2話 道具屋
エマは城下町で、道具屋として働くことになった。
道具屋はエマの両親が切り盛りしていて、付き人を解雇された以上は、それを手伝うことになったのであった。
お店の近くには工場があり、そこでは道具だけでなく、武器も取り扱っていた。
工場はいくつかの部屋があり、エマも自身の部屋を持ち、道具や武器を作ることになった。
エマは小さい頃から、両親の姿を見て、自身でも道具を作っていたので、手先は器用だった。
工場に入った当初は、売り物を作ることに手間取っていたが、すぐに基本的なものはすぐに作れるようになっていた。
道具屋に道具を買いに来る人は、基本的に数も限られていたため、
エマが道具作りに慣れてくると、空いている時間が増えていった。
エマはその空いている時間に、好きに何かを作ることにした。
エマは道具として毒消しや薬草について作ることがあったので、薬品に関しても調査をしていた。
さらには、透明になれば城に潜入できるのではと考え、透明になる薬を作ろうと試したりしていた。
また、恋人にまつわる日が近づくと、住人からの要望と個人的な興味からも、惚れ薬を作ろうと試行していた。
しかし、それらは結局できなかったが、その副産物で強力な眠り薬や毒薬や爆薬などが作れるようになっていた。
道具屋としてエマは働いていたが、本当はエマはアリスの側にいたかった。
さらに、できることならアリスを守りたかった。
盗賊が襲われた時のような事態になったときに、アリスを守れるようになりたかった。
エマは道具屋としての仕事が終わると、毎日のように自身を鍛えていた。
町の訓練場に通い、一人で町外れで短刀を振りまわし、走り、筋力トレーニングをしていた。
ある日、いつものように町で訓練を積んでいると、声をかけられた。
それはアーラン国の将軍だった。
エマはアリスの付き人時代に将軍と会っていたこともあり、将軍はエマのことを覚えていた。
将軍はエマに、なぜ厳しく自身を鍛えているのか?と聞いた。
エマは答えた。
「それは姫様を守れるようになるためです。」
「それなら、騎士隊に入らないか?」
将軍にそう言われ、エマは騎士見習いとして入隊することになった。
といっても見習いであり、週に2,3回程度騎士隊の訓練に参加し、
担当日に城外、アーラン国周辺の見回りに参加したりするくらいだった。
ただ、騎士見習いでは城の中に自由に入ることはできず、アリスとの謁見はできないままだった。