元勇者な姉と元魔王な妹
勢いで書きました
椅子に座り雑誌を読んでいると扉をノックする音が小さく聞こえたので、雑誌を置いて立ち上がり扉を開けるとそこには涙目の妹が立っていました。
「あ、姉上…」
妹はお気に入りのウサギのぬいぐるみを抱きしめながら涙声で呼んできます。
「どうしまし….」
理由を聞こうとしましたが、1つ思い当たる事がありました。
私が二階にある自分の部屋に戻る前に妹がリビングのテレビで心霊特集を観ていたのを思い出しました。
「怖がりなのに心霊番組を観るから…」
私は苦笑して妹を部屋に招き入れます。
「よ、余は魔王だ。幽霊などこ、怖くはない!」
涙声で強がりを言ったその時でした、家の外で猫が喧嘩をする時に相手を威嚇する鳴き声が聞こえます。
「ひうっ!?」
それに驚いた妹が私に抱きつきビクビクと震えています。
「ただの猫の鳴き声ですよ。魔王様」
私は苦笑して優しく妹の頭を撫でます。
「う、うるさい!わかっておる」
私にしがみつき目に涙を溜めて見上げてきます。
(嘗て生死をかけて戦った魔王がここまで怖がりな女の子になるとは不思議ですね。私も人の事は言えませんが)
実は私と妹には前世の記憶があります。私は前世では勇者で男でした。妹は魔王で男。そう前世では私と妹は男で敵対関係にあり、魔王城の最終決戦で相討ちとなり互いに命を落とし、生まれ変わりました。
産まれてすぐは何もわかりませんでしたが、物心つくとびっくりしました。なにせ体は女の子なうえに魔力も感じず、魔族や魔物も存在しないのです。
次に産まれた妹が魔王の生まれ変わりだと知ったのは妹が5歳くらいの時に「余は魔王だ」
と言ったのが気になりいろいろ聞くと私と相討ちになった魔王だと分かりました。
私も勇者のしかも前世の妹と相討ちになった勇者だと言ったら驚いていましたが「この世界には魔力もなく魔族や魔物の存在せぬ。それに其方が姉上なのだから余は其方に従う」と言いそれ以来。良好な姉妹関係になりました。
未だに私にしがみつきながら泣いてる妹を見て以前にも似た様な事があり、その時は元魔王なのに心霊番組を観て怖がっているのが面白くついつい揶揄ってしまい本気で泣かれたうえに両親には叱られ、妹には「姉上なんか嫌い」と言われショックを受けました。
「今日は一緒に寝てあげますね」
私は微笑して妹の頭を撫でます。
「う、うむ。助かる」
ようやく泣き止んだ妹はまだ涙で潤んだ瞳をしながらも弱々しく微笑ます。
そんな姿を見た私は堪らずに妹を抱きしめながら頬擦りをします。
「か、可愛すぎですよー!ぷにぷにな頬っぺたが最高ですっ」
「ひゃう!?離せ姉上!擽ったいではないか!た、頼む。離してください。姉上様ー!」
これは異世界で相討ちとなった元勇者な姉と元魔王な妹が繰り広げる日常の一コマ。
駄文ですがお読みいただき感謝です