4話 取り戻した日常
アーラン国の姫であるアリスが魔王に連れ去られた事件から、しばらくたった日のこと。
城内の庭園にあるテーブルに座り、エマとアリスは楽しくお茶会をしていた。
エマは単身魔王城に向かい、アリスを救い出したのだった。
そして、その功績により、城への出入りとアリスとの面会が許されるようになっていたのだった。
「まさか、昼から姫様にお会いできるようになるなんて、うれしいです。」
「ほんと、夜分に窓を開けて、密会なんてする必要なくなったわ。」
アリスは、そういうと紅茶の入ったカップを取り、口をつける。
「ふふふ。パジャマ姿の姫様と会うのは、私好きだったんですけどね。」
「何よ。そんなに服装がおかしかった?」
「いえ、可愛らしかったので。」
エマがそういうと、アリスは頬を赤らめる。
「ふん。なら夜も会いに来たらいいじゃない。」
「はい。」
エマは嬉しそうに答えた。
二人がお茶会を楽しんでいると、庭園に緩やかな冷たい風が吹き付けた。
アリスは風の匂いを嗅ぐと、エマの方をむっとした表情で見た。
「エマ、前から言いたかったんだけどあなたから火薬とか油の変な匂いがする。」
「え、そ、そうですか?」
エマは自身の服の匂いを嗅ぐと、確かに油や火薬の匂いがしていた。
武器、道具を作成することを生業としているため、服にも体にも染み付いていた。
エマも気にしてはいて、消臭剤使っていたが、染み付いた匂いは完全には取れないようだった。
「確かに臭うかもです。申し訳ないです。」
エマが悲しそうに謝るとアリスは、吹き出して笑う。
「ふふふ。こちらこそ、ごめんなさい。
その匂いはあなたが、頑張って働いている証拠だってわかってるのに。」
アリスが笑い出し、エマはほっとする。
「それで、この前も私を救ってくれたのにね。」
アリスは思い返すように空を見上げた。
エマもつられて、空を見上げると空は青々とした良い天気だった。
エマが顔を下ろし、アリスの方を向くと、アリスもエマの方を見ていて、二人は目が合う。
「エマ、本当に助けてくれて、ありがとうね。」
「いえ、私は姫様のためなら。」
「良かったら、これを使って。」
そういうとアリスは持っていたカバンの中から、香水を取り出す。
見るからに高価そうで、恐る恐るエマは受け取った。
「私も使っている香水よ。お花のいい香りがするの。」
「そんな、私にはもったいないです。」
「いいから早速使ってみて。」
そういうとアリスはわくわくするような顔でエマを見る。
エマはアリスがそう言うならと、香水を自身に吹きかける。
確かにアリスから漂う香りと同じような香りで、何か落ち着く。
と同時に近くにアリスを感じ取れて、意識すると胸の鼓動が早くなることを感じた。
「どれどれ。」
そういうとアリスはエマに近づき、匂いを嗅ごうとする。
エマはアリスに近づかれて、さらに胸の鼓動が早くなる。
「うん、だいぶ良くなったわ。今度からしっかりつけてきてね。」
「は、はい。」
エマは緊張しながら答えた。
その後も、二人は庭園でお茶会を楽しんだ。




