始まり
私の名前はガウラ。
身体が丈夫で太陽の光さえあれば生きていける。ある程度なら、暑くても寒くても、食うに困らなきゃどこでも生きていける。
誰かの助けなどいらなかった。むしろ、側にいる人を傷つけてしまうから、共存など出来ないのだ。
母さんは私を産んで、命を落とした。
母さんは身体も小さくて病弱だった。
医者に止められても、私を、自分よりも私の命を優先した。
私は母に会った事もなかったが、母が大好きだった。一緒に生きたかった。
だが、父は私を娘だと思わなかった。
いや、思えなかったんだろう。
愛しい女を殺した子供は、自分の娘。
母の時間は止まっているのに、目の前では私が成長していく。
父は母が死んだのは私のせいだと
私に暴力と共に刻み込んだ。
私が母さんを殺したんだと罵った。
痛みに耐えながら何度も何度も
母さんに謝り続けた。
父は10歳になった私を、知らない土地まで連れて行き置き去りにした。
小さくなる父の背中を見ながら、私は母に謝っていた。
「ごめんなさい、母さん、、」
今日初めて出す声はかすれて、夕焼けの空気に呑み込まれた。
捨てられたことの絶望より、日々の暴力に解放された安堵感が身体を満たした。
何もなくていい。この名前にさえあれば生きていける。
母は私に命をくれた。
父は私に呪いをかけた。
皮肉にも、誰とも共存出来ない名前を、、、