32話 魔女の館
アリスが眠りについてから、何日も経つがアリスが目を覚ますことはなかった。
エマのときと同じように、魂を抜き取られていたようだった。
となれば、魔女が奪い取ったに違いなかった。
エマは、リンを付き人に預け、素早く支度すると、リリナスと共に魔女に会いに向かった。
しかし、以前に魔女の館があったところに到着するも、そこには館が見当たらなかった。
川のそばに館はあったはずだが、そこにはなかったのだ。
二人は、付近を探索するも見つからず、陽は落ちて夜になりつつあったので、エマは城に引き返すしかなかった。
エマは城に戻り、自身の執務室で考え込む。
「いったい魔女はどこに……。」
魔女は館ごと別の場所に移ったとしか思えなかったが、どこに向かったのか見当がつかなかった。
「……。明日にもう一度探しに行きましょう。」
リリナスはエマに言った。
次の日も、またその次の日も、エマは魔女を探索に森に向かったが魔女の館すら見つからなかった。
併せて国の中にいる知識人などに話を聞いてもいたが、役立ちそうな情報は得られなかった。
図書館で魔女に関する情報を調べると、魔女は結界を張って人から館を検知できないようにしている可能性があることはわかってはいたが、結界を破る方法がなかった。
リンも母親であるアリスが目を覚まさないことがわかったようで、泣いてばかりだった。
エマも尽くせる手がなく、精神的にも限界に来ていた。
アリスはただ静かに目を瞑り、ベッドの上で横たわっていた。
そして、魔女を探して、一ヶ月が過ぎた。
その日、エマは一人で森を回っていた。
一度は存在したはずの、魔女の館があった場所を再び探すも、そこには平地があるだけで、何もなかった。
ただ、地面を見ると、足跡は残っていて、生活していたものがいる気配はあったので、ここに館があったことは間違いないはずだった。
エマは、ふと側にある川を見た。
川に映る自身の姿を見ると、目には隈ができ、やつれているように見えた。
エマは、ここ一ヶ月睡眠もロクにされておらず、心労が溜まっていた。
川に映るエマの目から涙が流れ落ちた。
すると、スンと周りの空気が変わった気がした。
エマが、後ろを振り向くと、以前見た魔女の黒い館がそこにあった。