救うか殺すか
ファウルを元に戻したいオレとメルデュース・マ・ガランドーラ。対してファウルを殺そうとしているクリウス・ヴォルガニックとガラム・ヴォルガニック。
今ファウルは、クリウス・ヴォルガニックの魔力で動きを封じられているものの……正直、いつ動き出してもおかしくない状況だ。
あいつの力でってのが気に食わないが、今は四の五の言ってられない。とにかく、動けないうちに眼帯をつけ直してしまえば……!
『また同じことが起こったらどうする? 現状手を持て余している貴様に、なにができる』
……ふいに、クリウス・ヴォルガニックの言葉がよみがえる。それは、まったくの正論だ。あいつのことは気に入らないが、これに関しては反論の余地もない。
「今が、好機じゃ!」
「あぁ……!」
同じことが起こったら、か……その可能性はゼロじゃない。むしろ、起こる可能性のほうが高いとも言える。
だが、可能性ばかりを考えてこのままファウルを殺す? そんなこと、あっていいはずがない。後のことは、後考えればいい!
少なくとも今は、ファウルを元に戻すことを……!
「よし、このまま眼帯を……」
「! おい、離れろ!」
ファウルが動きを止めているうちに、眼帯を拾うことに成功。このまま眼帯を元の位置につけ直せればいいのだが……そううまくは、いかないものだ。
メルデュース・マ・ガランドーラの声に反応し、とっさに顔をあげると……そこには、いつの間にかファウルの姿が。オレに殴りかかろうとして……
「うぉおおお!?」
なんとか、退避。地面を転がり、距離を取る。
「ふん、無様だな」
「やかましい! お前、わざと拘束解いたんじゃないだろうな!」
「兄様がそんなことをするか、バカめ!」
あのタイミングで拘束が外れたのは、クリウス・ヴォルガニックが自ら拘束を解除したせいではないかと疑ったが……それを否定するのは、弟のガラム・ヴォルガニックだ。
オレへの当て付けのために、わざと拘束を解くなんてことはしないと。そんなせこいことはしないと言う。だが、それはそれで、兄様の力がファウルに純粋に破られたって言ってるようなものだぞ。
まあ、その点突っ込んだらまたややこしいことになるから、指摘しないが……
「ふっ、クリウスよ、お主の魔力はファウルに劣るようじゃの!」
「なんでお前が煽るんだ!」
仮にも知り合いだろうに、なんでお前があいつを煽るんだよ! ほら、ガラム・ヴォルガニックのやつがめちゃめちゃ睨んでる!
「貴様なんだその言いぐさは……!」
「放っておけ」
しかし、当のクリウス・ヴォルガニック本人は気にもしていないようだ。もしくは、強がっているだけか。
まあそれはそれとして……ファウルが、自由になっちまった。これじゃさっきまでと同じ展開だ。
「ぐぅううぁ!」
「……邪魔だ」
ファウルは手当たり次第に暴れる。次に狙いを定めたのはクリウス・ヴォルガニックだが……奴は、慌てる様子もなく自身の魔力をぶつける。
「ぐ、ぁ……!」
「ファウル!」
しかしファウルは、放たれた魔力をもろに受けるのではなく、自身の腕でガードした。それでも、多少は後ずさってしまっているが……
ただ暴走しているだけじゃない。防衛本能が、働いている!
「ちっ、素直に受ければ楽になれたものを」
「ぐぅうう……!」
やはりあいつ……ファウルを殺すことに、なんの躊躇もない。ヴォルガニック家にどんな事情があるのかは知らないが、仮にも兄妹……妹じゃないのか。
ファウル・レプリカではなく、ファウル・ヴォルガニックが本当の名前。なのに、どうしてこんな殺しあうような展開になっているんだ……!




