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24話 魔王再び

魔王が再び現れ、アリスをさらっていったその日、

エマは早急に魔王討伐の準備を始める必要があった。

エマに優位な点はなく、事前に取れる策もないため、魔王と正面からぶつかることは間違いなかった。

そうなると、魔王に勝つ確率を可能な限り上げるため、には持てる総力を尽くすだけだった。


エマはまずは騎士隊のメンバーに声をかけ、魔王城に向かうよう配備を進めた。

その間に、可能な限り、メンバーを集めに務めた。

魔王に正面から立ち向かうには騎士隊のメンバーだけでは力不足であるとわかっていたからだ。


エマは、門番の詰所に向かった。

詰所には、騎士隊を追われ、門兵として働いていたゼルクがいた。

「ゼルクさん、お久しぶりです、エマです。」

「……。何かようか?」

ゼルクは騎士長だったときの意気はなく、淡々と話す。


「ゼルクさん、手助けしてください。」

「魔王が来たようだが、残念ながら俺は門番だから、門の上を通られると何もできないんだ。」

と自嘲気味にゼルクは話す。


「お願いです。姫様を救い出すためにゼルクさんの力が必要なんです。」

「……。お前は本当に。俺を出したら後ろから刺されるかもしれないぞ。」

「ゼルクさんは、そんなことしないです。」

エマは、真剣な眼差しでゼルクを見た。

ゼルクも負けじとエマを見返す。

エマはアーラン国一と言われるゼルクが力になってくれるまでは、動くつもりはなかった。

ゼルクは根負けし、目をそらした。

「わかった。すぐに支度する。門番の俺が出征する話は、俺から将軍に話す。」

そういうと、ゼルクは立ち上がり将軍の執務室に向かって行った。


討伐隊の準備が進み、出発の時が来た。

エマは、最後に将軍のいる執務室に行き、将軍に作戦を伝えた。

将軍は作戦を承認、エマのアリス姫救出、魔王討伐作戦が決行されることになった。

エマが執務室を出ようとすると、将軍に呼び止められる。


「エマくん、ゼルクに加勢を頼んだんですね。」

「はい、ゼルクさんの力が必要です。」

「ありがとう。ゼルクの父として感謝する。ゼルクも君に必要とされて喜んでいた。」

将軍は頭を垂れて、感謝の言葉をエマに伝えた。



そして、アーラン国の兵士半数以上で構成した魔王討伐隊は魔王城に向かった。

エマは、自身で作成した道具類を一式持ち準備万端だった。

そこには以前に魔王討伐用に使用した道具も含まれていた。


魔王城までの道のりは何事もなく、魔王城の手前までたどり着いた。

しかし、城の前には、魔王の手下の魔物たちで構成された魔王軍が、待ち受けていた。

幸いにも魔王軍の数は討伐隊より少ないようで、討伐隊が有利に見えた。


エマは前線にたち臆することなく魔王城に進んでいく。

そして、飛び道具が有効になる範囲で停止し、エマ含め前線部隊は銃や弓で魔物たちを攻撃を始めた。

魔王軍は銃や弓に投石で対抗しようとするも、討伐隊の射程が長く、まるで歯が立たなかった。

すると、魔物たちは前進を始める。

討伐隊の弾と矢が次々と魔物たちにあたり、魔物たちはなかなか前に進むことができなかった。

さらに、討伐隊は攻撃を続けながら、魔物たちの前進に合わせて後ろに下がって行った。

魔王軍は圧倒的不利な状況で、魔物たちは次々とやられていった。

しかし、魔王軍は突き進む。

そして、討伐隊は手持ちの飛び道具が少なくなってくると、魔王軍と正面衝突し、激戦を繰り広げる。

このとき、魔王軍は討伐隊のリーダであるエマと騎士隊がいなくなっていることに気がついていかなった。


エマと騎士隊は、魔王軍の側面から、突撃を仕掛けた。

魔王軍は突然の強襲にただただ破れていくしかなかった。

そして、騎士隊は魔王城の城門の手前まで到着する。

エマは手持ちの爆弾に火をつけ、投石の要領で放り投げ続ける。

城門に爆弾が当たると爆破し、次々と門と周辺にいた魔王軍が崩壊していった。


その崩壊した箇所から討伐隊はさらに前進する。

魔王軍は総崩れで、城内にはもはや魔王と何人かの臣下しか残っていないようだった。

魔物たちを騎士隊に任せ、エマは次々と進んでいった。

そして、魔王の立つ玉座の間に到着した。


魔王の側にアリスがいた。

アリスには怪我はなく、健康そうに見えた。

そして、アリスはエマの姿を見ると、嬉しそうな表情をした。

「エマ、」

「アリス」

エマはアリスを見て、そして魔王に向き合った。



「魔王よ、この城は間も無く制圧される。大人しく、姫様を返せ。」

「いいだろう。しかし、エマよ、私と手合わせ願おう。」

「?」

「私はお前に命を取られなかったことに驚いた。

しかし、今ここで決着をつけなければならない。お主が敗れるか、私がここで死ぬかだ。」



エマと魔王はお互いに向き合う。

エマの動きが速かった。素早く毒針を取り出し、魔王に向かって打ち込む。

魔王は波動を出し、針は床に落ちる。

そして、魔王は前進し、エマを切り裂こうと手を上げる。

エマはその懐に入り、短刀を突き刺そうとした。

しかし、魔王はそれを避け、魔力で作った網でエマを縛り上げた。

エマの手から短刀は力なく落ちる。

そして、魔王はエマを捕まえると、なんと魔王城から飛び立とうとしていた。

魔王の本当の目的はエマを連れ去ることだったのだ。


「っ!」

アリスはそれに気づくと、素早く魔王とエマの近くに走り寄っていた。

そして、エマが落とした短刀を取り、エマを縛る網を切り裂く。

エマの片手は自由になり、手が動いた。

エマは魔王討伐用に作成した毒針を素早くとると魔王の体に突き刺した。

「ぐぐぐ。」

魔王は咆哮し、エマとアリスを押し離す。

魔王は突き刺された毒針を抜くも、すでに魔王の体からは黒い霧が出ていた。

魔王は覚悟を決めたように、エマに向いた。


そして、魔王は最後にエマに飛びかかり、命を取ろうとした。

エマは縛られたままの体で避けることはできない。

ただ魔王がエマを引き裂こうと突進するのを見ることしかできなかった。


すると、アリスがエマを庇おうと両手を広げエマの前に立った。

「!?」

エマは驚いた。

「アリスやめて。」

エマは叫ぶように言う。

しかし、アリスは動かなかった。


魔王は手を上げ、エマとアリスもろとも引き裂こうと手を下ろす。

アリスは目を強く開き、動かなかった。

エマはアリスが引き裂かれようとする姿を見ていることしかできなかった。

振り下ろされた魔王の手はアリスに当たる直前で止まった。

そして、魔王は手を下ろし、苦しみながらも笑い声を挙げて、玉座に向かう。

「エマ、そしてアリス、また会いにいくからな。」

魔王は玉座に座り、散りざまにそう言うと、黒い霧は大きくなり、そして、最後には何も残らなかった。

魔王は破れ、霧散したのだった。

エマは魔王を打ち倒したのだった。

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