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元勇者の魔王候補生生活  作者: 白い彗星
偽物と真実
50/70

ファウルのために



 ファウルの体に、メルデュース・マ・ガランドーラの魔力を込めた一撃が打ち込まれる。がら空きの背中からの、強力な衝撃波だ。あれをあんな至近距離で受けて、ただでは済まないだろう。


 とはいえ、メルデュース・マ・ガランドーラだってファウルを殺すつもりはないだろう。意識は飛ぶだろうが、致し方ない犠牲だし元に戻ったら説明すればいいだけのこと……



「なっ……」



 しかし、そう狙い通りに事は進まない。衝撃波を打ち込まれたはずのファウルは、気絶するどころか倒れることもなく、メルデュース・マ・ガランドーラの腕を掴み取る。


 そして、まるで砲丸投げのようにその場でぐるぐると回り……砲丸のように、メルデュース・マ・ガランドーラを投げ飛ばした。



「う、ぉ!?」



 小柄な女だ、重くはないだろうが……それでも、同じく小柄で同性のファウルが、ああも簡単に飛ばせてしまうとは。やはり、身体能力もかなり強化されている。


 それとも……あれが元々のファウルの力ってんじゃないよな。さすがに怪力すぎるぞ。



「あだっ!」



 メルデュース・マ・ガランドーラが投げられた方向には誰もおらず……また、誰も彼女を助けるために力を使わなかったため、彼女は顔面から地面に激突する。


 とても、痛そうだ。



「ぐ、ぬぬ……貴様ら! なぜぼーっと見ておるのじゃ! 助けんか!」


「そんなこと言われても……」



 確かに魔法を使えば、ぶん投げられたメルデュース・マ・ガランドーラの体を浮かせるなりなんなり、助けることはできたが……



「今まで偉そうにしてきたお前のことだし、一人で大丈夫かなって」


「ホントはただ嫌なだけじゃないだろうな?」



 ……いやそれはない。二割くらいは。



「それより、どうすんだファウルのやつ」


「それよりとは……しかし、思っていた以上に手強いな。まさか余の魔力も効かぬとは」



 メルデュース・マ・ガランドーラの放った一撃は、確かにもろに受けて無事で済むようなものじゃない。攻撃の余波で服にこそダメージは入っているが、当の本体は無傷。


 メルデュース・マ・ガランドーラの魔力で傷をつけられないなら、この場の誰も太刀打ちできはしないぞ。



「なぁなぁ、ユーくんなら、どうにかできるんじゃないか? だってほら、このクラスの中でもかなり異質だし!」



 と、シャーベリアが期待を込めた声で話しかけてくる。にしたって、異質って言い方は……


 シャーベリアがそう言うのは、わからないでもない。俺は以前、エリザとヤードラ・サイフェンの両名を一方的に下している。実力は、頭一つ抜きんでていると思われても不思議ではない……が……



「悪いな……オレにも、無理そうだ」


「そんなっ」



 これは謙遜でも、なんでもない。オレだって、自分の力でなんとかできるなら初めからそうしている。


 だが……これは、ちょいと厳しい。まさか、ファウルの力がここまで大きいとは思わなかった。


 とはいえ……このままでは、メルデュース・マ・ガランドーラが疑念しているように、魔族が集まってしまう。そして、その中にヴォルガニック家の奴がいたら……勘だが、まずいことになる気がする。



「ま、やれるだけやってみるさ」



 だから、このままなにもしないという選択肢はない。無理だと思っても、初めから諦めることはしないと、勇者やってた時から決めてるんだ。


 ……そういや、オレがヤードラ・サイフェンへ我を忘れて襲い掛かって来た時、ファウルはなにかを決意した顔をしていた。その時は、意味が分からなかったが……


 今思えば、オレを止めるために自ら力を解放しようとしてたのかも、しれないな。そんなことになったら、オレだけでなくファウルもどうなっていたかわからない……とんでもない迷惑を、かけるところだったんだな。


 ファウルがオレのために、それほど危険なリスクを犯そうとしてくれたんだ。



「ならオレも、ファウルのためにやれることは、やらないとな……!」

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