THE FACT6000回死んだ男が見た世界18話
THE FACT 6000回死んだ男が見た世界18話
Episode18 6000回死んだ男が見た世界
オリビアとルイは、ブレインで絶体絶命の危機に陥った。キャプテンを倒すべく頭脳を駆使して連携をするも、一瞬の隙に全滅の危機へと立場が逆転してしまう。そんな中、アンドロイドロボットのハチは自らの命を捨て、キャプテンに自らのデータ複製を転送し、データ超過を起こす事でキャプテンのプログラムを破壊するのに成功する。そして、本物の記憶盤をポセイドンへと接続し、映し出された映像には、当時のオリビアが映っていたのだった。
「映ってるかしら?ハァハァ……いい?時間がないの。全ての事を話すわ。そしてこの話は全て事実よ……」
「いい?……黒幕は……ゲイリー。ゲイリー・コーズウェルよ。彼は『生物液体保存装置』の開発者。この『人類他星移住保存計画』のマザーシップ『ITANIMU-III』の特別クルーの一人。そして私、オリビア・アデッソは『人類補助型アンドロイド及び戦闘アンドロイド』の技術者で特別クルーの一人。残りの三人の特別クルーは、ルイ・シーラン『ITANIMU-III』の開発者兼、設計者。ザビエル・ターナー『宇宙航海』の軌道を予測する技術者。最後に、マリック・ロドリゲス『ITANIMU-III』のクルー管理者。この五人が『ITANIMU-III』の特別クルー。そしてこの内の私オリビアと、ルイ・シーランはこの舟のキャプテンとして『特別権限』を有しているの。その特別権限とは、『移住惑星での指揮権限及び、都市設営の技術権限、全クルーの管理権限』。つまり、移住先の星での全ての権限が私とルイ・シーランにあるというわけよ。この権限は、特別クルーの中から選別され、一番適した二名が獲得できる。この権限は二名のキャプテンのみに与えられ、その権限の情報は、他の特別クルーでも知らない。それにアクセスするには、必ずキャプテンである私とルイ・シーランの網膜、指紋、血液、のスキャンが必要とされる。つまり、キャプテンの二名が移住惑星に到着する時に『生存』していなければ、この舟から降りることも、都市を設営する事も出来ない。つまりキャプテンは最重要人物。それで……そのキャプテンの選考に残ったのが、私とルイ・シーラン、ゲイリー・コーズウェルの三人だった。でもゲイリーは、精神に大きな問題を抱えていたことから、はねられた。幼少期のトラウマが原因らしいわ。それで、そのゲイリーがそれをよく思わなかった。キャプテンとしての権限を得たかったのね。それで、私達を『生物液体保存装置』に入れ、記憶を消し、移住惑星についた時、私とルイを利用して自分が特別権限を得ようとしているの……私とルイの記憶が消されれば、上手に利用できるから……。元々、特別クルー以外の液体ポッドには『再接続』という装置が備わっている。つまり、記憶が消されるの。特別クルーのポッドはそれが無い。記憶を残したまま、液体ポッドに入れるの。多くの人々が移住する上で、皆んなが記憶を有しているのは新しい惑星で人々を統治するのに、都合が悪い。だから特別クルーのみが記憶を消さずにいられるの。私はこの事実をゲイリーとそれから、マリック・ロドリゲスが二人で話して、計画しているのを知った。でも少し遅かったの……ルイはもう再接続されてしまった。数週間も前に……私はアンドロイドの技術者だから再接続する前にあれこれと利用されているの……そのおかげでこの映像を残す時間ができた。まず、アンドロイドの操作権限を全てゲイリーに渡せと脅されたわ……渡さなければ、ザビエル・ターナーを殺すと……奴らはこの新しい惑星についた時に、地を開拓するのに使う労働アンドロイドロボットを自分達の都合よく利用できる為の奴隷兵士として、改造する様に私を脅した。私は……そうするしかなかったの……そして、最後にはマリック・ロドリゲスを半アンドロイド人間に改造しろと、言われた。一番強いアンドロイドにしろ、と。そうして私は黄金のボディを持つ半アンドロイド人間を作らされた。中身はマリックよ……マリックもゲイリーの口に乗せられたのよ。ゲイリーは人を道具としかみてないの。自分の為に都合よく利用する為の、道具としかみていない。ザビエルも恐らく殺されるわ。ゲイリーにとって、ルイと私以外は不必要だから。ただ、ゲイリーに好意を示したマリックは殺される代わりに利用される、ただそれだけ……」
映像を見ていたルイとオリビアは、驚きの真実に言葉も出ない。ただ、流れ出る情報を必死にすくい上げる。再び、映像内のオリビアが話し始める。
