新宿の磔刑
新宿のイエスは歩道橋に死す
身体を浮かせ
まばゆいフラッシュを浴びながら
公然の十字架に架けられる
新宿のイエスは歩道橋に死す
死してなお
広がる電波の中に浮遊する
その身体は大衆の欲によって
一枚の写真として飾られる
新宿のイエスは歩道橋に死す
南口には人は多いが
哀れみを投げる者はいない
みな興味をもち傍観する
言論は石となって死体に当てられる
新宿のイエスは歩道橋に死す
もし私があの場にいたら
おそらく私は本能のままに
カメラを彼に向けるだろう
私が最も嫌う眼差しで
磔刑を撮影するだろう
単なる偶然としても
あの場の人間は否応なく裁かれる
私や
たまたま場に居合せなかった者によって
新宿のイエスは歩道橋に死す
身体は傍観者の中で
重りとしてぶらさがる