37話 姫様救出
エマとリリナス、騎士隊のメンバーは一度アーラン国に戻り、支度を済ますと冥界に向かった。
森を通り、冥界の入り口まで到着する。
冥界の入り口の悪魔は冥王から話を聞いているのか、素直に通してくれた。
そして、一同は冥王のところに辿り着いた。
冥王はエマと見てとると、大きな声で言った。
「宝玉を持ってきたのか。」
「はい、持ってきました。」
「ふ、よく手に入れたものだ。」
エマはカバンから宝玉を出す。
冥王は満足そうな笑みを浮かべた。
「その宝玉には何が閉じ込められているか知っているか?」
「悪魔が閉じ込められていると聞きました。」
「ハハハ、知っていて持ってきたのか。
そうだ。お前達の前にも、じきに現れるだろう。」
リリナスと騎士隊のメンバーは不安そうな表情をした。
しかし、エマは知ってのことであり、表情は変えなかった。
「さあ、それを渡してもらおうか。」
「まずは契約だ。」
エマは女神に言われたことを守り、冷静に契約を進めようとする。
冥界の王はサインした契約書を差し出す。
「ふん、これでいいか?」
そこには、宝玉の代わりにアリスの魂を返すことが記載されていた。
あとの条項は細かい内容であったが、エマは見逃さないように目を通す。
特に問題はないようだった。
エマも契約書にサインすると、契約に従って、冥王に宝玉を渡す。
すると、冥王は、手元の白いモヤモヤしたものを空に放つ。
「お前の欲する魂は解放された。」
冥王はそう言うと宝玉を大切そうに触る。
「エマだったな。お前には感謝するよ。じきに使いを出そう。」
冥王は笑いながら言った。
冥王の笑い声を後ろに、エマはすぐさま城に戻る。
エマは、馬を駆け、城に戻る。
アーラン国に近づくと、町中から歓声が上がっていた。
エマは期待がはち切れんばかりになり、馬をかける。
さらに城に近づくと、兵士たちも大きな声で歓声をあげていた。
エマは城に入り、アリスの部屋に走って向かう。
アリスの部屋の中に着くと、アリスは立ち上がっていて、リンをあやしていた。
アリスの表情はやさしく聖母のようだった。
「アリス、」
エマはアリスに駆け寄り、リンごと抱きしめる。
アリスもエマを抱きしめ返す。
三人は強く結ばれた。
リンも状況がわかっているのかわかっていないのか、大人しく抱きしめられていた。
「良かった。良かったよ。」
エマはアリスを抱きしめながら、子供のように泣きじゃくっていた。
エマはアリスを救うと誓っていた。
しかし、一ヶ月も魔女には会えず、冥界に行き冥王に会うに連れて、本当にアリスにまた会えるのかと疑問が生じることがあった。
疑問が生じる度に、エマの心は蝕まれていた。
しかし、それも終わった。
アリスと会え、触れ合える、それがエマには嬉しくてどうしようもなかった。
アリスはエマの頭を撫でる。
アリスの中では、リンにママと呼んでもらってからの記憶はなかった。
長い夢を見たような気持ちで、目を覚ますと、付き人は騒然とし、国王も涙していた。
国王からの話で、エマが自身を救うために動いていて、冥王の元に向かっていることを知ったのだった。
そして、リンを見て抱きしめると、成長したと思えるくらいに時が立っていることを実感した。
アリスは、エマの泣きじゃくる様子を見て、エマに心配をかけたことがよくわかった。
アリスの目にも涙が浮かんだ。
アリスはエマに思いっきり抱きつく。その顔には笑みが浮かんでいた。
「エマは、本当にどんなときも、私を助けてくれるね。大好き。ありがとう。」
エマはアリスを抱きとめる。
「私はアリスのことを誰よりも愛していますから。」
エマの目には涙が浮かんでいたが、笑みを浮かべた。




