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本気で来いよ



 結局朝から、四人での登校となった。オレとシャーベリア、わざわざ迎えに来てくれたファウル、そして……ファウルのルームメートという、エリザ・カロストロンでだ。


 まさか、入学二日目でこんなことになるとは……さすがに予想していなかった。



「ふん、一緒に登校したからって、勝負に手を抜いてもらえると思わないことですわね!」



 だがなぜこいつは、聞いてもいないことでわざわざ威嚇してくるんだ。別にそんなこと希望しちゃいないし。



「いいよ別に。むしろ本気で来いよ」



 手加減なんてされたら、わざと敗けにくいだろうが。なるべく圧倒的な力を見せてくれ。


 そんな意味で、言葉を返したのだが……



「な、なっ……そぉ、ですか。お前が本気でもオレには勝てない、と。そう思ってるんですのね?」


「へっ?」



 ぷるぷると肩を震わせ、オレのことをにらんでくるエリザ・カロストロン。なに、まさか怒ってんのか? なぜだ、オレなんか気に障るようなこと言った?


 はて、わからんのだが。



「っははは! ユーくん、傑作だよ! まさか無自覚なの!? めっちゃ挑発してたじゃん!」



 と、腹を抱えて笑うシャーベリア。こいつが言うには……挑発、だと? いやいや、オレにそんなつもりは微塵もないんだが?


 だが弁明しようにも、シャーベリアの笑い声でかき消されてしまう。こいつうるせえ!



「ふ、ふふ……いいですわよ。なら、本気でやってやろうじゃありませんの!!」



 金髪ドリルのドリル部分が、まるで生き物のように揺れている。すげー、怒りの感情って髪の毛をも動かすのか。それとも、魔族だからか?


 ……と、それは置いといてだ。この怒りよう、かなりまずいな。わざと敗ける程度におさめたいんだが、これはもしかしたら怪我でもしちゃうんじゃないか?


 もう怒りも収まりそうにない。……そうだ、ファウルになんとか弁解してもらえば! 友達大好きのあいつならファウルの言葉なら聞くだろう。



「なあ、ファウル……」


「友達と、登校……ふふ」



 助けを求めるためにファウルに呼び掛けるが……聞いちゃいなかった。


 しかも、妙に嬉しそうな顔をしてやがるから……言いにくいじゃねえか。ただ友達と登校するだけで、こんな顔するなんて……魔族の、くせに。



「……はぁ」



 エリザ・カロストロンは怒りに吠えてるし、シャーベリアはバカ笑いしてるし、ファウルは上の空だし……これはもう、誤解を解けそうにはないな。


 結局、弁明することもできず学園にたどり着いてしまった。エリザ・カロストロンなんか、先ほどからオレのことにらみつけて「シャーッ」って言ってるんだが。怖いよ。


 こんなテンションで勝負するのかよ、くっそ。やりにくいな。


 それから、一旦教室に行き……全員揃ってから、訓練所に移動。ステージに、オレとエリザ・カロストロンのみが立つ形になり、他の生徒や教師は邪魔にならないよう、下がって座って。



「始まっちまうのか……」


「シャーッ」



 あいついつまであの状態だよ! いい加減元に戻れよ!



「なあなあファーちゃん、その眼帯取っていい? その左目怪我してんの? それともおしゃれ?」


「取ったら死ぬよ」


「え、死ぬってオレっちが? うひゃーこえー」



 後ろでは、オレの推薦人二人がのんきに話している声が聞こえる。人のこと駆り出しておいてケラケラ笑いやがって、いいご身分ですねこのやろう。


 オレの正面、エリザ・カロストロンの背後には、ファウルとシャーベリア除く生徒一同が集まっている。全員が彼女の推薦人……ではないだろうが、まあ応援するならオレよりもあの女の方が、ってことか。


 ちなみにファウルは、エリザ・カロストロンにこう言っていた。



『エリちゃんは友達……でも、ユークも友達。それに、推薦も、した。だから、あっちに座る。でも応援は、してる。どっちも』



 とのことらしい。ルームメート以上に、友達として応援したい気持ちも確かにあると。ぶっちゃけ今エリザ・カロストロンの背後にいる生徒より、よっぽど応援してるだろう。


 そりゃ入学したばかりでオレやエリザ・カロストロンの人柄……いや魔族柄? それについてはわからない奴らが大半だと思う。だが、現魔王の子供ではあってもDクラスに来るような奴と、なんか知らんがやる気のある奴……選ぶなら後者だろう。


 まあそれは正しい判断だ……オレはこの勝負に勝つつもりはない。(無理矢理ではあるが)推薦してくれたシャーベリアとファウルには悪いがな。


 どうせ、面白半分で推薦しただけだ。オレに、クラスの代表が務まるはずもないしな。



「ではこれより、クラス代表を決めるための勝負を始める。形式は、どちらかが降参するか戦闘不能になるまで続けるものとする。魔力を使うもなにをするもオーケーだが、武器など反則行為は無効とする。また、不正も認めない」



 オレとエリザ・カロストロンとの中央の位置に立つアリス・ニーファがこの勝負のルールを説明する。ルールと言っても、まあ正々堂々戦いましょうってことだ。


 ただ、不正も……のときにオレのことを見たのが気になる。まさか、わざと敗けようとしてるのがバレたか?


 ……いや、それはない。と思いたい。その意味はともかくとしめ、どのみち、開始早々に降参の手は使えなくなったってことだ。



「ではせいぜい、クラス代表の座を狙って戦いあうといい。始め!」

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