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LOVE HOUR  作者: kikuna
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第一章 恋のアンサンブル?2

 部屋に着くなり、瑠璃はそわそわしだす。


 「瑠璃、お前はこの部屋を使え」

 案内しがてら荷物を運び入れる天璃は、後ろからいきなり抱き付かれ慌ててる。

 振り払われた瑠璃は、目を潤ませ、どうしてと尋ねた。

 「俺とお前は兄妹。分るか、ドラマとかマンガのように、実は血が繋がっていないとか、そんなもんはないからな。100パーセント、お前とは兄妹だから、そういう行為は慎め」

 「ばってん瑠璃、ずっっちりっちゃんんこつすいとーったんばい」

 「だけで、それは受け入れられないって何度も言ったよな。言うことを聞かないなら、ここに父さんに来てもらう。ただでさえ、お前と離れて暮らすの嫌がっていたんだから、頼めば引っ越し位しかねないと思うぞ。いやげんにこっちの物件をいくつか見繕って、ファックス送れって言ってたもんな」

 「はいはい。分かりました」

 「それと、その呼び方も直せ」

 「ええーよかろーもん」

 「人が聞いたら誤解するでしょ」

 「誤解ばしゃしぇとったらよか。うちはじぇんじぇんかまわんけんもん。間違っちおらんし」

 プイと横を向いて言う瑠璃を見て、天璃は頭を掻く。

 瑠璃には瑠璃の言い分があった。

 本人はどう思っているか知らないが、それなりに整った顔をしている天璃を、極秘で好いている人は、少なからず瑠璃は3人は知っている。その人たちを含め、天璃を、天璃君とか、テンちゃんとか呼んでいた。幼いながら恋心を芽生えさせた瑠璃は、必死で考えたのだ。自分は別格、差をつける呼び名。散々考え、辿り着いたのがこの呼び方だった。それに対して、両親は何も咎めなかった。むしろ、両親も名前で呼び合う仲だから、そちらの方が自然なのだ。天璃だけが過剰反応を示しているだけで、誰の耳にもこの呼び方は定着している。そして、この呼び方は瑠璃だけが許されていると認識もされているのだ。と言うより、瑠璃がそう仕向けたのだが、まぁそれはそれ。とにかく、そう言った理由で曲げることが出来ないのだ。口をへの字にして、うるうると目に涙を溜める。

 「りっちゃんのいじわる。着替えるから、出て行って」

 これで半日泣き続けて、部屋に立てこもれば、大概は優しく天璃はあやしに来てくれる。

 女に生まれた以上、使えるものは使わないと損だ。

 部屋を出て行く天璃の背に向かって、瑠璃は舌を出す。


 部屋のドアを閉めた天璃は、がっくりと疲れが押し寄せて来て、ソファーになだれ込む。

 これからしばらくこの状況が続くのかと思うと、ゾッとなる。

 母親の電話で聞かされた時、思わず受話器を落としそうになったくらいだ。それとなく、学生寮に居れるように勧めたのだが、そこで父親に電話は変わり、

 「むぞらしか瑠璃の襲わればってんしたばいら、どげんするんだ。そいにひょっとしたばいら、嫉妬したばいおなごし子たちにいじわるしゃれて思い込んで、手首げな切っちなおすかもしれんけんやろ。そーゆう悪ん道から護るんの家族ん務めちゃろうの

 と熱く語られ、承諾するほかなかった。

 電話を切ってからもしばらく、耳がじんじん痛んでいた。

 そんな父親に、実は瑠璃は僕のことを愛してしまっているらしいです。とは口が裂けても言えない。

 「そげな事のあっけん訳なかちゃろう。瑠璃な、賢い子だ。にしゃのいたらんこつ吹き込んだったいろ。瑠璃な、あん子はほんなごとよか子で、大きくなりよったら、お父しゃんのお嫁しゃんに、なっちくれるっち言うてくれたんだぞ」

 そう言って騒ぐんだろうな。想像が付くだけに怖い。天璃は頭を抱え込んでしまう。この際だから、思い切って引越しをして来てくれた方がどんなに幸せか。流石にそれは、母親が反対をしている。小さいが、内装業を営む父親は、一応社長という身分。そう簡単に上京するという訳にはいかないだろという了見らしいが、その裏の理由は、父親から離れ、自由に東京見物をしたいということらしい。月に一度、二人の様子を見に来る気満々の母親は、ちゃっかり、瑠璃の荷物と一緒に、自分用に布団を送って来ていた。



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