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17話 アーラン国

エマの策略により、敵兵を追い払ったあとのアーラン国は、兵士たちが歓声を上げていた。

兵士たちは一度は降伏し、奴隷となることが決まっていた状況から、救われたのだった。

そして、玉座にエマ、アリス、国王、将軍、ゼルクと騎士団が集まっていた。

一同は王国を救ったエマを称えていた。

アリスはずっとエマの側にいて、二人は腕を組んでいた。

エマは、アリスに腕を組まれ照れながら、国王や将軍にどうやってアリスを救ったかを話した。


そして、崖から突き落とされてからのことを話した。

エマは崖から銃で撃たれて、銃は胸板で防ぎ、無傷だった。

ただ、銃撃の反動で崖から落ちてしまったが、崖下の川底が深く落ちた時の衝撃は吸収されたこと。

そのまま流れていくと運良く河岸についたこと。

歩き回ると近くにバーン国の兵士がいて、隠れて状況を伺っていたこと。

そこで、アーラン国が占拠され、アリスがバーン国に連れ去られたことを知ったこと。

バーン国の兵士のはぐれた一名を倒し、馬を奪い、バーン国に走ったこと。

アリスよりも先にバーン国の城内に潜入したことを話した。


エマは、誰が突き落としたかについては、話さなかった。

しかし、そこにいるものは、薄々誰が突き落としたかは察しがついていた。


ゼルクは、エマやアリスから離れ、端の方に一人立っていた。

顔は真っ青で、今すぐここから消えたかった。

しかし、騎士長として、その場にいないことはおかしく、逃げ出すに逃げ出せずその場に残っていた。

すると、気づくと将軍がゼルクに側に立っていた。

ゼルクが顔を上げると、将軍は悲しい表情をしていた。


「許されるわけがない。来るんだ」

将軍はそういうと、ゼルクの手をとり、エマの方に向かった。


「申し訳ない。」

ゼルクと将軍は跪き、頭を垂れてエマに謝罪するしかなかった。

「敵兵を見逃し、魔王からこの街を救ったエマ殿に手を掛ける所業、万死に値する。」

将軍にそう言われ、ゼルクはただ黙っていた。

そして、ゼルクも覚悟は決まっていた。

「処刑に値する。」

将軍は冷たく言った。しかし、その目には涙が出ていた。

「はい。」

ゼルクも頷くしかなかった。


ゼルクは、それに値することはしていたことはわかっていた。

アーラン国がエマに救い出されたとき、ゼルクは自身が愚かだったことに気がついた。

エマに対して怒り狂い、冷静に状況が下せないことがそもそも全ての原因だったのだ。

ゼルクは自身の行いを反省し、罰を与えてほしかった。

そして、何よりアリスがゼルクを冷たい目で見ることに耐えかねたのだった。

ゼルクは、アリスに恨まれて当たり前だった。

婚約者なのに、真っ先に敵国に差し出すしかないと言ったのだから。

ゼルクにできたことはただ敵兵におとなしく捕らえられることだけだったのだから。

さらには、街を救った英雄を銃で撃ち、崖から突き落としたのだから。


「待ってください。」

エマが行った。

「ゼルク騎士長をお許しいただけないでしょうか?」

全員が騒然とした。

ゼルクに命奪われかけたはずなのに、許す理由がなかったからだ。


「今回、無事に城を取り返せたのは、川で流され、たどり着いた先に敵兵の陣があったからとも思えるんです。

そこで、敵の情報を知り、バーン国に潜入できたことが大きかったんです。」


「何より、姫様とゼルク騎士長と私は幼馴染です。私は処刑を望みません。」

「エマ……。」

ゼルクはエマの言葉に涙していた。

そして、ゼルクの処刑は撤回され、しばらく謹慎の身となった。



国王は国を救ったエマに褒美を授けるために、エマを玉座の前に呼んだ。

エマは国王の元に跪く。

「アーラン国を救ったエマよ、何でも欲しいものをいいなさい。褒美を授けます。」

「……。私が欲しいものは一つだけです。

もし、姫のお許しが出るなら、私のほしいものは姫様だけです。」

エマはそういうと、アリスの方に顔を向ける。

アリスは顔を赤くし、照れた表情をしていた。


「アリス姫、私と結婚してください。」

エマはにこやかに言った。

周りは大きな歓声を上げ始める。

アーラン国を救った英雄と姫の婚姻が決まりそうだったからだ。


国王も寂しそうであったが満足そうに笑みを浮かべていた。

国王はエマが欲しいものがわかっていた。

そして、エマなら、アリスを、そしてこの国を任せられると思い始めていた。


アリスは嬉しそうな顔をしていた。

が、急にキュッと口を結び言った。


「嫌よ。」


アリスはそう言うと、足早に自身の部屋に戻っていった。

アリスとエマが結婚っと誰もが思っていた場面で、エマはあっさり振られたのだった。

全員騒然とし、当のエマも開いた口が塞がらなかった。

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