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#002 「第8号社員」

「まず、さっき金新宿区××の××××……

 あった、ココだ。

 俺はあの後見事に欲に負けて応募し、面接してくれるらしく、こんなメールが来た。

  「ここに来い。面接する。」

 という淡々としたメールが来た。

 書いてあったのはこの文と住所だけ。俺は、この住所を頼りに、携帯を片手に握りしめ、新宿駅へと向かった。

 やっぱ、あやしいな…

 そう思ったが、新聞社の採用を振ってまでここに来たのだ。もう後戻りできない。

 真っ黒いビルの階段をゆっくり、そして静かに上ると、三階の左にドアがあった。

 すると、黒いカーテンでうち窓を隠された、見るからに分厚い、それも黒くてヤバそうなドアがあった。

 やっぱり、引き返そう。他の仕事、また探そう、そう思った時、中からドアが開き、ごつい人がこっちに向かってやってきた。

 「誰だ、お前。何の様だ?」

 怖い!怖すぎる!

 とてつもないオーラで、俺は腰が引け、逃げようとした。

 「逃げんなてめぇ!!」

 ヤバい!殺される!そう思ったが、殺されはしなかった。だが、あまりにも力が強く、俺は吹き飛んでしまった。

 「いってぇ…」

 強く睨みつけてくる。

 「あんた、用もないならさっさと帰れ!さもないと…」

 そして、ごつい人は、十字架を切る真似をした。

 しかし、俺は逃げずに、そのオーラに負けずにここに来た理由を説明した。すると、ごつい人は、なんだ、そうだったのかという顔をして、

 「そういうことか。なんなら早く言ってくれればよかったのに。さぁ、中に入ってくれ。」

 と、言いながら事務所に入れてくれた。

 ごつい人は、さっきの超怖いオーラもなくなり、やさしい顔になった。さっきの事が嘘みたいだ。

 中に入ると、中は光の入らない殺風景な事務所だった。

 「ボス、玉田が来ました。」

 あっていきなり呼び捨てかよ―。

 そう思ったが、そんなことを言うとこのごつい人にしばかれそうなので、その気持ちを心の中に封じた。

 すると、温厚そうなこの事務所には似合わない小太りの30代くらいの人がこっちに来て、

 「さぁどうぞ。ここに座ってくれ。」

 と言った。

 座ると、女性画を紅茶を持ってきて、早速ボスといかつい人に呼ばれた人は早速話し始めた。

 「俺は、新沼優太郎と言う。ボスと呼んでくれ」

 「は、はぁ…」

 「たしか、玉田君だったな。これから宜しく」

 まだこの会社に入ることを決めていないのに…

 そう思った。

 一応返事は返しておいた。

 「さて、早速本題に入るが、どんな仕事をするか、だ。」

 そう、これが聞きたかったのだ。

 日給500万。これが本当なのかもわからないが、どんな仕事が俺を待ち受けているのか―

 とても、気になった。

 次の言葉をまだかとまった。

 「この仕事の内容を聞いてからでは、もう仕事をやってもらうしかない。もし、聞いてからやめるんだったら、君には死んでもらうしかない。」

 何!?そんなヤバい仕事なのか―

 「どうする?今だったら帰ってもらって構わないよ。」

 新沼はそんなことを簡単に言うのだから腹が立つ。

 だが、どうする?

 やめるか?

 やめないか?

 迷った。迷いまくった。

 どうしよう?

 俺の心の中で欲と現実がぶつかりあった。

 だが、俺は決めた。新聞社の採用を振ってまでここまで来たのだ。断るわけにはいかない。それだと、母親にあわす顔がなくなる。

 そして俺はこう言った。

 「やらして頂きます。」

 と。

 新沼は、こっちをギロっとみて、こう言った。

 「本当にいいんだな。もう、後戻りは出来ないぞ」

 俺はゆっくりうなずいた。

 「じゃあ言うぞ。これは、国家極秘プロジェクトなんだ。」

 何!?