「そう……この映像を見ているということは、『ITANIMU-III』についても話しておかなければならない。イタニムスリーは『人類移送大型母船』なの。今から話す事は信じられないかもしれないけれど、それでも……受け入れるしかないの。これは『人類誕生』の答えでもあるのだから。まず、Earth(地球)と呼ばれる私達の母なる星は、数千年前に終わりを迎えているの。私達『人類』は地球という星に生まれた一つの実験台にしかすぎないのよ……2020年。このビデオを撮影している何十年も前の話ね。2020年に、いや、もっと早い段階からかもしれない。大きな小惑星が、地球に向かっているとの観測がNASAによってなされたの。このことについて、各国のトップ達は『極秘情報』として一般に公開しないことにした。混乱を招く危険があったからよ。最初は、小惑星がそのままの軌道でいくと、地球に衝突することが分かっていたの。だから各国は力を合わせて、その小惑星を破壊する計画を極秘に進めていたの。でも、その小惑星が地球に接近するにつれて、更なる事実が明らかになったの。それは、接近して来た小惑星と思われた物体は、巨大な宇宙船だったの。その後、その物体は加速や減速を繰り返した。そこで国のトップは、二つの作戦を立てた。一つ目は、友好的なら異星人とコンタクトをとり、攻撃的なら、闘うというもの。二つ目は、最悪の場合に備えて、他の地球に似た惑星に『人類を移住させる』というもの。二つ目の作戦は、人類という種の絶滅を避ける為の、最終手段だったの。そしてその移住に使用される宇宙船こそが、『ITANIMU-III』だったってわけ。そして接近して来た物体は『オキュパー』と名付けられたの。一般市民に公表されたのは、オキュパー襲来の5年前。イタニムスリーの乗組員は『選別』によって選ばれた。その乗組員こそが私達であり、クルーなの。でも……本当わね……オキュパーの襲来は既に皆んなが知っていたの。『大富豪』や『お偉い様』達だけは……。実は、人類は『造られたの』。それはもちろん『神』でもあるのよ。でも、その神様を作ったのがいる。『細目を持った者達』。彼らは、何度も地球を滅ぼし、また作り出す。『実験』しているの。人類が地球上に生まれる前にも、人類以外の種が地球にいたの。地球には、文明リセットのカウントダウンが存在する。『細目を持った者』はそのカウントダウン内で、『種』をどの程度繁栄させることができるのかの実験を行なっているの。理由は、『自分達の種の繁栄のため』。畑のようなものなの、地球は。種を植えて、収穫時期が来たら収穫し、土を慣らして新たな種を飢える。つまり、その収穫時期が『オキュパー襲来』の日というわけなの。そして地球には『細目を持った者』以外の高次元生命体も観察に訪れていた。人類を利用する者、助ける者、実験にする者もいた。その中で無知の人類を助けようとした高次元生命体は、自らの知識を人類に分け与えたの。それが、地球上で優れたと言われる文明や、偉人と呼ばれる人々。彼らのおかげで地球は飛躍的に進歩した。さらに、人類に取り引きを持ちかける高次元生命体もいた。彼らは、人類を実験台として使用する代わりに、その見返りに『人類誕生の秘密』と、『高度な知識』を与えるという取引を持ち出した。この取引に応じたのが、国のトップの人々。勝手に条約を結んだの。でもね、残念なことに、国のトップの人々や、大富豪の人々は『人類』ではないの。『細目を持った者』が姿を変えて、人類になりすましているだけなの。だから彼らは『人類』を好きなように操作できるの。でも地球にいる彼らはどっちかといえば地球で人類を操るのが目的なだけなの。そして、その『細目を目をもった者』の中にも、人類を保護したいという者もいた。国のトップだけじゃなく、『人類』にそれを伝えようとした者がいた。でも、見つかってしまえば、ただじゃ済まない。そこで、人類の一部に、『真実』を伝えたの。それは世界的な有名人や、作家など、映画や本、絵画などの影響力などから『人類の創設』の真実を遠まわしに人類に伝えれるようにしたってわけ。それがいわゆる、『秘密組織』。真実の目。この宇宙船、『ITANIMU-III』の開発に投資したのも、その組織。つまり、地球は何度も滅びているの。そして人類だけじゃなかった。全てが遥かに高度な生命体に操られていたの。これが『地球』の、『人類誕生』の秘密。このITANIMU-IIIが向かう惑星は、Oatonと呼ばれる、地球に非常に似た惑星なの。そこで『人類』は新たな誕生を迎えることになる。」
