地球最強の悪役令嬢鬼邪殺戮怒《キャサリン》
えーまず初めに。
私、悪役令嬢に転生するジャンル(ジャンルとして独立してる扱いは一般的なのだろうか?)の作品を結構好んで読んでおります。
ゆえにそう言った作品を貶める意図は毛頭ございません(保険)。
でもね、ちょっとだけ悪役令嬢のやつをやってみたかったんです。
ユルシテ。
俺は地球最強だ。
どんな敵が来ても0.2秒であの世に送る事ができる。
いや実際に計測したら平均5.81秒程度だが、やはり遠距離から撃って来る奴も居るし実際0.2秒で始末した事もあり「できる」というのは「可能」と言う意味なので大体合ってる。
武器は持たない、カラテ的なアレだ。
しかし強すぎるってのも辛いもんだ。
俺が強すぎるために地球中の奴らから命とかを狙われている。
さてそんな俺だが、ある日突然トラックに轢かれて死んでしまった。
地球最強の男にしては間抜けな死に様と思うかもしれないが、流石に100万台のトラックに全方位から襲われてはなかなかどうしようもない。
両手両足の小指を全てジャストタイミングでヒットされ、そこにロケットモーターを噴かしたトラックが突っ込んできてあえなく木っ端微塵だ。
もし次があるならトラック100万台に対抗できるよう訓練しておきたいが、トレーニングのためにそんなトラックを用意するのは流石に無理だろうな。
さてさてそんな死んだはずの俺は、気が付いたら5歳ぐらいの白人女児になっていた。
どうやらこの世界は剣と魔法が存在するらしく、俺は異世界転生と言うやつを体験してしまったらしい。
流行っているらしいが異世界転生なんか、と俺も思っていたが世迷い事やフィクション扱いなのはそれを見て帰ったやつが居ないからだろう。
その第一号になってやってもいいが、せっかく転生したのでこの世界で楽しみたい。
そうこうしているうちに、俺は自分が転生した女児キャサリンの名前を始めとして人名、国名などの固有名詞に聞き覚えがあることに気付いた。
そして思い出したのが、転生前に妹から借りた恋愛ゲームの中で遊んでいたものと同じだと言う事だ。
確かタイトルは『ソーサリーアカデミー~恋の魔法に掛けられて』だったか。
ゲームと言うのはなかなかバカにできないもんだ。
トレーニングの無い休養日に体を休ませながら楽しむのにうってつけで、ついつい全EDコンプするまで遊んでしまった。
問題はキャサリンのポジションだ。
プレイヤーの分身であるプレイヤーキャラを散々いじめ抜き、バッドエンド以外ではろくでもない結末を迎える性根の曲がった娘だったはず。
とは言え、よく考えたら俺がやる事にはあまり関係ないな。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
月日は流れ、ゲームの舞台となる学園に入学する日がやって来た。
俺はキャサリンとしての肉体と技を鍛え、200cmを超えた前世ほどではない物の180cmの背丈に肉食獣のような筋肉を搭載した体躯を手に入れていた。
また鍛えているうちに、何もなかった股ぐらからそのうち一物が生えてきた。
これも前世ほどではないがなかなか逞しいものだ。
「待っていたぞ、鬼邪殺戮怒!」
学園の門内に入った俺の前に、5人の男たちが立ち塞がった。
殺気が垂れ流しでまだまだ未熟だが、それぞれに鍛え上げた肉体に悪くない面構えをしている。
「ほう・・・いつかのように躾けが必要か?」
「「「「「黙れ!今日が貴様の命日、この学園がその墓標だ!」」」」」
彼らはゲームではメインの攻略対象だったんだが、幼少時まだ俺が幼女の姿を保っていた頃に悪さをしていたのを見かけたので思わず教育してしまった。
それ以来事あるごとに何か襲ってくるようになったので、その度に拳で返していた結果がこれだ。
思い起こせば、心や背景に闇を抱えているキャラが多いのがこのゲーム、というかゲームの担当ライターの売りだったような気がするので性格の悪いクソガキ揃いだったのも当然か。
まあ男キャラが細っこくて病的なのが唯一の不満点だったが、それが偶然とはいえ解消できたのはラッキーだったな。
「いいだろう・・・かかって来い、よちよち歩きのヒヨコ共!」
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私は彼氏いない歴=年齢のままトラックで轢かれて死んでしまった。
でも気が付くと『ソーサリーアカデミー~恋の魔法に掛けられて』の主人公として転生していた!
三十路喪女OL生活の中にあって数少ないオアシス、思わず薄い本を買ったり描いたりしてしまうほど嵌った恋愛ゲームのヒロインになれるなんて!
だけどこういうのって、悪役令嬢とかその取り巻きに転生してしまうパターンのほうが最近じゃ有名な気がするんだけど・・・というかむしろそっちのパターンでイメトレしてきたので現状に逆に戸惑っている。
それはともかく、今日から心に闇を抱えた王子たちを精神年齢大人パワーで懐柔させる学園ライフが始ま・・・はじ・・・・ま・・・・。
ナンダロウ、アレ。
なんか見上げると筋肉過剰気味な男たちが空中で落ちながら戦ってるんですが。
衣装や髪形から攻略対象の王子たちっぽいんですが。
一際異常な空気を纏う男がヒラヒラの服に金髪縦巻きロールで悪役令嬢のキャサリンっぽい恰好してるんですが。
「「「「「うおおおおおおおお」」」」」
「ハハハハハまだ甘いなぁ!」
終・劇
当初の予定ではね?
連載中の拙作『或る勇者の最後』もこのぐらいの分量のはずだったんですよ?
不思議ですねー。
続編作りました→ https://ncode.syosetu.com/n0178ey/