 どんなことだ?

 こいつ、国家極秘プロジェクトを任せられるなんて、何物だ?

 少しの沈黙が続いた。

 そして、今度は俺がその沈黙を破った。

 「そ、それはどんな仕事ですか?」

 と、すごい緊張感の中、聞いてみた。

 「それは、火星開発プロジェクトだ。」

 何?

 なんだ、それは…。

 「我が国日本は、アメリカと中国に今、せめられているんだ。」

 え?アメリカとなんて、中がよかったんじゃないのか?中国は知らんけど。

 「今、アメリカと中国は極秘同盟を結んで、最新兵器「ボロックス」という、大変危険なウイルスを開発しているんだ。そして、そのウイルスをばら巻かれたくなければ、今から20年以内に、もう4年たったから後今に換算するとあと、16年だな。日本人を地球版日本に1万人だけ残してそれ以外の1億1999万人を火星に送れ。と言ってきた。たぶんアメリカと中国は、火星移住プロジェクトをすすめて、この先地球が地球温暖化で住めなくなった時、アメリカと中国の21××年現在の人口、計21億人を火星に送るつもりなんだろうな。その為に、日本人を使ったということだよ」

 ヤバい…ヤバい!

 そして聞いた。

 「それは、どんなウイルスなんですか?

 「最新だからな。ウイルスを爆弾に詰め込んで、それを大地に落とす。すると、ウイルスが地上にばらまかれる。そのウイルスは、感染すると、その人を爆発に追い込んでしまう。」

 マジ、危険だ。どうせそれを日本にばらまくんだろうと、優治は思った。

 「そして、それを日本にばらまこうというんだ…」

 どうせ、そんなのウソだろう。そう思った。が、予想は外れた。

 「本当なんですか?日本をビビらせようとしているだけなんじゃないんですか?」

 「それが、違うんだよ…

 前野125代首相がアメリカにそのウイルスは本当か見に行ったんだ。」

 前野?すると、4年前じゃないか…

 「すると、そのウイルスは本当だったんだ。目の前で、そのウイルスを見た。そして、そのウイルスを1人のアメリカ人がいる部屋に入れた。

 そして…

 その人は1秒で爆発し、死んでしまった。そのウイルスは、本当だったんだ。

 そのウイルスを日本人でただ一人みた前野は、そのウイルスの見た目や感じを絵にかいたり、そのウイルスについて話したものを、などで日本薬学会に持ち込んだ。そして今まで、何人もの日本人がアメリカへわたり、ウイルスを持ちだそうとした。だが、持ち出そうとした人はウイルスで殺された。だが、皆頑張って研究した。このウイルスのワクチンを開発する為に―

 だがしかし、研究を4年しても、ワクチンは見つからなかった。ウイルスは、堅AC0001型コラーゲンという、厚い層に阻まれていた。その為、ワクチンは探すことが出来なかった…

 しかも堅AC0001型コラーゲンは、日本が世界最高の技術力で開発したものだった。だが、何物かがその最新コラーゲンをばらした。」

 「その、何物かは見つかったんですか?」

 「いや、見つかっていない。わからないんだ。」

 「でも、コラーゲンって、体にいいもののはずですけど」

 「それが違うんだ。コラーゲンは、量が多くなると、とても暑い層になってしまうんだよ。だが、厚い層と言っても少しばかりは穴や、欠損がある。それを保護し、無くしたのが日本が開発した、堅AC0001型コラーゲンなんだ。」

 なるほどな、そう思った。

 でも、なぜアメリカと中国がこんなことをするのか疑問に思った。

 なぜ?なぜだ?アメリカとは友好関係が続いているし、中国とも最近目立ったトラブルはない。

 しかも、なんで日本を狙う?言っちゃ悪いが、それ以外の国もあるじゃないか!

