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クラス代表



 シャーベリアが大方のサンドバッグになった後、教室に戻ってきたわけだが。



「うぅ、痛い……なんでオレっちがこんな目に」


「自業自得以外のなにものでもないぞ」



 残念なことに、シャーベリアは自分がなぜサンドバッグにされたのか気づいていないようだ。誰も教えてくれなかったんだろうな、居眠りが原因だと。


 オレも教えてはいないがな。



「けど、このクラス……さすが一番低いだけあって、どいつもこいつも魔力の使い方がなっちゃいないなぁ」



 観察していたが、どいつもこいつもちゃんと魔力を使えている奴はいない。だからこそのDクラス判定なんだろうが……それにしたって、下手すぎる。



「ユーくんがそれ言う? しかも、それ聞かれたら今度はユーくんが袋叩きだよ」


「ユーくんやめろ」



 同じクラスな時点でオレにそんなことを言う資格はないのかもしれんが……オレが育ってきた魔王城では、超一流の魔族が揃いも揃ってたからな。どうしても比較してしまうのかもしれん。


 あいつら……特にリーズロットは俺が上位のクラスに行くことを前提として話していた節があるから……この結果を聞いたら、どんな反応するだろう。学園に抗議しないだろうか。



「ではこれから、クラスの代表を決める」



 別に申し訳ないとかは思わないが……と考えていたところへ、アリス・ニーファが口を開く。それは再び授業……というものではなく、クラスの代表を決めると、そう言ったのだ。



「代表……?」



 なんだそりゃ。さっきクラス分けでSクラスの二人が生徒代表に選ばれていたが、それとは違うのか?



「……クラス代表は、そのままの意味。さっき選ばれた生徒代表は、S~D全部の、代表。でもクラス代表は、クラスの、代表」



 と、まるでオレの心を読んだかのように隣に座るファウルが話す。ふむふむ、そうなのか。


 オレの両隣の席は、ファウルとシャーベリアだ。狙ったんじゃないかと思えるほどに、知り合いで固まったなぁ。



「では、誰か立候補……もしくは推薦はないか?」



 みんな当然の知識として知っているという前提か、クラス代表に対する説明はない。で、立候補か推薦があれば決まるとの話だ。だが、立候補はのともかく今日初めて顔を会わせた奴らで推薦というのも難しいだろう。


 なので、必然的に立候補待ちとなるのだが……クラス代表なんていかにも大変そうで目立ちそうな仕事、誰が好き好んでするのか……



「わたくしが立候補しますわ!」



 ……いたよ。目立ちたがり屋の奴が。なんだなんだ、いきなりの挙手アンド起立に周りの視線も注目してるじゃないか。よくも恥ずかしげもなくあんなことができるな。



「クラスの代表者……それはこの、エリザ・カロストロンこそがふさわしいですわ!」



 聞いてもいないのに自ら名を名乗り、口元に手を当てておーほっほと笑っている。あんな笑い方する奴、ホントにいるんだな。初めて見た。


 そのお嬢様口調の女は、金髪を縦ロールにしている。あれだ、金髪ドリルってやつ……まるでお手本のようなお手本キャラだ。鋭く生えた獣のような牙と、腰から生えている二本の細い尻尾が印象的だ。



「そうか。……他にいないか?」



 いきなり立ち上がったお嬢様に、あのアリス・ニーファでさえ動揺しているように見える。それから、他の立候補者を探すが……当然、誰もいない。


 よって、このままエリザ・カロストロンに決まる。はずだったのだが……



「はいはーい! オレっちは、このユークドレッド・ボンボールドを推薦しまーす!」


「なんですって!?」


「……」



 バカがバカなタイミングでバカなことを言い始めた。



「おい、なにを勝手な……」


「だってユーくん今の魔王の子供なんでしょ! だったら知名度はトップクラスだし、カリスマ性だってありそうじゃん! ね、やろうぜクラス代表ー!」



 こ、こいつ……殺されたいのかチャラ男!


 ヤバい、シャーベリア……いやバカのせいで周りがざわざわしている。当然だ、こいつの台詞がまったくの的はずれというわけでもないのだから。


 魔王の子供……そんな肩書きがまさかこんなところでも生きてくるとは、思わなかったよ!


 だが!



「ふざけんな、オレはやらねーぞ」



 なぜオレが、クラス代表なんてめんどくさそうなことをせねばならんのだ! それに、こんなバカの推薦一つで唯一の立候補者であるエリザ・カロストロンに勝てるわけが……



「……私も、推薦する。ユークを」


「!?」



 シャーベリアの反対隣から、またもオレを推薦する声。誰か確認するまでもない……その席、その声、その呼び方!



「ファウルまで……」


「面白そう、ぶい」



 面白そうならお前が立候補しろや! なぜオレに押し付ける!? くそ、予想外だ、まさかこんなことになるなんて……いや、まだだ。しょせん推薦、しっかり意思をもって拒否すれば済む話……



「あらぁ、確かに現魔王様のご子息かもしれませんが……実力はDクラスでしょう。むしろその肩書きでその評価……そんな名ばかりの男、クラスの代表なんて恥ずかしい……」


「あぁ? てめえもDクラスだろうが金髪ドリル。てめえこそ名ばかりのお嬢様だろ」


「で……はっ?」



 ……あ、ヤベ。ついムカついたから言い返しちゃった。別に魔王の息子がどうとかって肩書きはどうでもいいけど、ムカつく口調でムカつくこと言われたからつい……


 どうしよう、フリーズしてこっち見てるよ。



「な、なな……なん、ですって……今貴方、わたくしを侮辱して……」


「いや、今のはその……悪気はなくて」


「悪気、ですって? この、わたくしを誰だと心得ていますの! わたくしは、カロストロン家の……」


「うるせー家柄がどうとかそういうのには飽き飽きしてんだよこの金髪ドリルが!! ……あっ」



 し、しまった……また言っちまった。ガラム・ヴォルガニックみたいなこと言うからつい。


 どうしよう、顔真っ赤だ。肩を震わせるほどに怒ってやがる。ついでに金髪も震えてやがる。



「先ほどから金髪ドリル金髪ドリルとわたくしのことをおちょくった態度で…………もう許せませんわ! 貴方、クラス代表の座をかけてわたくしと勝負なさい!!」


「えっ……」



 おいおいおい、クラス代表を決めるために勝負とか……どこのテンプレ小説だよ! いや魔族の世界に小説はないけども!


 くっそ、さらにめんどくさいことに……オレの失言が原因の一端とはいえ、元々はこいつらの……!



「おほー、勝負だと勝負! 楽しみだなユーくん!」


「……ガンバ」



 こ、い、つ、らぁ……!



「……勝手に進んでるが、まあいいや。じゃあクラス代表候補者の二人は、適当に決めてくれ。訓練所なら貸し出してやるから」

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