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カスミ
「カスミソウから作った娘。それがカスミ。
カスミが完成した時妻はもう虫の息だった。
夫は妻に、やっと出来た娘を抱かせてやった。妻は小さく微笑み、息を引き取った。
夫は娘を大層可愛がった。でも、、、」
「でも?」
「カスミソウから作った娘は、カスミソウの生態を受け継いでしまった。熱帯地方のこの国の日差しはカスミには強すぎた。」
「そんな、、。」
「カスミを守る為に、低温で湿度を一定に保った部屋に閉じ込めた。」
バーボンを一気に飲み干すと、続けて言った。
「カスミの誕生がこの世界の誕生だったんだよ。男は娘に今は亡き妻の姿を重ねていたんだ。次こそは、1人で死なせやしないってな。」
「まさか、、」
「あぁ。人生を無駄にしてる奴へ怒りだよ。素敵な名前を持ちながら、無駄に日々を食い潰してる奴が許せないのさ。だから、そんな奴らの処分を思い付いた。」
酔っ払いはいきなり私の手を握った。
「あんたが来るのを待っていた。ハクチョウソウ。」