31話 幸せな時間
奪われたエマを魔女から取り返し、エマとアリスに平穏な日々が戻り、月日は流れていった。
エマは将軍補佐の職務に慣れていき、アーラン国を強化することに勤めていた。
本来であれば精神的にも肉体的にも疲れる仕事であったが、エマは楽しく働いていた。
エマの側には、いつもアリスがついていた。
アリスのお腹は日に日に大きくなっていた。
エマもアリスも今生きているものだけでなく、次の世代に生きるもののことを考えていた。
そして一年後、二人は可愛いらしい女の子を授かっていた。
女の子の名前はリンと名付けられた。
女の子の髪型はアリスと同じ金髪で、顔はエマににて色黒で、目や鼻、口の形もエマやアリスの面影があった。
リンが生まれ、エマもアリスも幸せだった。
アリスはリンに掛り切りになったので、エマの手伝いをすることはできなくなった。
エマは休憩時間などちょっとした時間を見つけると、すぐにアリスの居室に行き、アリスとリンの側にいた。
リンはすくすくと成長し、ますますアリスとエマと似ているように見えていった。
よちよち歩きからついには、立ち上がるようにもなっていた。
そんな、ある日のこと、
アリスとエマが、リンを優しい表情で見ていると、
「ママ、ママ」とリンは話したのだった。
「二人のママだよ。」
エマは幸せそうにそういうと、リンはキャッキャと笑った。
アリスはそれを見て本当に幸せそうな顔をし、目には涙が浮かんでいた。
そして、その次の日、アリスはベッドから起き上がらなかった。
エマは、アリスを何回も揺さぶるも何の反応も帰らなかった。
アリスは、ベッドの上で死んだように倒れていた。
その側で、リンはスヤスヤと眠っていた。