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27話 新婚旅行

結婚式が終わり、エマとアリスの二人は新婚旅行に向かった。

旅行先は、魔王城の方にある海の見える見晴台の別荘だった。

魔王が力をつけ、魔王軍の勢力が高くなってからは放置されていた別荘だったが、魔王がいなくなってから綺麗に整備されたのであった。

今回の旅行も、本当は魔王城の状況確認という体裁の旅行であった。

しかし、実際の確認はゼルクが率いる騎士隊のメンバーがするため、

アリスとエマは数人の付き人と一緒に別荘に向かった。


結婚式が終わってから、エマは国王から伝えられた指令が常に頭の中に思い浮かんでいた。

指令を達成するための方法には、いくつか選択肢があるように見えた。

しかし、本当はどれも選びたくはなく、取りたい選択肢は別にあるはずだった。


エマとアリスの二人が乗る馬車は、城を出て森に入る。

そして、しばらく進むと、海が見えた。

天気は晴れわたり、真っ青な海が目の前に広がっていていた。

さらに進んでいくと、海の近くの見晴しのよいところに別荘があった。

二人は馬車から降りると、周りの海を眺める。


「きれい。」

アリスは美しい海の風景に喜んでいるようだった。

エマはアリスの喜んでいる表情を見て、満足そうに海を眺めた。

「あっちにビーチがあるみたいだから、泳ぎに行きましょ。」

アリスはそう言うと、別荘の側にある砂浜を指差す。

アリスはすぐに水着に着替えて、泳ぎたがっているようだった。


「ふふ。まずは別荘の中を見てからにしましょう。」

エマはアリスの手をとり、別荘の中にエスコートする。

別荘の中は広く、最近整備されただけあって、綺麗な内装だった。

エマもアリスの滞在する部屋も整備されていた。

誰のサプライズか、机などは二つあるのに、ベッドだけはキングサイズのものが一つだけだった。


「ふふっ」

アリスは笑いながら、ベッドに飛び、布団の柔らかさを確かめる。

そして、急に起き上がる。

「エマ、早く着替えて泳ぎに行くよ。」

そう言うと用意された水着に着替えていく。

エマも、アリスの姿を見て、乗り気ではなかったが、自身も着替えることにした。


二人は水着に着替え終わると、上着を羽織ってビーチに向かった。

ビーチには人はおらず、近くで待機している付き人を除くと、エマとアリスの二人っきりだった。

二人は上着を脱ぐ、海で泳ぐ。

海は美しく透き通るようで、温度もちょうどいいくらいの暖かさで快適に泳ぐことができた。

アリスは楽しそうに水の中を見て魚を見たり、水遊びをしていた。

エマは、砂浜の上で、そんなアリスの姿を見て微笑ましく見ていたが、ふと海の先を見た。

海の向こうは広く大きく広がっていた。


「エマ、何を考えてるの?」

気づけばアリスがエマのそばに近寄っていて、エマをじっと見つめていた。

「いえ、ちょっとしたことです。」

エマはごまかそうと元気そうに答える。

アリスは、真剣な眼差しでエマを見つめる。


「嘘。結婚式の後に私の父と本当は何を話したの?」

「え?」

「その後からずっと何か考えてる。」

「……。」

エマは答えられず、顔を俯ける。

アリスはとっくにエマが考え込んでいることに気づいていたのだった。

「私、エマが話してくれることをずっと待ってた。

ずっと悩んでいるのに、いつになっても話してくれない。この旅行でも悩んでる。お願い話して。」

「……。」

アリスは俯くエマの手を優しく取る。

エマは顔を上げるとアリスは優しい表情をしていた。

「エマ、二人で解決しようよ。私のことをもっと頼って。」

「アリス……。」

エマは今にも泣きそうな表情になりながら、アリスの手を取り、二人は見つめあう。

そして、エマはあの日に国王から告げられた指令をアリスに話すことを決めた。


「すいません。話せなくて。」

エマは国王からアーラン国の跡継ぎを残すように指令を受けたことを話した。

アリス姫は難しい表情をしていたが、驚いたようにも見えず、想像がついていたようだった。


「それで、どうしようと思ってるの?」

「私には言えないです。言いたくないです。」

「……。そうだよね。」

アリスとエマは海を眺めていた。

「ねぇ。泳ぎに行こ。」

「え?」

「難しいことばかり考えないで、せっかくの新婚旅行でしょ。泳ごうよ。」

「姫様。」


「コラ、こんなところで急に姫様と呼ばないで。」

「はい、アリス。」

二人は笑い合った。そして海に泳ぎに行った。

悩み解決したわけではないが、二人で悩みを共有したことで、エマの心は軽くなっていた。

エマもアリスも楽しく海で泳ぐことができた。


くたくたになるまで泳いでいると夕刻になっていた。

広大な空は赤く染まっていき、海に夕陽が綺麗に映った。

二人は、砂浜に隣りあい座って、沈んでいく夕陽を眺めた。


砂浜から別荘に戻ると、二人は夕飯を食べる。

泳ぎつかれたこともあり、空腹でいつもより多く食べる。

食べながら、二人はその日あったことを楽しく話し合った。

食べ終わり、楽しい気持ちで、二人は部屋に戻った。


エマは寝具に着替えると、すでに着替え終わったアリスがベッドの上に座り、エマを待っているかのように見ていた。

エマはアリスの横に座りながら、アリスの体に手を回し抱きしめる。

アリスもエマの腰に手を回し抱きしめ返す。

エマは大人しいアリスを可愛らしく思い、頭を撫でる。

アリスは目を瞑りエマに体を預ける。

そして、アリスはエマに頭をすりすりすると、エマの胸に顔を押し付ける。


「アリス?」

「……。私はエマとの子供が欲しい。」

「……。私も。」

エマとアリスは向かい合い、熱い口づけを交わす。

二人は熱い夜を過ごした。



次の日の朝になった。

エマはアリスの寝顔を見ながら、昨日のことを思い出していた。

そして、決めた。


アリスとの子供を作ると。

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