表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者の魔王候補生生活  作者: 白い彗星
偽物と真実
68/70

話すことなんてなにもない



 ……翌日。オレは、クリウス・ヴォルガニックに呼び出された。登校したらまさかの待ち伏せをされていたのだから、逃れることは出来なかった。



「……で、なんだよ。魔王育成学園生徒代表サマ」


「相変わらず癪に障る話し方をする男だ。まあいい……昨日のことは、問題となる前にもみ消しておいた。目撃者への対応もな」



 二人きりのこの部屋は、生徒代表となった魔族に与えられる専用の教室だ。この部屋に入るのは、何度目だろうなあ。


 と、そんなオレの気持ちなど関係なく、クリウス・ヴォルガニックはオレへの不快感を隠そうともしない。まあ、オレだってこの男のことは良く思っていない……昨日ファウルから話を聞いて、余計にな。


 こいつがファウルに直接なにかしたわけではなくても、一人でもファウルに味方がいれば、彼女は救われていたたはずだ。それにこの男は、ファウルを妹として見ていないどころか物としてしか見ていない。


 昨日の件をもみ消したのだって、ファウルのためではなく自分の……ヴォルガニック家のためだろう。そのためにあんな騒ぎがあっても、平気でもみ消す。あんな騒ぎだ、完全に誰にも見られていないとは思わないし、そもそもファウルの眼帯を取った奴らもいる。


 そいつらへの、対応……思惑はまったく違うが、オレたちにとっても都合が良かった。



「そいつは良かった。で、まさかそれだけの報告のためにオレを呼んだのか? そういうことなら一応礼を言うよ。もう行っていいか?」


「いいわけないだろう。貴様を呼んだのも、そんな理由ではない」


「それもそうだ」



 わざわざ、生徒代表サマ自らのお出迎えだ。適当に遣いを出せばいいものを。そうしなかったということは……



「オレに聞きたいことがあるんだろ。それも、思わず自分からオレのところに来るくらいに気になって」


「……ちっ」



 わかりやすく、舌打ちをされた。なんだか初めて、こいつよりも上に立てた気がする。なんか気持ちいい。


 とはいえ……



「ま、お前に話すことなんてなにもないけどな。あの力のことも、オレ自身わかんねーし」



 この男の知りたいことを、素直に教えてやるほどオレは親切じゃあない。せいぜい、知りたいことを知れない焦れったさを味わうといいさ。



「ファウルからいろいろ、話は聞いた。お前らに対して、オレがなにを思ってるかわかるか」


「……興味はないな」


「けっ」



 いけすかない奴だ。ま、不本意ながらこの男のおかげで昨日の件はもみ消されたわけだし、それで良しとしておこう。


 部屋を、出る。クリウス・ヴォルガニックはそんなオレを止めるでもなく、黙ったままだ。止められたところで、足を止めることはないが。



 パタン



「……やれやれ、妙な男だ」



 ……部屋に一人残ったクリウスは、小さなため息を漏らす。そして、部屋の隅に視線を向けて……



「もう、いいぞ」



 誰もいない空間に、声をかける。そう、そこには誰もいない……今クリウス一人の、はずだった。


 だが、声をかけた先に、視線を向けた先に、彼女はいた。



「……」



 姿を見せたのは、クリウスと合わせて二人しかいないSクラス……その残りの一人の魔族。クォロ・ダンライオという女性だ。生徒代表として選ばれたクリウス同様、副会長として選ばれたのが彼女だ。


 そんな彼女が、いなかったはずの部屋に現れた。それをクリウスは当然のように受け入れた。というか、話しかけた。



「……よかったんですか、彼」



 クリウスへと話しかけるクォロは、感情を読み取らせない声色だ。それを受け、クリウスは……今、部屋から出ていった男のことを思い浮かべながら、扉を見つめていた。



「……調べる必要がありそうだな。魔王の息子、ユークドレッド・ボンボールドか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