18話 ツンツン姫様
エマは、バーン国からアリスを救い、アーラン国を救った。
エマを崖から突き落としたゼルクは騎士長から免職され、謹慎の身となっていた。
代わりにエマが騎士長になることになったのである。
見習いからいきなり騎士長であり、本来であれば反感をもらってもおかしくなかったが、
騎士長のメンバーは元から着実に成果をあげるエマのことを認めていた。
エマはその期待に沿うためにも、騎士隊をより強く統率の取れた隊にするか考えることが必要になっていた。
騎士隊のことも考えないといけなかったが、
何よりエマには別のことでもっと困っていた。
そして、その日もエマはアリスの部屋に向かっていた。
「姫様、エマです。今日こそ、返事を聞きに来ました。」
ノックしても、応答がないので、エマは静かにドアを開ける。
中に入るとアリスがいて、ツンツンした表情をしていた。
「何回言われても返事は同じ。嫌よ。」
「そんな、姫様も私のこと好きって言ってくださったじゃないですか。」
「言ったかもしれないけど、結婚は嫌よ。」
「そんな、どうしたんですか?」
「ふん。よく考えなさい。」
そういうと、アリスは部屋からエマを追い出した。
エマは、国を救った後に何回もアリスに求婚していたが、全て振られていた。
なぜ?あんないい雰囲気だったのに。
トボトボと、騎士隊の訓練場に歩いて向かいながら、エマは、
なぜアリスがプロポーズを受け付けてくれないか考えていた。
訓練場に着くと、騎士隊のメンバーと訓練を始める。
ゼルクの代わりに騎士隊の騎士長になったので、メンバーの育成が必要だったが、
エマ自身も中の上くらいの腕前なので、自身を高めることも必要だった。
訓練しながら、ふと妙案が浮かんだ。
それは、元は騎士隊の先輩で、今は部下となったリリナスに相談することだ。
リリナスはエマよりも年上の女性騎士だった。
剣の扱いが上手く、城の中でも5本の指に入る腕前だった。
リリナスは、美しく逞しい見た目だったが、気さくな性格で話やすかった。
そのため、男女問わず惹かれるものが多く、噂では、城下町に住む女性と付き合っていると聞いていた。
エマは、経験豊富なリリナスにアリスのプロポーズについて聞くことが、適切だと気づいたのだ。
そして、訓練後にリリナスにプロポーズの話をすることにした。
ところが、エマがプロホーズの話をすると、リリナスの優しい表情が急に厳しくなた。
「エマ騎士長、英雄だからってそれに甘えすぎです。」
リリナスに厳しく言い放たれ、エマは痛いところをつかれたと思った。
「多分アリス姫は、普通に恋がして、プロポーズされたいんだと思います。」
「……。」
「もしかしたら、お二人はすでにそういう関係なのかもしれませんが、
私が以前に騎士長とアリス姫を遠くから見たところ、お二人は姫と騎士か、とても仲の良い友人といった関係性に見えました。
よく見ても付き合い始めってところで、深い恋人関係にも見えなかったです。」
「……。確かにそうでした……。私は、最初は姫様の付き人、そして今は姫様の盾でしかなかったです。」
エマは落ち込んだようにその場に座り込む。
そして、ぎゅっと目を瞑り、パッと目を開く。
「リリナスさん、ありがとうございます。まずは最初の一歩から始めます。」
エマは手をぎゅっと握りしめ、まずは付き合うことから始めることを誓った。
リリナスはそんなエマを微笑ましく見ていた。




