クラスメート殺しの罰
「ファウル……?」
クリウス・ヴォルガニックに呼び出されたオレは、奴と二人きりで話をしていた……が、そこに乱入者が現れる。それは、ファウルだ。予想もしていなかった乱入者に、オレもクリウスも言葉を失ってしまう。
が、そこは冷静沈着なクリウス・ヴォルガニック……すぐに、冷静さを取り戻す。
「……なにをしに来た?」
相変わらず、妹に対する態度とは思えない。そういや、ファウルに兄さんと呼ばれるのを嫌がっていた……いや、そもそも認めていない様子だったもんな。
そんなクリウス・ヴォルガニックの威圧に、ファウルは肩を小さく震わせる。が。
「……ゆ、ユーク、を……許して、ください」
ファウルは恐れながらも言葉を……ここに来た理由を、告げる。それは、オレのことを想ってここに来てくれたということか。
「……ほう、貴様が意見を述べるとはな。だが、許すもなにも……こいつが、暴れたのが原因でこいつはここにいる。私に言われてもな」
「ユークは……きっと、なにか、理由があったん……だよね? ユークは、理由なく、あんなこと、しないよね?」
オレにはこの二人の関係性は、表面上のものしか知らない。だが、ファウルの性格に加えてあの複雑な関係だ……きっとそこに親しみどころか気軽に話せる関係性すらない。
そんなファウルが、オレのことを心配し、クリウス・ヴォルガニックに意見をぶつけている。そのことが、どこか嬉しく……そして、申し訳なくもあった。
ファウル、理由はあるんだ……オレが暴れた、いやヤードラ・サイフェンを殺そうとしたのには。そして、その理由の詳細を話すわけにはいかない。そもそも、信じてもらえるとも思えない。
「ユーク……なんで、黙って……」
「無言は都合の悪いことがある証だ。貴様がどれほどこの男を庇おうと、この男はクラスメートを殺そうとした危険思想の持ち主には違いない」
……癪だが、クリウス・ヴォルガニックの言うとおりだ。もしまたあの教室に戻っても、オレはヤードラ・サイフェンをまた殺そうとするだろう。それはわかってる。
そして、それではいけないのも……わかってる。奴には、聞きたいことがある。オレが勇者だった刻に、あいつは一魔物として襲ってきたはずだ。
そんな奴が、なぜ数年の時を経て学校なんかに通っている? 今更ここで学ぶものなんかあるのか? それとも……単に次期魔王の座でも狙っているのか?
「否定はしないさ。オレはクラスメート……いや、ヤードラ・サイフェンを殺そうとした。あいつには個人的な恨みがあってな……だから、またあいつに手を出さないって保証はできない」
「そんな……」
ファウルとは、付き合いは短いながらもそれなりにいい感じにつるんできたはずだ。ヴォルガニック家関係のことでギクシャクもしたが、こうして心配してくれるのは本当にありがたい。
ありがたいが、それを受け入れるわけにはいかない。クリウス・ヴォルガニックがそれを許すわけないし、オレ自身が自分に嘘はつけない。仲間を殺した奴を、許すわけにはいかないのだ。
「なるほどな……どうやら嘘はついていないらしい。貴様とヤードラ・サイフェンは初対面のはずだ……だが、貴様の恨みとやらはとても初対面の相手に向けるようなものではない。貴様とヤードラ・サイフェンの間になにがあったのが……実に興味がある」
ここで、クリウス・ヴォルガニックが食いついてきた。予想外だ……てっきり冷徹に、オレに停学なり退学なりの処分を下すと思ったのに。それどころか、興味があるだと?
この男、なにを考えてる?
「私達とコレの関係性に疑問を持ったこと、クラスメートへの恨み、そして貴様から感じる魔力以外の力……実に興味深い」
「っ……」
まさかオレが、前世の記憶を保ったまま転生した魔物……しかも前世は人間で勇者やってた、なんてことはさすがに気づかないだろうが、オレという人物にいろいろな疑問を持っている。
見る者が見れば、そうなのかもしれない。オレを客観的に見ても、やはり不思議な……いや不審な人物に見える。
ファウルももしかしたら、そんなことを感じているのかもしれない。なのに、こうも心配してくれるとは……
「ふん……決めた。貴様へは、一週間の停学を命じよう」
「なっ……」
決めた、と言うクリウス・ヴォルガニックの瞳は鋭く、いったいどんなばつを与えられるのかと身構えていたが……それは、なんとも肩の力が抜ける感覚があった。
停学……退学でなく、停学だと? しかも、一週間? 短すぎないか?
「まさか、そんなことで……」
「あぁ、無論それで貴様の罪が帳消しになるわけではない。停学明けの後……むしろこちらが本題だ。その時、改めて伝えよう」
どういう、ことだ。なにを考えている? 停学の後に本題があるなら、停学なんて必要ないんじゃないか? それとも、周りへの体裁のようなものか? 形だけでも、謹慎にしておくよう周りに見せつける。
……それも、あるだろう。だがそれがすべてではない。こう考えるべきだ……オレへの罰を用意するための準備に、一週間の期間がいると。
そこになにが待っているかわからないが……ここは、おとなしく従う他にないだろう。
「あぁ、わかった」
「なかなか潔いな、いい心がけだ」
どうせ逃げられないのなら……お前がなにを企んでいるのか、この目で見届けてやるよ!




