表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LOVE HOUR  作者: kikuna
39/49

第五章 旅立ってもいいですか?3

 泣きじゃくる瑠璃の肩を抱いた美璃が、優しく話しかける。

 「あんだんしぇいじゃなかわ。もうずっっち前から、あんだん気持ちに気の付いとったんに、どげんするこつも出来んでん、放っちおいてしもたうちらのいけなかったん」

 瞳を揺らす瑠璃を見て、美璃は微笑む。

 「重雄しゃん、ずっっち心配しよったんちゃ。天璃はそげなぼんくらな男じゃなかっち信じとるの、今回ん件で瑠璃のどげんかしてなおすんじゃなかかっちね。電話ではなしてもなか。マスコミの勝手に騒いでいるだけばってん言うてたばってんね。そげなこつはどげんでんよかっち。そいでいっちゃん傷付くんな、瑠璃じゃなかかっち。もう怒っちね、そん週刊誌作っちいる会社に抗議ん電話、入れるっちゆうこつ訊かいなかったんちゃ。やけど、躰んこつはそいっちは別問題。重雄しゃん、ずっっち調子悪かったん隠しよったごたあなん。こん不景気で、ちょこっとばってん頑張らんけんっち思っちいたのごたぁで、現場で倒れてちゃ、話にいかんわ。目ば覚たとたいら、お灸据えていげなかっちね」

 

 天璃は何も言えなかった。

 ただ、管に繋がれた重雄をガラス越しに見つめるだけだった。


 三日目の朝に意識を取り戻した重雄の腕の中で、やはり瑠璃は泣いていた。

 容態が安定したのを確認した二人が新幹線に乗り込む際、美璃は天璃を呼び止める。

 皺くちゃの手で天璃の手を握り、そっと撫でる。

 そして、たった一言、頼んやね。と天璃に言う。

 ずっしりとした重さのある言葉に、天璃は戸惑いながら頷く。


 車中、余程疲れていたのだろう。瑠璃は、天璃の肩を借りて眠りの中を漂っていた。

 天璃は、窓に映る景色に目をやりながら、めまぐるしく過ぎて行った数週間のことを思い返していた。

 小さな寝息を立てる瑠璃に目線を映し、天璃は深いため息を吐く。

 比呂美の家から帰って来た瑠璃は、驚くほど平常心を保っていた。

 彼氏と処する人物を家に連れてきたり、以前より外へと目を向けるようになってホッとしていたのに、そう簡単に消せない気持ちを抱えていたことに、まったく気が付いてやれなかった自分が情けなかった。親にだけは心配を掛けたくはないと、只管に隠して来たはずなのに、それも無駄な抵抗に終わり、天璃の眉は一段と垂れ下がる。

 マナーモードにしてあった天璃の携帯が震え、ディスプレイの名前を見てそのままポケットにしまい込む。


病室で重雄と二人きりになった天璃は、重い口を開いていた。

 「いつから気付いていたん?」

 「なんの?」

 ずっと恐れて訊けなかったことだった。

 「瑠璃のこと」

 「いいそいか。にしゃの、初めてかんじょば作った時、瑠璃、熱ば出したばいちゃろう。あん時、ずっっちうなしゃれとったんだ。父しゃんばってん母しゃんばってんなく、りっちゃん、りっちゃんっちな。涙まで流しよったんには参ったな」

 「そんな前から?」

 「遅く出来よる子で、ちょこっと甘やかししゅぎた。しゅまん」

 重雄に頭を下げられ、天璃は言葉なく肩を落とす。

 複雑な思いだった。

 震える指でそっと髪を触れた瞬間、電車が小さく揺れ、瑠璃が目を覚ます。

 目があい、天璃は慌てて目を逸らしてしまう。


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