クローバー伝説のカラクリ
「じゃあ、飲み直しましょうか。私、まだ飲み足りないもの」
黒羽の質問に答えながら、目の前のテーブルに散らばった資料に目を落とした。
ある有名企業の機密文書や、ある娘の素行調査済み資料が無造作につまれていた。
所々、赤いペンで円を付けたり、アンダーラインが付いている。噂なんて嘘つきな奴ね。
全部自分で調べたんじゃない。
「待たせたねー。お待たせ。君の生まれ年のワインだよ。」
「全然違うじゃない。ボケたつもりなら、そのボケつまんないわよ?」
鼻で笑って黒羽が差し出した赤ワインのグラスを受け取り、一口飲んだ。
「そんな事より、私を探していた理由は?」
「まぁまぁ、そんな焦りなさんなって。俺は逃げたりしないから、、、ガラウちゃん?」
「、、、私の素性も調べたのね?」
「うん、ちょっとだけね。」
「そこまでして私を探して、何をするつもり?貴方はクローバーなんでしょ?どんな奇跡も起こせる男。私なんて必要ないじゃない。」
「俺は奇跡なんて起こせないよ?あれは、全て暗示と、彼等自身の心の力だ。」
「えっ?死にそうな男がクローバーの魔法の水を飲んで、別人みたいに元気になったって話は?」
「暗示をかけたんだ。この魔法の水を飲べば、貴方の病気は治ります。ってな感じで」
「本当にそれだけで?」
「あぁ、お代はいただきません。善意です。って言ったらあっちが完全に信じ込んじゃったのさ」
「で、元気になった男はクローバーの魔法の水を信じた。それでクローバーは奇跡を起こせるって噂が広まったって訳ね。」
「そーゆ事。だから、俺はただの催眠術氏」
「それに尾ひれがついて、クローバーは今やこの世界の神様って訳ね。ずいぶん大きく出たわね。」