3話 魔王
そんなある日のこと、魔王城付近で魔王の手下との小さな衝突は度々あったアーラン国であったが、
魔王がアーラン国に単身で攻め入ってきたのである。
魔王は城門を打ち破ると、そこから堂々と入り込む。
騎士長であるゼルクを先頭に騎士隊は魔王に対抗しようとしたが、
魔王の魔力に動きを封じられ、魔王を城まで通してしまう。
魔王の目的はアリスだったのだ。
魔王は城に入ると、アリスの部屋を探し出し、アリスを拐おうとしていた。
兵士たちはただ、魔王が姫様の居室に入る姿を見ていることしかできなかった。
アリスの婚約者であるゼルクも、怯えている他の兵士の横で呆然と見ていた。
そこに一人の騎士見習いが、無謀にも魔王に立ち向かっていった。
その騎士の手には剣と筒のようなものが握られていたが、力差は明らかだった。
魔王は片手を挙げると、波動を飛ばし。騎士は無残にも壁にふっとばされた。
しかし、ふっとばされた見習いは立ち上がり、魔王のもとへボロボロの体で立ち向かっていく。
アリスは勇敢に立ち向かう騎士見習いのことを知っていた。
それは小さい頃にアリスのお付きだったエマだった。
エマは吹き飛ばされ続け、そのうち立ち上がらくなった。
そして、魔王はアリスを連れ、部屋から飛び上がると魔王城へと戻っていった。
ゼルクが魔王の拘束から解けて、アリスの部屋に向かうと、崩壊した部屋の中で、エマが立ち上がり、どこかに向かおうとしていた。
「どこにいくつもりだ?」
ゼルクはエマに声を掛ける。
「姫様を助けにいかないと。」
エマはそういうだけだった。
「何考えているんだ?一人で行くのは無謀だ。」
ゼルクは興奮しているようだったが、冷静に伝える。
「まずは一人で状況を見にいきます。」
というと、エマは、魔王のもとへボロボロの体で向かっていった。
ゼルク含めた兵士たちはその姿を見送るだけだった。
ゼルクは、兵士たち指揮し魔王とは全軍で戦わないと敵わないと踏んでいた。
しかし、エマは一人馬に乗り、魔王城へ単身乗り込んでいったのだ。