ファウルの抱えるもの
クラスメートを殺しかけた罰として、ひとまず停学を言い渡されたオレは、その処分の裏になにがあるのかを結局教えてもらえないままに、部屋を後にした。その後ろから、ファウルが着いてくる。
正直、こいつが現れた時は驚いた。まさk、わざわざ来てくれるとは思わなかった。それも、あのクリウス・ヴォルガニックに正面切ってオレのことを許してくれと言うだなんて。
「ファイル……ありがとな」
気づけばオレは、ファウルに……魔族に、お礼を言っていた。
「へっ?」
「いや、まさか意外だったからさ。ファウルは……オレを嫌ってるのかと思ってたから」
「へぇ!?」
なんでそう思ったかって? そりゃあ……オレがファウルの秘密に踏み込んだからだ。
周囲に隠したい秘密を暴き、何食わぬ顔で接していた。本来なら助けられるどころか、無視され見捨てられてもおかしくはないというのに。
「嫌って、なんて……」
「それにしちゃ、あれ以来オレを……いやオレたちを避けてるだろ?」
あれ以来……それは、オレたちがファウルの秘密を知ったことを暴露された日だ。あの日から、ファウルとオレ、シャーベリア、エリザは以前のように絡むことはなくなった。
ま、ルームメートであるエリザとはどんなことになってるのかあまり知らないが。同室なのにまったく会話がないというのも考えられないし、なぜかエルザはそのときの様子を話したがらないし。
だからまあ、オレはあの一件で嫌われてしまったと思ったわけなのだが。
「避けてない……こともない」
「どっちだよ」
ファウルは言いにくそうだ。うまく言葉にするのが難しい……そんなところだろう。だが、少なくとも完全に避けている、というわけでもなさそうだ。
「ただ……どうしたらいいか、わからない。私の、こと……本当の、私を知ったら……みんな、離れていくから」
言葉を探し、手探りな感じで話すファウルは……いつも以上に自信がなさそうに見えた。それだけ、自分がヴォルガニック家の魔族と知られるのが嫌だったのか?
それとも……姓を変えさせられるくらいだ、家での扱いがひどい可能性だって、充分に考えられる。それにより、自分に自信が無くなったとか。
「大丈夫だろ、ファウルが誰だろうと、誰も離れやしないって」
「……」
離れやしない、なんて言うのは無責任だったかもしれない。だが、きっとそうであろうと、オレは思う。
シャーベリアだって、エリザだって……本当のファウルを知ったって、離れやしない。むしろ、隠し事をされてたことを悲しむだろうあいつらなら。
……隠し事の塊であるオレが、なにを思ってんだかな。
「……それ、でも……私は……」
ファウルはオレには聞こえない声で、なにかを呟いた……つもりだったのだろう。だが、オレにはちゃんと聞こえた。
あいつらなら、どんなことがあっても離れはしない。それはファウルもわかっているだろう……それでいてなお、ファウルは自信が持てないようだ。
やはり、ファウルが抱えているのは……単に、ヴォルガニックの人間だということだけではないのではないだろうか。他に、なにを抱えている?




