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第4話 女優として

彼女の名は大島結衣。


4歳の頃から子役として活動していた14歳のアイドルである。


なぜ彼女はアイドルになろうとしたのか…それは今後女優として活動していく上でアイドルを経験すればみんなに振り向いてもらう方法を身につける可能性を感じたからだ。


彼女にはアイドルはレベルが低いという偏見がなく、むしろ女優として第一歩を踏み出せるきっかけにもなりうる無視できない存在だと認識していた。


そんな彼女のアイドル初仕事は…


「えー…わたくしがドラマ・ドルカツ学園の監督である小室周平です。よろしくお願いします」


「よろしくお願いします!」


「あなたが新人…いいえ、女優としては大先輩の大島結衣さんですね?」


「はい。大島結衣です。あなたは確か…」


「私は美月輝夜です」


「ええ。月ノ姫の最年少センターの方ですね。グループの件は残念でした。でも…こうしてアイドルの先輩と共演出来て光栄です」


「とんでもございません。私こそ女優の先輩と共演出来て恐縮です。よろしくお願いします」


このドラマはアイドルを目指す女の子たちの青春ドラマで大島結衣演じるアイドル二世でストイックながらも不器用でつっけんどんな「横山千里」と、主人公でアイドルの突出した才能はないけれど持ち前の努力と精神力で急成長を遂げる晩期大成の「月野咲耶」によるドラマだ。


しかも監督には数々の名ドラマを監督した小室周平でリラックスした空気で撮影をするがストイックで出演者をアゲてよりよい演技を出させる凄腕の人だった。


そんな中で撮影をするのだから結衣は撮影が楽しみで仕方がなかったのだ。


撮影が始まると早速女優たちの中学生らしい芝居に結衣は、こんな芝居があるのかと休憩しながらメモを取っていた。


それを見ていた監督は…


「あの子ってさ、芸歴がかなり長くて子役時代から活動しているのに全然偉そうにしないし、自分より短い子に質問とかアドバイスもらったりして凄いね。まったく鼻にかけないというか…これはきっと将来大物になるかもしれないな」


「そうですね。彼女は何か特別なオーラを感じます。何かこう…怠けている自分が恥ずかしくなってやるぞという気分になりますね」


「そうだな。さぁ我々も撮影を頑張ろう!結衣ちゃん!ここから君の出番だよ!」


「はい!よろしくお願いします!」


「あの子って子役から活躍している大島結衣じゃない…?」


「めっちゃ迫力あるわね…」


「でも芸歴一年の私にアドバイスが欲しいって来たよ…?」


「どこまでストイックなんだろう…?」


「あなたには突出した才能はないけれど…その努力家なところは認めるわ。でもね…あなたには努力のやり方があまりにも非効率的。ただ闇雲に頑張ればいいってものではないのよ」


「そんな…!私には才能がないっていうの…?」


「いいえ、才能はあるわ。ただ自分の良さを分かっていないだけ。私がプロデュースすれば、あなたは大成すると約束するわ。でも勘違いしないで。私は対等なライバルが早く欲しいだけ。一人だけ目立とうだなんて思い込みに陥って落ちぶれたくないから」


