19話 告白
トントン、アリスの部屋を叩くノック音がした。
しかし、肝心の声が聞こえず、誰が訪問してきたのかわからなかった。
アリスは、不思議に思い、扉を開ける。
そこには誰もいなかったが、足元に手紙が置いてあった。
差し出し人はエマからだった。
アリスは手紙に書いてあるように、夕方頃に庭園に向かう。
手紙にはそれくらいしか書いてなかったが、アリスは何を伝えられるか察しがついていた。
庭園に到着すると、テーブルにはエマが一人待っていた。
「姫様、お待ちしてました。」
「エマ、手紙で呼び出しって、慎ましい感じね。何か用?」
「いえ、今日は姫様と久しぶりに、お茶をしようと思いまして。準備は済んでます。」
そういうと、エマは、お茶をカップに注ぎ、テーブルに座ったアリスに手渡す。
テーブルにはアリスの好きなお菓子も置いてあった。
アリスは思っていたエマの対応と異なり、拍子抜けしたが、エマとのお茶会は久しぶりだったので嬉しかった。
お菓子を食べ、お茶を飲みながら、エマとアリスは、今日あったことや街のことなど他愛もない話をする。
エマは普段通りの落ち着いた感じのようにも見えたが、お菓子やお茶には手をつけず、じっと何かを待っているようにも見えた。
しばらく話をし、アリスは皿にとったお菓子がなくなったので、大皿の上にあるお菓子を手に取ろうとした。
エマはその動きを見逃さなかった。
エマも同じお菓子を取ろうと手を動かす。
そして、アリスはお菓子を手に取り、エマはアリスの手を取る形になった。
「す、すいません。」
エマはアリスの手を掴んだまま、その行為を誤る。
アリスはそのわざとらしい手の動きにぽかんと口を開ける。
「……。わざと?」
「ち、違います。えと、あの。」
エマはアリスの手を掴んだまま、あたふたとし出す。
アリスは、エマの戸惑う動きが可愛らしく思え、吹き出す。
エマはアリスの笑みで、エマの顔にも笑みが浮かんだ。
そして、エマは落ち着きを取り戻した。
エマは、アリスの手を両手で包み、じっとアリスと目を見つめる。
アリスも見られていることに気づき、エマと目を合わせた。
エマの目は真剣そのもので、アリスはドキリとした。
「姫様、私は姫様のことが何よりも大好きです。愛してます。」
「……」
「私と付き合ってください。」
「……はい。」
そういうと、アリスは目を瞑った。
エマは急にアリスが目を瞑ったことに驚き、アリスが目を開けるまで呆然としていた。
アリスはいつまでたっても、エマが何もしてこないので、苛立ち目を開けると、エマがポカンとしていることに気づく。
アリスはその表情を見ると、苛立ちは消え、エマが何か無垢で愛おしいものに感じられ、笑みが浮かぶ。
「エマったら。」
「……?」
エマは良くわかなっていないようだった。
アリスは立ち上がり、エマの口にキスをした。
エマは顔が真っ赤になった。
それを見て、アリスも顔が真っ赤になることを感じた。
二人はお互いあたふたした。
しかし、手はずっと離さず熱く繋がれたままだった。
二人はその後も楽しくお茶会を過ごした。