力のぶつかり合い
「おいファウル、目ぇ覚ませ!」
「うぅ……!」
一応呼び掛けてみるが、効果なし……と。親しい人物からの呼び掛けで、暴走から我に帰る、なんて都合のいい展開を考えてはみたが、まあうまくはいかないよな。
今のファウルは、別に見た目が劇的に変化してしまったわけではない。バカでかい魔力を感じるとはいえ、魔力は基本目に見えるわけではないし。
ただ、いつものファウルと違う面を挙げるならば……顔つき、だろうな。あの、おとなしい女の子の姿はそこにはなく、獣のように吠え、睨み、牙さえ剥く状態だ。牙なんてないけど。
……さて、こうして観察しておくのも、早々に切り上げるとするか!
「せい!」
「ぐっ……!」
ファウルの直情的な動きをかわしつつ、魔力弾をおみまいする。悲しいことに一撃でファウルを倒せるような威力はないが、効かないよりはマシだ。
どうしてかは知らないが、オレの攻撃は通用するようだ。威力としては、先ほど見せたシャーベリアやメルデュース・マ・ガランドーラの攻撃よりも低いというのに。
……こんなことなら、ファウルに目に見える形で姿を変えてもらいたかったな。表情に違いはあれど、ファウルの姿のままなので攻撃をぶつけるというのは、多少なり心が痛む。相手は魔族なのに、な。
今のファウルに攻撃を当てるのは、そう難しいことじゃない。直情的な動きをしているため、攻撃は面白いくらいに当たる。当たるから、また心が痛む。
しかし、いくら攻撃が当たっても、たいしたダメージにはならないし……そもそも、いくらダメージを与えれば元に戻る、なんてものでもないだろう。
隙を見つけて、ファウルの側に落ちている眼帯をつける。魔力を封じるかなんだか知らないが、ざっとそういうことらしい。その方が、いくぶん難しい。
とはいえ、できないやりにくいをいつまでも言っていても仕方ないわけだし……
「そこ!」
何度か攻撃を加え、さらにオレの方へと誘導させたことで、眼帯との距離を引き離す。そこで、一瞬の隙を作ってしまえば、力の限りのダッシュで眼帯を取りに行く。
で、それをつけてしまえば完了だ。ファウルを魔力弾により怯ませ、さらに周囲を土煙で目眩まし。これで……
メコッ……!
「っくは……っ!」
眼帯まで、あと少し……というところで、腹部に強烈な衝撃。体内の酸素を、一気に吐き出してしまう。
く、そ……うまくいったと、思ったが……腹部に、蹴りを入れられた。しかも、爪先が突き刺さる感じだ。痛い。
「げほっ、げほ……んにゃろう」
吹き飛ばされる前に、自分から距離をとる。今、いいの入ったな……
土煙で目眩まししているのに、的確に狙ってきたな。視力を封じられても構わないってことか。
「やってくれるじゃねぇか」
今のファウルは手がつけられないから、あの眼帯を真っ先に狙う。だけどファウル自身の防衛本能か知らないが、眼帯を取るためにはファウルが立ち塞がる。
八方塞がりってやつか。ったく……!
「うぅ……あぁあ!」
「やべ!」
今のファウルからは、魔力が溢れだしている。それは、自分でも無差別のうちに、あちこちを攻撃してしまうということ。オレに気が向いているうちならまだいいが、魔力の余波が倒れている奴らや、校舎にでも当たれば事だ。
別に魔族がどうなろうと知ったこっちゃないが、それでファウルが不利な立場になるのは、避けなければ。
だから……
「おぉおおお!」
もう自ら、突っ込むしかない。ファウルの動きを細かく注意しつつ、拳を握りしめ、それを……
「せい!」
「……っ」
思いきり、叩き込む。それと同時に、ファウルの方も同じく拳を振り抜き、ちょうどオレの拳とぶつかり合う形になり、周囲に衝撃が走る。
力は、互角……いや、わずかに押されてる、か。ずいぶんパワーバカになったもんだ……!




