21話 プロポーズ
バーン王国を訪問し、アーラン国に戻ってから、エマとアリスは普段から二人で出かけるようになっていた。
二人は、周りから囃し立てることにも慣れ、周りの声が気にならなくなっていた。
さらに、徐々に二人は公認の仲として認められるようになり、囃し立てるものはいなくなっていた。
ただ、二人の関係は深くはなっていたが、清い関係を維持していた。
そして、何ヶ月か過ぎた。
その日はエマとアリスが小さい頃、城の外に出て、盗賊に襲われ、そして離れ離れになった日だった。
夜になり、アリスがベッドに入ろうとすると、トントンと窓を叩く音がした。
カーテンを開けると、そこにはエマが立っていた。
「どうしたの?」
アリスが窓を開けながら、聞く。
エマはアリスの部屋には入ろうとせず、照れた表情のまま、何か言いづらそうにしている。
「?」
アリスは不思議そうに顔を傾げる。
すると、エマは意を決したようで、アリスの手をとる。
「姫様、今日久しぶりに外に出てみませんか?」
「えっ、今から?」
「はい。」
エマは真剣な顔で話す。
アリスは今日があの事件のあった日であることがわかっていたので、あんまり乗り気ではない面があった。
しかし、エマが急に来て、誘うからには何かあるに違いないと思った。
「いいわ。行きましょう。」
アリスは、すぐに身支度を始めた。
何回も夜中に城を抜け出したルートで、エマとアリスは静かに城を出る。
外に出て、しばらく城下町を歩きまわる。
アリスは夜にエマと出歩くのは久しぶりだったので、ワクワクした気持ちになっていた。
町の景色は以前見たときと変わらないところもあったが、違うところもあった。
そして、歩き続けると、暗い道が見えた。
そこは、教会に続く道だった。
「ふふ。ここってあの道よね。」
アリスは、懐かしい気持ちと、少し怖さを感じる気持ちが入り混じる。
「はい、教会に通じる道です。」
「やっぱり。今も暗い道で怖い感じ。」
「あの、前は辿りつけませんでしたが、今日は教会まで行きませんか?」
「えっ?」
アリスはエマを見ると、エマは顔を真っ赤にし、手を後ろに回しもじもじしながら言った。
「……。しっかりエスコートしてよね。」
そういい、アリスは手を前に出す。
エマの顔は輝き、アリスの手を取り、前に進んでいく。
教会までの道は暗かった。
しかし数分歩くと教会が見えた。
アリスは、小さいときは教会までなんて遠いんだろうと思っていたが、本当はそこまで距離が離れていなかったことがわかった。
通ってきた暗い道を見ても、今は盗賊などいるようには見えず、アーラン国も治安が良くなったのかなとも思った。
「ふふ。今回はしっかり教会にこれましたね。」
「本当ね。」
エマは教会の扉を静かに開ける。
教会の中には誰もおらず、ステンドグラスから透ける月明かりで照らさていた。
二人は中に入る。
エマは中に進んでいき、月明かりで照らされる場所で、アリスに振り返る。
エマは月明かりで美しく照らされ、アリスは胸の鼓動が早くなった。
「姫様、姫様が幼少の頃、私はお付きとして、姫の側にいさせて頂きました。
そのとき、私は姫様のことを娘や、妹のように思うときがありました。」
「ふふ。そうだったわ。私も姉のように思ってた。」
アリスは昔のことを懐かしみ、笑みを浮かべる。
「だんだんと姫様は成長され、美しくなられていきました。私は姫様を主人として思うようにしてました。
ですが、本当はあなたのことを初めて見たときから、は違う気持ちがあることがわかってました。
そして、姫様が美しくなられるにつれ、その気持ちがだんだんと大きくなりっていました。」
「……。」
エマはアリスに近づき、お互いに目を合わせる。
エマはおどおどしたところはなく、アリスはエマに全てを委ねられる気がした。
「姫様、私はあなたのことを愛しています。何よりも、私の命よりも大切なんです。
私は絶対にあなたのことを守り続けます。私と結婚してください。」
「はい。」
アリスは答えた。
エマはアリスを強く強く抱きしめた。
そして、教会の光さす中で二人は熱い口づけをした。
空には星々が輝いていた。
教会で、エマのプロポーズが成功した次の日、二人は国王に報告し向かった。
そして、二人が婚約したことを伝えると、
「あれ、まだ婚約してなかったのか。」
と逆に驚かれてしまっていた。
なんと、アリスとエマはすでに婚約していると思われていたようだった。
アリスとエマは互いに向かい合い、苦笑いを浮かべた。