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元勇者の魔王候補生生活  作者: 白い彗星
偽物と真実
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本来の魔力



 強大な魔力の、放出。それはつい先ほど、ファウルの左目の眼帯が、外された直後に起こった。その関連性はないわけがない……現に、ファウル自身から、この強大な魔力を感じる。


 魔力の質自体は、ファウルのものだ。魔力とは、わかる奴ならば、魔力(それ)を発している奴の正体までわかる。だからこの魔力がファウルのものだというのは、紛れもない事実だ。


 だが……なんだ、この強大な魔力は。これが本当に、ファウルのものか? こんな魔力、Aクラスのガラム・ヴォルガニックどころか……Sクラスの、クリウス・ヴォルガニックに勝る勢いじゃ……



「な、なんだよこの、魔力は……」



 静かに声を漏らすのは、シャーベリアだ。それにはまったくの同意見……むしろ、この気持ちを抱かない方がどうかしている。


 周囲を見れば、エリザも、ファウルを囲んでいる連中も……同じような表情を浮かべていた。驚愕と、困惑、それが大きく、彼女らの表情を占めていた。


 ただ……この状況を見て、メルデュース・マ・ガランドーラだけは、少しだけ違う感情を持った表情を浮かべていた。驚愕、困惑の割合は比較的低く……どちらかというと、その表情に浮かぶ感情は……



「……お前、なにか知ってたんじゃないのか?」



 ……苦虫を噛み潰したような、表情。言うなれば、なにか重大な危機があって、それを防げなかったような……



「……」



 メルデュース・マ・ガランドーラは、なにも答えない。しかし……考えてみれば、こいつがファウルについてなにかの情報を持っていたと、うなずける部分はある。


 こいつは、誰にも傲慢な姿勢を崩さない。だが、それがファウルだけは違った……ファウルに対して、まるで友達と認めているかのような姿を見せた。


 それだけなら、まあ言うことはないんだが……ファウルが連れていかれたと知り、人一倍焦った表情を見せた。単に、友達想いなだけかと思っていたが……


 今見せている表情と、これまでに見せたファウルへの態度。それらが無関係とは、思えない。



「おい」


「……あぁ、知っておる」



 そこでようやく、メルデュース・マ・ガランドーラはうなずく。認めた、ファウルに関してのなにかを知っていると。



「それはいったい……」


「その前に、ファウルを抑えるぞ。このままでは、最悪自我が崩壊する」


「は……」



 今ファウルに、なにが起きているのか、彼女はなにを抱えているのか……それを聞き出すよりも前に、メルデュース・マ・ガランドーラは衝撃的な言葉を告げる。


 その意味すらも、聞きたいところだが……こいつが言うことが本当なら、モタモタしていられない。ファウルを抑えるために、行動する必要がある。



「とにかく貴様ら、ファウルから離れろ!」



 ファウルから膨大な魔力が溢れだしたために彼女から少し距離をとっているが、それでもファウルから距離は取らない女たちに、メルデュース・マ・ガランドーラは叫ぶ。


 その声は、これまでにないほど切羽詰まっている。



「は、はぁ? なんであんたの言うことを聞かなきゃ……」


「いいから従え!!」



 この状況になっても、素直にメルデュース・マ・ガランドーラの言葉を聞くつもりのない女たち。しかし、そこについに、メルデュース・マ・ガランドーラの怒りにも思える言葉が轟く。


 それは、言い過ぎかもしれないが大気をも震わし……少なくとも、女たちにとってこれまでにない恐怖を与えたに違いない。



「あ、ぅ……」


「退け」



 今度は小さく、しかし圧力の込めた声で告げると……女たちは、その言葉に従い、ファウルから離れる。


 直後、メルデュース・マ・ガランドーラが魔力を放出。こいつなんでDクラスに来たんだ……と思われるほどの魔力を出し、それをファウルへと向ける。



「あっ、あぁ……!」



 今にも暴れだしそうなほどに危うく見えるファウルは、まるで金縛りにあったかのように動きを止める。それは、メルデュース・マ・ガランドーラの魔力によるものだろう。


 そのおかげで、ファウルが自ら暴れだしてしまうであろう可能性は、ひとまず排除できた。



「あぁ、うぅ……!」


「……大丈夫なのか?」



 ファウルの今の姿は、とても我を保っているとは思えない。とはいえ、我を失っている、と一概に言い切るのも困ってしまう。



「ひとまずは、な。じゃが……先ほど言った通り、このままだと、ファウルの自我は崩壊する」


「崩壊って……穏やかじゃ、ないな」



 しかし、決してオレたちをビビらせるためだけに、そんなことを言っているのではないのだろう。現に、メルデュース・マ・ガランドーラの表情は変わらない。



「それって、つまりどういうことなの?」



 そこへ、シャーベリアが質問を投げ掛ける。メルデュース・マ・ガランドーラの言葉だけじゃ、訳がわからないから当然だ。



「それは……要点を纏めて言えば、あれがファウルの本来の魔力であり、それを抑える術がなくなった、からじゃ」


「ファウル……本来の……?」



 その言葉の意味を、そう簡単に理解することはできない。本来の魔力などと、なにを言っているのか。


 しかし、今感じる魔力は間違いなくファウルのもの……残念ながら疑いようは、ない。


 それが本当だとする。ならば、ファウルの魔力を抑え込んでいたものとは、いったいなにか? ……考えれば、答えはわかる。



「あの、眼帯か?」


「うむ」



 ファウルの魔力を抑え込んでいたもの……それが、ファウルの左目を覆っていた眼帯なのか。それが外されたことで、魔力を抑えることができなくなった。


 理屈はわかる。だが、そこに至るまでの理由がまったくわからない。



「要点は、まあわかった。いろいろ聞きたいことはあるが……今は、ファウルを元に戻すことの方が、重要だ」



 眼帯にそんな力が、とか、気になることはあるが……それどころでは、ない。眼帯を外されて魔力が抑えきれなくなったのなら、また眼帯を付ければ元に戻るはずだ!

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