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魔力とは別のなにか



 クラス代表を決めるために、立候補者のエリザ・カロストロンと勝負をすることになってしまった。え、どうしてそんなことになったかって? オレが聞きたい。


 シャーベリア、そしてファウル……この二人がオレを推薦したせいで、エリザ・カロストロンの目に留まってしまった。それが結果的に勝負に繋がってしまった可能性は高いが……え、なにか忘れてないかって? ないない。


 しかしクラス代表を決めるためだけに訓練所を使うなど、許可が下りるはずもない。……そう思っていたら、あったり下りた。


 曰く、面白そう。そして言い争うより拳で語れ、と。バトルマンガじゃないんだぞ。



「……くそ、めんどくせぇ」



 その日は、いろいろ準備もあるということで次の日に勝負は行われることになった。その後は、授業再開といった形で一日目を終えた。


 寮では初の一人暮らし。正確には、シャーベリアというルームメートがいるのだが……これまで小うるさかったリーズロットがいない生活というのは、新鮮だった。


 そう、リーズロットといえば……初日の学園生活でなにがあったかを連絡するように、言われているんだった。そんなわけで、その日の夜、一人になってからリーズロットに連絡をとる。


 この、連絡をとる方法だが……魔族は、魔力によって指定の相手と通信が可能なのだ。これは魔族になってから初めて便利だと感じた瞬間でもある。人間の時だと、魔法により道具で連絡網がとれるようにした『魔道具』が必要だったからなぁ。


 それが魔族なら、その身一つで連絡可能。というわけで、さっそくリーズロットに学園での出来事……つまりなにクラスになったかを伝えたわけだが。



『で、Dクラスですって!? なにかの間違いじゃないんですか!?』



 と、たいそう驚いていた。怒るよりも、驚きの方が上回ったらしい。



『ま、まさか魔王になりたくないからって、手加減を……!』



 あらぬ疑いも、かけられた。まあ魔王になるつもりはないと日々言っていたのだから、そう疑われても仕方ないが……これに関しては、オレは本気で挑んだ。それは、ちゃんと訂正しておく。



「いや、オレは本気で挑んだつもりなんだけど……なんででしょうね」


『もしや、いらぬ感情に流されたんじゃないでしょうね。魔力は、感情によって左右されるところが大きいと説明したはずですが』


「……」



 魔力を、出す直前のやり取りを思い出す。確か、ガラム・ヴォルガニックの煽りがあって……それに対抗しようって気持ちが芽生えたのは確かだ。感情によって左右か……否定できないな。



『まったく……ですから品格やマナーを学びなさいとあれほど言い聞かせてきたのに……』



 向こうから、リーズロットの呆れたようなため息。仕方ないじゃないか……魔族に品格とか礼儀作法とか、そんなものとは無縁だと思ってたんだから。正直、魔族がなに言ってんだ、程度にしか思っていなかった。


 ……まあ、その辺りの話は置いといて、だ。



「多分だけど、原因はそこにないな。オレ自身、力の昂ぶりは感じたんだけど」


『ふむ……確かに坊ちゃまは、純粋な魔力とは別のなにかを感じさせていましたからな。それが、魔力が存分に発揮されなかった理由かと』



 今、リーズロットの口からとんでもない言葉を聞いたな。魔力とは別のなにか、だと? なにそれ、初めて聞いたんだけど。



「初耳なんだけど?」


『…………そうですか?』



 今の間はなんだ、間は。おい、だんだんぼろが出てきたぞこのババア。オレに伝え忘れてただけじゃないのか。うっかりさんじゃ済まされないんだが?



『と、とにかく……なってしまったものは仕方ありませぬ』



 ごまかした……ついに無理やり話を持っていきやがったぞ。まあオレもこの件に関して深く追及するつもりはないけどな。


 それに……魔力ではないなにか、の力に心当たりがないわけでもない。もしかしたらだが……オレの前世である、勇者としての記憶、それが関わっているんじゃないだろうか。あくまで心当たりで、だからなにがどうなってる、とはわからないが。



「そう、なったもんは仕方ない。だからこのまま平穏に過ごして……」


『このまますぐに上のクラスに上がっていく、ですよね?』



 通信越しだというのに、リーズロットからの圧力を感じる。くそ、せっかく離れられたのにこのババア、すげーぐいぐい来るじゃんか。



「そ、ソウダナ。まあ、それは置いといてだ。明日はクラス代表とやらを決めるための勝負しなきゃいけないから、今日はもう寝るぞ」


『! 坊ちゃま、どうしてそんな大切なことを先に言わないのです。勝負、とは坊ちゃまがですか? なんだかんだとい言っておきながら、結局はクラス代表に立候補するくらいにやる気が……』



 プツッ



 話が長くなりそうだったので、通信を切る。オレから立候補したわけではないとか、修正すべきところはが……まあ、いいか。どうせクラス代表なんて面倒なものになるつもりはないんだし。適当に、善戦したけどダメだった、って感じの事後報告をしよう。


 リーズロットの小言聞いたら、マジで眠くなってきたな……もう、寝よう。そして明日はさっさと負けよう。



「ユーくん通信終わった? だれだれ、もしかして彼女とか? 憎いねえこの色男!」



 残る問題は……どうにかしてこいつを黙らせて、眠らなければいけないということだ。

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