なぜ・・・・・

 「なぜ、アメリカと中国は、それほど目立ったトラブルも日本とないのに、そんなことをしてくるんですか?最低ですよ、アメリカと中国。」

 「うむ。それは、分からんのだ。なぜ、そんなことをしてくるかが。」

 わからない。わからない!

 「そう、そして君には、日本人を火星に送る仕事を手伝ってもらいたいんだ。いいね?だがもう、後戻りはできないがな」

 ふっ、と微笑して新沼が言った。

 嫌だ!日本人を裏切る仕事なんか、したくない!

 「そんなの嫌です!なんで新沼さんは、日本を裏切る様な事をするんですか?おかしいじゃないんですか!?」

 おれは叫んだ。机をバン!と叩いた。

 「むしろ、仕事をやらない方が日本を裏切っている、そう私は思うよ。しかも、もう32人の日本人が火星に強制送還されてしまったよ」

 俺は、とても腹がたった。

 「おかしい!おかしい!あんたがやってることは、本当に、おかしい!」

 「だってそうじゃないか。火星に送れば、日本人は助かる事が出来るんだよ。火星は何も手がつけられていない。揮発すればいいだけだ。だったら、火星の開発と死、どっちを選ぶかね、日本人は。どうせ、死にたいと思ってる人以外は、火星に行ってでも行きたいと思うだろう。火星の住むところは、この4年間で、僕たち日本が開発した。そして、食べ物や娯楽施設も開発した。重力も日本の技術で地球と同レベルにした。そして気温も変温システムを使って、地球と同レベルにしたんだ。

 君も、この話を聞いてどうする?そりゃあもちろん、地球版日本のほうが開発もとてつもなく進んでいるし、そっちの方がよいかもしれない。けれど、地球に残れば、日本人は死しか待っていないんだ。

 「生きる」というのは、地球人だれしもが思い、「命」というものを大切に、希望や夢を持ちながら、生きて行く奴が多い。

 普通、どうする?

 命を選ぶか、死を選ぶか。

 よほど死にたい奴か、よほど地球が好きだというやつしか残らないだろう。あ。あと地球に残れることになった1万人もね。だけど、政治関係者1000人は残れるとアメリカに言われた。だから、君はこのプロジェクトにかかわったということで地球版日本に残れるんだよ。もう、だから君は地球版日本に残ることは決定した。もう、君はこの仕事をやるか死しかないのだからな。君は、まだ行きたいという目をしている。君だって、生きたいだろう。」

 地球版日本と言う言い方はすきじゃなかった。

 けど、ほかの日本人には悪いが、生きたいという気持ちが先に立った。

 けど…やっぱり、奇跡を信じて日本人1億2000万人で立ち向かうべきではないか?

 やっぱり、許せない!

 「やっぱり、おかしいでしょ!奇跡を信じて、日本人全員で戦おうよ!逃げたら、後悔するだけでしょう!こんな日本人を裏切る様な最低な仕事、僕はしたくない!」

 こう今の自分の気持ちを吐き出すと、新沼の目は急に冷たくなった。

 「じゃあ、死ぬか?」

 俺は言葉に詰まった。

 やっぱり、死にたくない!神様から与えられた大切な命を、精一杯生きたい!

 けど、裏切りたくない!日本人を、そして兄ちゃんを…

 兄ちゃんは、生きれるのだろうか?生きられる確率…

 それは、

 イチオクニセンマンブンノイチマン

 だ。

 「じゃあ仕事をやります!けど、条件があります。兄を地球に残してくれますか?兄と一緒に地球に居たいんです!お願いです!本当に!」

 だが、帰ってきたのは、とてつもなく冷たい言葉だった。

 「それは、無理だよ。命は、平等だからね。そんなに現実は、甘くないんだよ。」

 そ、そんな…

 じゃあ、兄を裏切るかもしれない、そういう事か?

 いやだ…

 嫌だ!

