表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元勇者の魔王候補生生活  作者: 白い彗星
偽物と真実
51/70

厳しい勝利条件



 さて、なんとかする、と覚悟を決めたのはいいものの……



「うーん、どうすっか……」



 今のファウルは、自分を見失って暴走している形だ。触れることはおろか、近づくことすらも難しい。


 また、シャーベリアやメルデュース・マ・ガランドーラの攻撃にビクともしてない様子から、体はかなり硬い。あれを崩すのはなかなか難しいだろう。


 そういうのは本来、地道にでも攻撃を与えダメージを重ねていき、もろくなったところを叩くのが定石だが……そう、のんびりとしたことはやってられない。


 いつ、騒ぎを聞きつけた野次馬がやってくるかわからない。その中に教師でもいてみろ、暴走したファウルにどんな処分が下るか。


 それに……この状況を、ヴォルガニック家の魔族に見せたらまずいことになると、オレの勘が叫んでいる。


 つまり……



「今のファウルを気絶させるほどのどでかい攻撃をぶつける。それも、誰か来てしまう前に片づけるためにスピーディーに……か。難易度高すぎだろ」



 なんて厳しい……ま、これくらいの危機、勇者時代に何度だって味わってきた。やってやるさ。


 そうこう考えているうちに、ファウルが辺りをきょろきょろと見回す。まずいな、ここで食い止めなきゃならないのに、ファウルにどっか行かれたら意味がなくなってしまう。


 ファウルを移動させるわけには、いかない。



「そら、こっちだ!」



 体の中にある魔力に意識を集中させ、手のひらに魔力の弾を作り出す。こんなものでダメージを与えられるとは思っていないが、気を引く程度ならば可能だろう。


 ということで、魔力弾をファウルへとぶん投げる。こっちには気がついてないみたいだし、このまま弾は当たる……



「っ、ぐぅあ……!」


「あれ……?」



 魔力弾は、確かに当たった。それは間違いない。間違いないが……聞こえるはずのない声が、聞こえた。


 これまで、シャーベリアの攻撃もメルデュース・マ・ガランドーラの攻撃も、当たってもなんの反応もなかった。ビクともしなかったし、攻撃をくらった際の驚いたような声さえ、漏らさなかった。


 それが……今確かに、ダメージを受けたことがわかるような声を、漏らした?



「くぅ……!」



 攻撃を受けたファウルは、その攻撃主を探し……オレに、狙いを定める。


 や、確かに注意をこっちに向けるつもりではあったが……あんな、殺意バリバリに向けられるとは思っていない……



「うぉああ!」


「やべっ……!」



 次の瞬間、ファウルは目にも止まらぬ速さでオレに迫り、ぶん殴ってくるために拳を突き出してくるが……寸前で、しゃがんでかわす。その際、まるで獣のような咆哮を上げて。


 今の、たった一発だけでわかる……まともにくらったら、骨が折れるじゃ済まないぞ!



「けど、やるしかない……」



 骨が逝くくらいで、躊躇なんかしてられない。ファウルの体格に合わないような、この動き……完全に、体に無茶をさせている。ただでさえ、抑えきれないほどの魔力を放出しているのだ。


 逃げに徹して、力尽きるまで待つ……その案もあるにはあったが、状況を長引かせればそれだけ誰かに見つかる可能性が高くなる。それ以外に、ファウルの体の心配もしなくてはならない。


 このまま無理な動きを続けていれば、体が壊れてしまう。そうなってからでは、遅い……今動けるオレが、早々にどうにかするしかない。


 さっき、なぜか攻撃も効いたし……オレに、やれって誰かが言っているみたいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