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元勇者の魔王候補生生活  作者: 白い彗星
偽物と真実
60/70

バカ野郎



「うぐ、ぅ……!」


「いて、いててて!」



 ただでさえ、ファウルの身体能力はバカみたいに跳ね上がっている……が、これはまた別の話だろう。噛みつきなんて、力の弱い奴でも大きな攻撃手段となる。


 しかもそれを首筋にともなれば、余計に痛い。歯が食い込んでくる。



「こ、の……!」



 このままじゃ。いくら魔族の硬い皮膚でも食い破られてしまう。いくら魔族とはいえ、女にこんなことはしたくないが……仕方ない。


 拳に魔力を纏わせ、ファウルの腹部を思い切り叩く。



 ドゴッ!



「がぅ!」


「いだっ!?」



 思い切りボディーに決めたことが決め手となったのか、ファウルは口を離す。が、その直前に思い切り一噛みしていきやがった。


 こりゃ完全に、歯形がついただろうな……



「くそ、暴れんな……!」



 口を離しても、暴れることをやめるわけではない。それどころか、時間が経てばその分こちらの力が減っていくだけだ。


 くそ、あの二人が協力とまではいかなくても、ファウルを元雄に戻すという共通の目的さえ持っていれば……! 楽にいけるだろうに。


 しかしあの二人、特に(クリウス)の方は是が非でもファウルを殺したいみたいだしな。理由は知らんが、妹を殺そうとする理由なんて聞きたくもないか。



「う、おっ……!」



 暴れるファウルは、力任せに俺を吹っ飛ばす。くそ、せっかく捕まえたってのに……



「避けろ!」


「え……」



 声が、聞こえた……直後に、顔面に衝撃が走る。物凄い、衝撃だ……まるでなにかに、ぶん殴られたような。……いや、まるでではない。実際に殴られたのだ。


 ファウルに吹っ飛ばされたオレは、体勢が崩れないようにと足元に一瞬、注意を払った。その一瞬がいけなかった……


 まるでさっきの仕返しだとでも言わんばかりに、目の前にファウルの拳が迫り……腹部でなく、顔面を殴り飛ばされる。



「……!」



 それはおよそ、拳なんて生ぬるいものではなかった。岩でも飛んできたんじゃないかと思えるほどの、衝撃。俺は、なにを言う暇もなくぶっ飛ばされた。



「ユーくん!」


「あのバカ……!」


「やれやれ……こうなる前に、アレを処理…………ったのだがな。誰かを手を…………る前に……」



 ……ぼんやりと、声が聞こえる。今ので、耳がやられたのか……声があまりよく聞こえない。


 目も、やられたか……? 景色が、はっきりとしない。体も、痛い。どこか、打ち付けたか?


 もうこのまま、眠ってしまおうか。



「ようやく邪魔…………が一人、消え……か」


「おいクリウス、待て!」


「くどい……メル。あれは、処分……る。所詮は失敗作……暴れ……ば消すの……だ」



 あまりうまく、聞き取れない。でも、わかる。……いや、そうだ。ファウルがこのままじゃ、殺されてしまう。


 オレにとって魔族なんて、どうでもいい。どうでもいいが……どうでもいいはずだが、なぜだか放っておけない。



「なにが失敗…………そっちの都合じゃ…うが……」


「……うだ……こっちの都合で生み…………、こっちの都合で消す。なにか問題でも……」


「大ありだバカ野郎!」



 ぼんやりとしか聞こえない会話……だが、なにを言っているのかはわかる。そんなふざけたことは、させてなるものか。


 ぶん殴られてあちこちが痛い。鼻血も出ている。いや、鼻血どころじゃないだろうな……それでも、立ち上がる。



「……なんだその、気配は。魔力……とは、違う……?」

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