大好きだけど…彼がここまで頑張れたことに嬉しいって思うし…素直に応援したいって思う…。そんな智也の努力を…あなたなんかに馬鹿にされたくない!私の大好きな人は…くだらない恋なんかしていないっ!」


その瞬間…日菜子に心地よいオルガンの音色と混声合唱の声が聴こえる。


気が付けば手元には黄色いサイリウムが現れた。


日菜子は何が何だかわからない状態で唖然としていた中で、後から駆けつけたあかりと結衣が日菜子にこう叫ぶ。


「日菜子ちゃん…あなたが4人目の騎士なんだ!」


「騎士…私が…?」


「とにかく呪文を唱えなさい!」


「う、うん!ミューズナイツ!レッツミュージック!」


「HEY!HEI!HEY!」


結衣に言われるがまま変身の呪文を唱えてサイリウムを点火させ3回振る。


するとダブルボタンのセルリアンブルーのブレザーにレモンイエローのリボンとスカート、黒いブーツに銀色の飾緒に着替えていた。


武器は西洋の棍棒の一つである金属のメイスで、そのメイスをバトンのように振り回しながら浮かんだフレーズで名乗り始める。


「弾けるは心のビート!篠田日菜子!もしあの化け物が智也なら…助けた後に絶対告白する!だから待ってて!」


つづく!

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