「あの…ありがとうございます!」


「はいOK!結衣ちゃんも輝夜ちゃんもいいねぇ!本当に中学生かい?」


「品川学園中等部の三年ですよ?」


「私は国立東光学園の高等部一年です」


「そうか。輝夜ちゃんは京都から神奈川に引っ越して寮暮らししてるもんね。大変だろうけど頑張ってね」


「ありがとうございます」


結衣は美月輝夜はただのアイドルではなく、一度世界に羽ばたいた元人気アイドルで芝居も中途半端にしない真っ直ぐな気持ちに負けられないと台本を何度も読み返した。


輝夜も結衣のストイックな姿勢に自分も年上として後輩にカッコ悪いところを見せられないと意気込んで台本を読み返した。


他の女優たちも本業として情けないところは見せられないと同時に、自分たちはまだ芝居に真っ直ぐではないと痛感し台本を何度も確認をする。


撮影は順調に進んでいった…はずだった。


「ふーん…演技の情熱ねぇ…。くだらない…早速やるか…。ダークネスパワーよ…くだらない幻想を捨て、この世界を未来なき世界に変えよ!」


「うっ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!あの子が…突然檻の中に…!」


「何…!?」


「何が起こったの…!?」


「みんな!早く撮影現場から離れるんだ!私は最後まで残る!早く!」


「大島さん!とにかく逃げましょう!」


「え、ええ!」


「シバイ…ワタシハ…ウソツキナノ…!」


「何が起こったの…!?」


突然共演者の女の子の胸から魂が分離され魔物が現れた。


結衣は輝夜に手を引かれてその場から遠くに離れようとした。


すると結衣にとって見慣れた人が颯爽と現れた。


「結衣ちゃん!お待たせ!」


「あかり…?」


「あの子の夢が利用されたんだ…だったら!ミューズナイツ!レッツミュージック!」


「HEY!HEY!HEY!」


「あかり…その姿は…!?」


「説明は後でするね!結衣ちゃんはその子を連れて早く逃げて!覚悟っ!」


「ウオォォォォォォォォォォォォッ!」


「うっ…!このパワーは一体…!」


「あかり…私の知らないところで…!」


「うう…!」


「あの子…気が付いたのね…!」


「大島さん!戻ったら危ないですよ!」


「さっき倒れた子を助けに行かないと!輝夜さんは先に逃げて!」


「わ、わかりました!」


「あれ…私は一体…?」


「大丈夫よ!私が来たから安心して!」


「大島さん…」


「やれやれ…こいつを助けるなんて…人間はよくわからないな…。」


「その声はどこからなの…!?」


「また人間に見つかって面倒だな…。」


「あなたは…また現れたんだ…!デプレシオ!」


「え…?」


「はぁ…そんなに構ってて大丈夫…?よそ見していると…」


「え…きゃあっ!」


「あかり!」


「やれやれ…芝居だなんてよくそんな嘘をつく事に情熱を注げるね…。実際にいるわけじゃない人物を演じて嘘の自分を見てもらうなんて…くだらない…。そんなに偽って何になるんだろうね…。」


デプレシオは他人の夢や努力を毛嫌いしていて何故そんな無駄な事を人間はするのか理解する気になれない無気力な三銃士の一人だ。


しかし結衣にとってはそんな事を知らないし、芝居を今までやってきた彼女にとって聞き捨てならない事だった。


結衣は人の努力を否定するデプレシオに怒りが込み上げ、倒れていた女の子を優しく寝かせて立ち上がる。


「あなたね…この子がどれだけ女優になりたくて…いろんな人にその人物を分かってもらおうと必死に台本を読み直して…物語を私たちと一緒に創ろうと努力したことをくだらないって一蹴するの…?確かに非効率的な努力は無駄かもしれないけど…それでも貴重な経験になって…将来別の事で役に立つかもしれないじゃない…!せっかくの経験を無駄にしたら…もう何も挑戦する事も…何かを好きになる事も出来なくなるのよ!そんな生きてるって感じをなくすことなんて…私には出来ないわ!」


結衣が努力への決意を叫ぶと結衣の耳からオルガンの音色と美しい混声合唱の声が聴こえはじめる。


あかりは結衣が耳を澄ませている様子を見て騎士になろうとしていると確信した。


すると結衣の右手には赤いサイリウムが現れ、それを見たあかりは結衣にこう叫んだ。


「結衣ちゃん!さっき私が唱えた呪文と動作を真似して!早く!」


「え、ええ!ミューズナイツ!レッツミュージック!」


「HEY!HEY!HEY!」


すかさず変身すると、さっきまでブレザー衣装だったのが正面だけ緋色で他がランプブラックのダブルボタン式の詰襟衣装で黄金の飾緒が飾られる。


緋色のスカートをなびかせて黒いブーツに銀色の大きな槍と斧を合わせたハルバードという武器が現れた。


結衣は突然思いついたフレーズで名乗り始める。


「重ねるは心のハーモニー!大島結衣!あなたのその人の努力を嘲笑う根性を…叩き直してあげるわ!」


つづく!

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