ルイとオリビアは依然、唖然としている。
「ここからは、このITANIMU-IIIに話を戻すわ。つまり、そのOatonに到着するまでに、約1000年近くかかると推測されているの。そこで、『生物液体保存装置』を使用するの。この装置はね、特殊なケーブルがあって、クルーの身体に接続すことができる。クルーはみな、身体の三割をアンドロイドに改造しているの。こうする事で、過酷な環境にも耐えることができる。それを腰にある接続ポートに接続し、特殊な液体に浸る。説明すると、高度すぎて難しくなるから、簡単にいうとそれで『夢』を見る。その夢は、地球上の記憶。つまり、接続している間は、過去の地球上のシミュレーションの中に入るってわけなの。死ぬまで全く同じ、人類誕生からオキュパー襲来までの地球のシミュレーションを体験する事になる。生まれる時代や設定などはランダム。死ぬと接続が切れて、目が覚める。一般クルーは起きてすぐに、『再接続』される。私達、特別クルーだけが目覚めた後も記憶を持ったままでいられる。それを、ゲイリーが悪用しようとしているの。私達に一般クルー用の設定で接続させるつもりなの。そうすれば私達の記憶は消える。でも私たちが死ねば、この舟のキャプテンが死ぬことになる。だからゲイリーは接続しなくても大丈夫な様に、マリックをアンドロイド化して、キャプテンにするつもりなの。そして『最高の夢』を観ながら、優雅に宇宙の旅をするつもりなの。本当は、地球はずっと前に滅びてる。新しい惑星につくまで、私達はその過去の地球のシミュレーションを永遠にループする。シミュレーションで地球上にいる時、たまに同じ光景を見たことがあるだとか、前世の記憶があるだとか、未来が予知できるだとかも、このプログラムの誤作動が原因よ。この地球シュミレーションプログラムはそのまま『Earth』と呼ばれているわ。再接続を行うのが、私が開発した『人類補助型アンドロイド、及び戦闘アンドロイド』。戦闘アンドロイドは万が一の不具合で、クルーが目覚めて暴れ回った時、鎮圧する為のアンドロイド。補助型は白。戦闘用は黒。プログラムの制限権は私にある。それもゲイリーに取られた……。奴らは独自のアンドロイを作ろうともしている。そうなれば、イタニムスリーは崩壊するかもしれない……これが、私が語る、全ての真実。ゲイリーを止めなければならない。ルイが再接続される前に、防水を施した手帳をポケットに忍ばせた。私もその手帳をポケットに入れておくわ。本当は、このメモに書きたかったの。でも、ゲイリーがずっと私を監視している。今もゲイリーから逃げて来た。見つかるのは時間の問題なの。この撮影した記憶版は、私の手帳カバーの中に忍ばせておくわ。」
すると、おおきな爆発音がなった。
(ボン!)
「オリビア・アデッソ!!ここで何をしている!!なぜ逃げた!」
ゲイリーの声だ。
「やばいわ……ねぇ、お願い。この記憶版を見たなら、私の意思を受け継いで。ゲイリーを生かしておいたら駄目なの!」
オリビアが撮影のカメラを手で覆ったとこで、記憶版の再生は止まった。時間にして10分程度だろう。彼女は落ち着いて話しているつもりなのだろうが、声は震えていた。
ルイとオリビアは暫く声が出ない。真実を知ったからである。思った以上の事実に、元々の精神疲労に、ルイとオリビアの心は打ちのめされた。
「私達……何百年もの間、騙され続けていたのね……」
「あぁ」
「前世の記憶、私、クロエは存在しなかったのね……」
「あぁ。それどころか、俺達の記憶は過去の地球のシミュレーションだった……」
「こっちが『現実』だ。」
「何百年と時を経て、この手帳が、真実を繋いだ……」
「ザビエル・ターナーや、ハチ、ターニャとブレイヴ、そしてキャプテン。皆んな犠牲者だ。」
「いえ、ここのクルーも全員よ……許さないわ……ゲイリー!」
オリビアは立ち上がる。
「僕達は、奴を生かしてはおけない。僕達には『使命』がある。このイタニムスリーのクルーを、無事に『オアトン』に運ぶという義務が。そして、『人類を滅ぼさせない』という使命が。」
ルイも立ち上がる。
「僕は5999回、地球のシミュレーションを繰り返した。そして今、記憶を取り戻した。僕は今、新たに生まれたんだ。これが、『6000回目』の起床だ!」
「行きましょう……ゲイリーを倒しに……」
武器も無い。仲間もいない。体力も無い。
それでも彼らは、歩み始める。永遠の連鎖に終止符を打つために。
Episode19に続く




