25話 素敵な夜
エマが率いた討伐隊は、無事に魔王の討伐、アリスの救出を成功させ、帰還した。
討伐隊の中には怪我をしたものはいたが、犠牲者はなしだった。
魔王軍と正面衝突したにも関わらずの成果であり、国中が湧いた。
そして、盛大に祝勝会が開かれた。
祝勝会ではみんな飲みはしゃぎ、楽しい時間を過ごした。
祝勝会の中で、討伐隊に褒賞が送られていく。
エマの褒賞は、なんと魔王城がもらえることになった。
エマは嬉しいような、ただ単に押し付けられただけのようにも思え、苦笑いするしかなかった。
夜も更けてきて、祝勝会もお開きになった。
エマはアリスの手を取り、アリスの部屋までエスコートする。
そして、部屋の前に来るとエマは、アリスを抱きしめていた。
「アリス、ご無事で本当によかった。」
アリスは抱きしめられて照れた表情をし、エマを抱きしめ返す。
「私もエマが無事でよかった。魔王は私よりむしろエマをお妃にしたかったみたいだし。」
「捕えられて連れ去られそうになったときにそう感じましたが、魔王も私を連れ去ろうとするのは変わってますね。」
「あなたも結構可愛いところあるからね。」
「え、そうですか。へへへ。」
エマはそう照れ笑いする。アリスもそれにつられて笑う。
「魔王が言ってたけど、あなたには力があるそうよ。」
「……。力ですか?あんまりない気がしますけどね。」
「ふふ、そんなことないわ。私は世界で一番エマを頼りにしてるよ。」
「アリスにそう言われると、嬉しいです。」
二人はぎゅっと抱きしめ合う。
そして、体を離すと、エマはアリスに会釈する。
「今日はお疲れでしょうから、私はこれで失礼します。」
エマはそう伝えると、あっさり部屋をさろうとした。
後ろに振り返り数歩歩くと、後ろから柔らかく暖かいものが当たった。
アリスは、エマに走り寄り、後ろから抱きついていた。
ぎゅっとエマに強く抱きつく。
エマはアリスに抱きつかれたことで、胸が高鳴り、振り返ると、アリスと目が合う。
アリスは赤くなっていて、何か物足りない表情をしていた。
エマは、アリスのことを押し倒したい衝動にかられた。
そして、気づくとアリスを抱きかかえ、アリスの部屋に入り、ベッドに押し倒していた。
「エマ、」
ベッドに押し倒したアリスに声をかけられ、衝動から冷静さを取りもどす。
「あ、申し訳ございません。」
とエマは慌てて、アリスから離れようとした。
しかし、アリスは押し倒されたままで、エマの腕を取り、離れさせない。
「アリス?」
「……。」
アリスは頬を染めて目を瞑る。
エマは、アリスが何をして欲しいかわかった気がした。
顔を近づけ、口づけをする。
そして、顔を近づけたまま、お互いに目を合わす。
「私にはアリスだけです。アリスだけを愛しています。」
「私もエマだけを愛しています。」
アリスは顔を真っ赤にして可愛らしく言った。
アリスの姿は可憐で美しく気づけば私は……。
朝になり、外でチュンチュンと雀が泣いていた。
エマは世界で一番幸せな気持ちだった。やったやった。
この世は何て素晴らしいんだと実感していた。
エマが、アリスの方を見ると逆向きだったが、耳を真っ赤にして赤面しているようだった。
「アリス起きてますか?」
「……うん。」
アリスは昨日のことを思い出しているようで、恥ずかしそうに答える。
エマはアリスのその反応が夜のことを思い出させ、幸せな気持ちになった。
「ふふふ。結ばれちゃいましたね。」
「うん。私もエマと結ばれた気がした。」
「姫様は本当に可愛らしくて、すごくよろこば」
「それ以上いったら怒るわよ。」
アリスは顔を真っ赤にしてぷんと怒った表情をする。
エマは、アリスの照れている姿を可愛らしく思う。
「そんなぁ。すごくかわいかったです。」
「……。エッチ。」
アリスはそういうと、後ろ向きになる。
その姿は小動物のようで、可愛らしくエマは後ろから抱きつく。
「ふふふ。姫様ー。」
「もう、やめてって。」
「姫様、姫様ー。」
エマは子供のように抱きつく。
「やめてって、もう。」
そういうと、アリスはエマの方を向く。
アリスの顔には幸せそうな笑みが浮かんでいた。
「……。二人のときは姫様って呼ばないで。」
「え?」
「もう、私たちはそういう仲でしょ。呼んで。」
「……アリス。」
「エマ。」
朝日に包まれながら、二人は抱きしめあった。