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二人の最後の夜
「私は彼の話を聞くのが楽しみだった以上に彼に会える事に喜びを感じていた。彼は私の親の目を盗んで昼間に現れて、太陽が沈む頃に帰って行った。彼が何処に住んでいるのか、何処の誰なのか、彼は全然話してはくれなかった。でも、私は彼に会えるだけで良かった、、、それなのに、、、」
クロッカスは言葉に詰まった。
ガラウはクロッカスに声を掛けた。
「、、大丈夫?」
「ごめんなさいね、、、まだあの時の頃の話を思い出すと悲しくなってしまうの、、」
一呼吸置いて、クロッカスはまた話し出した。
「私のささやかな喜びも長くは続かなかった。私の顔色や行動に、お父様が気付いてしまったの。私の家は名家で、庶民と仲良くする事を嫌っていた。私はすぐに彼と会う事を禁じられた。彼と会える最後の夜、私は彼に別れを告げた、、、」