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生徒代表



 これから通うことになる、魔王育成学園……そこでのクラス分けにて、オレはDクラスに配属されることになってしまった。


 なってしまった、とはいうが後悔はない。オレは出すべき力を出しただけだし……それによりこんな結果になったなら、受け入れるしかないだろう。


 あの、ガラム・ヴォルガニックからバカにされるのは我慢ならないけどな……!



「それにしても、いろんな奴がいるな……」



 このDクラスもそうであるが、改めて……いろんな奴がいる。一口に魔族とはいっても、みんながみんな一緒というわけではない。


 大きく違うところがあれば、違いが細かなところもある。こういうところは、人間と同じなのかもしれないな。



「あいつが、魔王の子供だって?」


「けど、しょっぼい魔力だったぜ?」



 ……こうして陰口を叩くのも、非常に似ている。



「……ユーク、あまり、気にしない方がいい」


「あぁ、わかってるよ。ファウルは、オレと変わらず接してくれるなぁ」



 別に魔族と仲良くするつもりはないが……それでも、先ほどまでそれなりに話していた奴から無視される、とかいう目にあったら、いかに魔族相手でもガラスのメンタルであるオレは泣いちゃうかもしれない。


 そんなオレの内心を気にしてか気にせずか、ファウルは相変わらずの無表情だ。



「変わらないよ……ん、周りの態度が変わる怖さを、知ってるから」



 首を振り、話す彼女の、台詞の後半は聞こえなかったが……どこか、悲しげな顔をしているようにも見えた。


 それを追及しようか迷ったが……そうしている間に、周りがざわつく。どうやら、全員の魔力測定が終わったようだ。それぞれが、割り当てられた五つのクラスに集まっている。


 その後、高圧的な女の指示に従い……入学の際の注意事項、これからの予定を受け、そして生徒代表者を決めることに。決める、とはいってもすでに決まっていたが。



「代表に選ばれた……クリウス・ヴォルガニックだ」



 この度入学した生徒の代表……それは、Sクラスに入ることのできた魔族こそが選ばれるのが妥当というやつだろう。


 そして……副代表として、さらにもう一人。



「クォロ・ダンライオです。どうぞお見知りおきを」



 たった二人だけの、Sクラス。クリウス・ヴォルガニックを覗いたもう一人の魔族……クォロ・ダンライオと名乗る女が、副代表として選ばれた。なんというか……すごい、お嬢様っぽいな。


 というか、これだけ人数がいて……Sクラスがたった二人とは、どういうことだ。というか、たった二人だけでクラスと呼べるのか。


 あのガラム・ヴォルガニックの兄貴が生徒代表というのはなんだか気に入らないが……奴の実力は確かだ。誰も文句があろうはずもない。



「……!」



 そこで、ふと……クリウス・ヴォルガニックと目があった、気がした。


 気のせいか、偶然か……それとも、魔王の子供であるオレのことを面白半分に見ていたのか。なんにせよ、すぐに目がそらされたしたいした問題ではないようだ。


 その後、生徒代表及び副代表から一言あり、続いて校長の挨拶……



「やあみんな、入学おめでとう」


「!?」



 校長挨拶、それを受け壇上に上ったのは……オレたち生徒の実技試験にて魔力測定をした、あの黒魔族だった。あいつ、教員どころか校長だったの!?


 あぁ、だからガラム・ヴォルガニックはその測定結果に納得してたのか。兄貴がいるからだけではない、測定する魔族は尊敬すべき立場の魔族だからだ。



「マジか、あれ校長だったのか……」


「ユーク、知らなかったの?」



 オレの呟きを聞き付けたファウルの言葉。その言葉から察するに、どうやらファウルもあいつが校長であることは知っていたらしい。



「やっぱオレは世間知らず……」


「ううん……元々、この学園の校長は、表舞台には滅多に、立たない。むしろ、知らないのが普通」



 世間知らずであるオレをフォロー……してくれたというわけではないな。いや、フォローは含まれているんだろうが……その言葉は、おそらく真実だろう。


 思い返せば……Bクラスに選定されたナルシストが、あの校長に抗議していた。あの時のあの態度は、とても相手が学園トップの魔族だと知っての行為だとは思えない。


 つまり、あの校長が世間一般に知られているというわけではないというのは真実ということだ。



「では、これよりそれぞれのクラスに移ってもらおう。その後、学園内の施設の案内、クラスごとの寮の案内などを行う」



 ふむ……これが、学校っていうものなのか。魔族のものというものではあるけど、人間社会で聞いたことのあるものと大きく違わない、気がする。


 一応憧れていた学校生活が今日から始まる。初日から早速、変な奴に絡まれたり周りから笑われたり一部から目をつけられたりもしたけど。


 とにもかくにも、それはそれだ。オレは魔王になるつもりも、上位魔族になるつもりすらない。せいぜい、生まれ変わったメリットとして第二の人生を謳歌するとするさ。


 たとえ、魔族としての生活だとしても。

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