代表補佐を決めよう
オレがクラス代表に決まった翌日……クラスの代表だなんてめんどくさいことやってられないと思っていたが、思いの外なにもすることがない。まだ一日しか経ってないので判断は迷うが。
エリザ・カロストロンが立候補してクラス代表になろうとした以上、Dより上のクラスに上がる可能性が高くなるってのは間違いないだろう。それしか道がないわけではないだろうが、それが近道なのは確かだ。
だからますます、上のクラスに上がるつもりのないオレには不要の役職だと思うのだが……
「で、決めたのかよユーくん。クラス代表補佐を誰にするか」
と、このシャーベリアは言う。クラス代表となった人物にはそれを補佐する者を選ぶ権利がある。
やっぱり、なんかめんどくさそうなことになっている気がする……ここは適当に誰かを、それこそエリザ・カロストロンでも補佐にして、仕事を丸投げするか? 仕事があるか知らんが。
ここが学園で、オレの常識の中にある知識が当てはまるなら……たとえば、クラスの行事を取り締まるとか、教師から仕事を押し付けられたりとか、そんなイメージだ。クラス代表ってのは。
だから、補佐となる奴に仕事を丸投げってのはそう間違ってないはずだ。問題は……
「誰もオレと目をあわせようとしないんだよなぁ」
エリザ・カロストロンとの勝負から一日が経ったものの……クラスの連中から、オレは距離をとられていた。それはおそらく、オレが無意識に放った威圧感というやつのせいだろう。
そのせいでオレがクラスの連中に『怖い奴』『やべー奴』『魔王の子供に関わると死ぬ』など変な噂が立ってしまっている。ちょっと前まで、魔王の子供でDクラスのオレをバカにした目で見てたくせに。
「まあ仕方ねーよあんなん正面から見ちゃったらさ。つっても、それが原因で今や、十五人弱のこのクラスでユーくんと話すのはオレっちとファーちゃん、それにエリちゃんだけだもんな!」
シャーベリアの言うとおり、あの件以降オレに話しかけてくる奴はいなくなった。元々シャーベリアとファウルとしかしゃべっていなかったとはいえ、まだ仲を築いていないのにあんなことがあっては、オレに近づくことすらしないだろう。
別に、クラスメートとはいえ魔族と仲良くするつもりもないのだが。
なのに、オレの威圧感とやらを間近で受けたエリザ・カロストロンは、事あるごとに突っかかってくるのだが。
「最初はなんだこの偉そうなお嬢様って思ってたけど、いい子だよなぁ。ユーくんもそう思うだろ?」
「そうだな。なんだこの変な奴、って思うのなら現在進行形で隣を歩いてるけど」
あのとき、漏らしたんじゃないかとかさんざんいじってしまったというのに……まさか、いじられるのが好きなタイプなのだろうか。
「せっかくなら、あの子を代表補佐にしたらいいんじゃない? それとも、無二の親友であるオレっち、いっとく?」
「無二の親友? そんなんいないけどな」
まあ現実的に考えれば、シャーベリアの言うようにエリザ・カロストロンを代表補佐にしたほうがいいのかもしれない。なんかいろいろ知ってそうだし、気合いありそうだし。
ただ……
「あのうるさい金髪ドリルと一緒の時間が増えるとか、頭痛くなりそうだ」
あの金切り声を耳元で叫ばれ続けるというのは、我慢ならない。いくら能力が高いとしても、生理的に無理な部分もあれば仕方ないだろう。
んで、このシャーベリアだが……こいつはオレの推薦人だから、仕返しにオレが代表補佐に選ぶのはなんら不思議ではない。ただバカだし、仕事を押し付けるには向いてない。
「となると、残るはファウルか……」
あいつなら、なんか能力値高そうだし……仕事もすんなりと引き受けてくれそうだ。それにシャーベリアと同じく、オレを推薦した一人なのだから、逆に推薦されても文句は言えないはずだ。
ったく……入学早々、なんでこんなことで悩まにゃならんかね。
「ははっ、クラスの中でファーちゃんしか頼れないって、ユーくん友達いなさすぎでしょー!」
「余計なお世話だしいらねえよ」
総勢十三人……それが、このクラスの生徒の数だ。これは多いのか少ないのかはわからないが……シャーベリア曰く、魔力の質、量でクラスが決まる以上、五つのクラスがほとんど同じ人数、ということにはならないらしい。
つまり極端に言えば、魔力が強い者はAクラス、弱い者はDクラスに選ばれ、平均的な者はBかCクラスに選ばれる。よってこの学園に所属する以上、基本的にB、Cクラスの人数が一番多くなる。
その次にDクラス、そしてAクラスといった具合に。そしてSクラス……これは、一人いればいいほうだそうだ。それが今回は二人もいるのだから、豊作らしい。
「ま、それは置いといてだ。ファウルに頼むとするかな」
「断られたらどうすんだよー?」
「その時は……別の奴を探す……のは難しいから、折れるまで口説き落とす。幸い代表補佐を決める期日は決まってないし、気長にいけばなんとかなるさ」
「ユーくんの中にはファーちゃんの姿しか見えてないんだね……オレっちちょっとジェラシー!」
バカがバカ言ってるのは放っておいて、だ。こうは言ったが、ファウルが無理なら仕方ないがエリザ・カロストロンに頼もう。さすがに無理やりやらせるのは後味が悪い。
クラスの他の連中も、オレの話すらまともに聞かなさそうだし。仮にエリザ・カロストロンがダメなら、その時はシャーベリアに頼むとするか。
「で、ファウルはどこだ? さっきから校内歩き回ってるっていうのに」
休憩時間を使い、ファウルを探して回っているのが今の状況だ。いつもなら教室に一人でいるくせに肝心なときにいないんだからな。
ルームメートであるエリザ・カロストロンに行き先に心当たりがないか聞いてみたが、残念ながらないらしい。ちっ、役に立たない。
まあ知り合って三日程度じゃ、なにもわからないか。
「けど、いい加減見つけないと休憩時間終わっちまうぞ」
正直な話、ファウルが教室に戻ってくるまで待っていてもよかったのだが……こういうのは、周りに誰かいると集中できない。口説き落とすなら、二人きりの場所の方がいい。はず。
なぜかこいつ(シャーベリア)もついてきたわけだが……
しかし、奇しくも探す目が増えたメリットはある。行動は共にしてても、自分じゃ注意の届かない場所にも目を向けてくれて畏怖……はずだ。とはいえ、これだけ歩き回ってもファウルは見つからない。
となると、もう教室に戻っているのだろうか。もうすぐ休憩時間も終わるし、その可能性が高いかもしれない。なので、来た道を戻ろうと、足を反転させたところで……
「なあユーくん、あれファーちゃんじゃねえか?」
ファウルと思わしき影を発見したシャーベリアが、とある箇所を指差していた。それは窓の外……ちょうど、校舎の影になっている部分。なにかを探すつもりでなければ、見つけられないような場所。
そこに確かに、影はあった。あの銀髪は、確かにファウルのようなもののように思う。こちらに背を向けているから、表情は見えないが……
あんなところで、なにを……? しかも、ファウルの正面に誰かがいる。その誰かと、話している?
いったい、誰だ? まあこの学園の魔族の顔なんて、わからないのが大半なのだが。……そう思っていたが、ファウルが話しているその影は、オレの知っている顔だった。
「なんで……ファウルが、ガラム・ヴォルガニックと一緒にいるんだ……?」
ファウルが話している人物、それは……実技試験の時にオレに突っかかってきた男。エリート一家ヴォルガニック家の次男、ガラム・ヴォルガニックであった。




