4/274
カスミソウ
「この世界を創り出した奴がいる。」
「えっ、それはっ?」
「この世界は、1人の富裕層のお遊びで作られた箱庭だって話を聞いたんだ」
酔っ払いの顔をジッと見た。どうやら酔っている訳ではなさそうだ。
「面白そうな話ね」
「気に入ってくれたかい?」
「えぇ、興味深いわ。是非続きを」
右手を軽くあげて、店員に追加のカクテルとバーボンを注文した。
「山の上に住む夫婦の話だ。病弱な妻と、名の通った大地主の夫。幸い金はあった。有名な医者、不治の病を治す秘薬、効きそうな物は全て試した。だが、全て妻の病気は直せなかった。」
「悲しい話ね、、、」
「あぁ。
妻に残された時間はどんどん減っていく。妻は夫1人を残して旅立つことが心残りだった。だから、最後に、自分が死ぬ前に2人の願いを叶えることにした。」
「2人の願い?」
「2人の子供を作ることだ」
「えっ?作るって?」
「言葉の通りさ。自分の娘を、人工的に創り出したのさ。」
「そんなことって、、、」
「あり得ないって言いたいんだろう?普通はな。でも、金さえあればなんとでもなるんだよ。夫は妻の好きな花から、娘を創り出した。」