やたら仲のいいかもしれない二人
オレがメルデュース・マ・ガランドーラの世話係になってから、しばらくの時間が経った。その間も、この女はオレをこき使い、その傍若無人ぶりからぼっちを極めていた。
そりゃそうだろう。こんな高飛車な性格の女、たとえ外見が良くても近寄ってくる奴はいない。いたとしても、素っ気なく追い返されてしまうのだし。
だから、メルデュース・マ・ガランドーラが絡むのは基本的にオレだけ……だと、思うだろう。だが、そうではない。
「ファウルよ、ここのこれはどういう意味なのじゃ?」
「えっ…………こ、ここは、これがこうなってて……」
「ははぁ、なるほどの」
「……どうなってんのあれ」
ファウルと話すメルデュース・マ・ガランドーラ……いや、というよりはファウルに話しかけるメルデュース・マ・ガランドーラだ。その光景を見て不思議に思うのは、オレだけではないらしい。
隣に立つは、シャーベリア。哀れにも、メルデュース・マ・ガランドーラに席を取られてしまった悲しい男。
「なんか失礼なこと考えてない?」
「別にぃ」
このところ、学園内でシャーベリアと話す機会は減っていた。なんせ、大抵の時間はメルデュース・マ・ガランドーラが傍にいるからだ。
席を奪われたこの男にとって、苦手な相手なのだろう。
「しかし、ファーちゃんも厄介な魔族に絡まれましたねえ」
反対側にやって来たのは、最近出番のなかったエリザだ。彼女はファウルのルームメートでもあり、それなりに仲がいいはずだが……そのファウルは、アレに絡まれてしまっている。
「一体全体どういうわけだ? あの傍若無人女が、自ら話しかけるなんて」
「それも、一度や二度じゃないですし……あぁ、あれではまるでお友達のよう!」
「お友達相手にあんな表情は浮かべないだろ」
メルデュース・マ・ガランドーラに絡まれているファウルは、笑ってはいるものの……それは本当の笑顔ではない。オレにはわかる……長年、色んな所を旅してきて養ってきた目だ。その表情が嘘かどうかくらいわかる。
もちろん、旅云々は生まれ変わる前の前世の話な。
「けど、嫌なら拒否ればいいじゃんか」
「拒否して引く相手じゃないのは知ってるだろ」
「……確かに」
「それに……」
メルデュース・マ・ガランドーラがファウルに絡みだしたのは、あの女がファウルに耳打ちした次の日からだ。
あの時どんな会話があったのか……いや、メルデュース・マ・ガランドーラになにを言われたのかすら、聞こえはしなかったが。その話の内容が関わっているのは、間違いないと思う。
しかも……ファウルは、できるだけメルデュース・マ・ガランドーラと絡みたくなさそうだ。今渇いた笑みを浮かべているのだって、そういうことだろう。
「まあ、実害は出てないみたいだし、すぐに対策を考える必要もないだろ」
ファウルに、なにかしらの実害があるというのなら問題だが……そんな素振りも、ない。
だから言ってしまえば、今の状況は『友達になろうと話しかけている』ものに見えなくもない。むしろその見方が正しいかもしれない。
ファウルはああいう性格だし、まあぐいぐい来る奴が苦手なだけかもしれないし。もう少し、様子を見てみよう。
「……」
それにしても……仮にも世話係であるオレと、ずいぶん扱いが違わないか? いや、別にオレがあいつと友達になりたいわけではないのだが……釈然としない。
それだけ、ファウルのなにかをあの女は気に入った、ということだろうか。
「……しかし、あんな顔始めて見たな」
なんともいえない表情のファウルはともかく、メルデュース・マ・ガランドーラの楽しそうにしている姿など、ファウルと絡んでいるとき以外に見たことがない。
いったい、なにを話しているのか……今度、ファウルにそれとなく聞いてみようか。
「うぅ……もう我慢できねぇ! 俺行ってくる!」
「は?」
「おーいファーちゃん!」
遠くから見ているのが、ちょうどいい干渉具合だというのに……それがわかっていないのか、シャーベリアは二人の所へと駆け出してしまう。
止める間もなく、「二人でなに話してるの~」と声をかけていた。
「アホだな」
「ですわね」
その後、泣きながら戻ってきたシャーベリアを見て、オレとエリザは大きなため息を漏らすのだった。




