排除するべきモノ
オレとファウルの拳が、ぶつかり合う。……が、体格はオレの方が上で、性別による有利だってあるはずなのに……なんだ、この力は。押し切るどころか、気を抜いたら吹っ飛ばされそうだ!
魔力が暴発したからって、素の力まで大幅に上昇してやがる……くそ、そろそろ限界……
「そのまま押さえておけ!」
が、そこへ小生意気な声が届く。ファウルの背後に迫ったメルデュース・マ・ガランドーラが、自身の魔力を力と変え、ファウルの背中へと衝撃波の要領で撃ち込んでいく。
ドンッ、と、まるでなにかが衝突したような音だ。
「ずいぶん遅い登場だな」
「悪かったの、魔力を溜めていてな」
先程、撃ち込んだのとまったく同じスタイル……しかし、その魔力の威力は段違いだ。力を集中していて大きくした、というのは嘘ではなさそうだな。
それに、先程とは違い今は、ファウルの意識は完全にオレに向いている。ならばこそ、がら空きもがら空きの背中に撃ち込めば、効果があるはず……
「うぅう……うぉあ!」
「げっ」
「ぬぅ!」
しかし、その目論見は甘かった。多少なりダメージは通っただろうが、それ以上に硬すぎる。振りほどく勢いで、オレもメルデュース・マ・ガランドーラも吹っ飛ばされてしまう。
おいおい、どうやって止めればいいってんだ……
「お、まえ……じゃ、ま!」
「あ、おい!」
今まで吠えるだけだったファウルから、意味のある言葉が出てくる。しかし、それはこちらと会話を成立させようとするものではない。ただ、邪魔者に対するだけのもの。
そして、その矛先はメルデュース・マ・ガランドーラへと向かう。まるで獣のように……いや、まさに獣となったファウルはメルデュース・マ・ガランドーラへと飛びかかり、ドス濃くなった魔力を攻撃手段に変え、弾として撃ち出す。
あんなもん、当たったら痛いじゃ済まない。だが、メルデュース・マ・ガランドーラ本人は動けそうになく、他から援護に回ろうにもそんな時間は、ない。
命をも脅かす、強大な魔力が直撃しそうなそのとき……
ボシュッ……!
「お……?」
メルデュース・マ・ガランドーラに、魔力の弾が直撃した……と、思ったが、直撃してない。それどころか、直前に消えた?
エネルギーが切れたんだろうか。それとも……
「……これは、どういう状況だ?」
ざわっ……と、その声を聞いた瞬間に神経がざわつく感覚があった。聞き覚えのある、そしてどこか不快に感じてしまう、この声。
もっともこの場に現れてなかった、魔族……
「クリウス・ヴォルガニック……!」
エリート一家……らしい……ヴォルガニック家の長男であり、一般には隠されているがファウルの兄でもある。
二人の、というか、ファウルとヴォルガニック家の関係性はよく知らない。だが、ファウルが本名でなく別の姓を名乗っていることから、あまりいい想像はできない。
「もう一度、聞くが……これはどういう状況だ、メル」
と、再び口を開く。メルって誰のことだ、と思ったが……あぁ、メルデュース・マ・ガランドーラのことか。あの女とも、なにかしら関係があるってことか。どうせお家柄同士の付き合いだろうが……
って、それどころじゃない。
「ぬっ、来てしまったか……気づかれる前に、事を済ませたかったのじゃが」
「……はぁ。どうせ、力を制御できずに暴走しているアレを、俺が勘づく前に対処しようとしたというところか。昔からお前は、妙な甘さがある奴だとは知っていたが……アレは、もうどうにもならん。排除する他あるまい」
「……!」
こいつ、マジか……今、排除するって言ったのか? ファウルを、しかも名前も呼ばずに、そんな無感情に……
「おい、お前……!」
さっきファウルの攻撃を消したのは、おそらくこいつだろう。消した、といってもその場から消したわけではなく、目にも見えないほどの速さで攻撃をぶつけ、相殺したのだろう。
つまり、こいつにはファウルに通用するだけの、力がある。それを……
「ん? ……あぁ、貴様か。まったく、クラスメートを殺そうとする、アレの暴走現場にいる……トラブルの渦中にいるな貴様は」
「そんなのはどうでもいいだろ! ファウルを、排除するだと?」
「それしかあるまい。アレは、今はまだ力の制御が外れている状態だ。対処できるうちに、消しておくに限る」
こいつ……そんな、他人事みたいに……!
「よくもまあ、そんなことが言えるな。妹だろ、助けようとか思わないのか!」
「……貴様、どこでそれを知った」
"それ"を、問いかけた瞬間……クリウス・ヴォルガニックの放つ圧力が、殺気へと変貌した。