 兄と自分、どっちを選ぶか…

 もし、両方生き残れる可能性がないんだったら、もちろん兄を選んでいた。

 だが、

 イチオクニセンマンブンノイチマン

 に、ひっかかれば、兄は生きれるんだ…

 奇跡を信じたい…

 だけど、新沼の言う通り、「現実はそう甘くないんだ。」どうしよう?どうしたらいい?けど、兄と一緒に地球にいれる、その可能性を信じたい。

 「法に触れる様な度とはしないんですよね?」

 「そんなことはせん。唯一法に触れるのは強制送還だが、国家プロジェクトだから、そこは警察に目をつむってもらっている。」

 「でも、マスコミとかが………」

 「マスコミには全部口封じをした。もちろん、国がネットを監視している。唯一ばれてしまう可能性があるのは、口コミや、人々の噂だがな………」

 俺は、こう言った。とてつもない罪悪感に見舞われたが…

「わかりました。この仕事、精一杯やらして頂きます。」

 すると、新沼はまたやさしい顔になって、こう言った。

 「そう言ってくれると思ったよ。玉田君。君は生きたいという目をしていたからね。だからこそ、この面接によんだんだよ。」

 一呼吸おいて、新沼は言った。

 「この国家極秘プロジェクト、「イチオクニセンマンブンノイチマン」の第8号正社員として、玉田優治君だったっけ、やはりそうだな、玉田優治君を任命する!」

 すると、新沼を含めて「イチオクニセンマンブンノイチマン」正社員6人が拍手をしてきた。

任命された―

 いままでピン!と張っていた緊張の糸がほどけ、とてつもない脱力感に見舞われた。

 俺は、その場にどっと倒れ込んだ。

 任命された―

 うれしいのか、うれしくない様なものが胸に込み上げてきた。

 あ。肝心なことを聞くのを忘れた。給料だ。

 俺は立ち上がり、新沼に向かってこう言った。

 「給料は、本当に日給500万、払ってくれるんですね?本当ですね?」

 「ああ、本当だ。疑うのならば、証拠を見せてやろうか?」

 俺はすぐうなずいた。日給500万じゃないとか言われたら、話にならない。

 新沼は、さっきのごつい人に「金、持ってこい!!!」とすごい大きな声で、しかもとてつもない命令口調で、なんとしかもさっき怖いオーラを出していたごつい人に言った。

 ごつい人は、奥の方へ走って行った。

 「武藤が持ってくる間に、国家極秘プロジェクト、「イチオクニセンマンブンノイチマン」正社員の紹介でもしておこうかな。」 

 俺はうなずいた。

を取りに行ったのが武藤字路丸じろまるという。身長201cm、体重105㌔のいかつい奴だ。あいつ、体は筋肉でしか出来てねぇからな。30歳で、俺のいとこに当たる。だから、イチオクニセンマンブンノイチマンプロジェクト、正社員第2号なんだ。昔からの友だからな。

 そして、さっき紅茶を持ってきたのはイチオクニセンマンブンノイチマンプロジェクト、第3号正社員、上本優子だ。30歳。4この子は、今の日本国第126代首相上本天豊の娘だ。この3人で、このプロジェクトはスタートしたんだ。」

 首相の娘!?このプロジェクト、半端じゃねぇぞ!

だからか。首相の娘だからね、どうりできれいだと思ったよ。

 「そして、イチオクニセンマンブンノイチマンプロジェクト、第4号正社員が、西前田竜児という。21歳。今の西前田官房長官の孫だ。」

 西前田官房長官の孫!?

 何だこいつら!!!

 神ってる!

 このプロジェクト、生半可じゃねぇな………。

 「次に、今は火星送還船のチェックに向かっていていないのだが、前野剣神という、イチオクニセンマンブンノイチマンプロジェクト、第5号正社員もいる。前野は、125代首相の息子だよ。42歳。ここでは最年長だ。」

 凄い!凄すぎる!エリートじゃねぇか!

 「その次に来るのが、パソコンでの広告で集まった、イチオクニセンマンブンノイチマンプロジェクト、第6号正社員、岡沢拓真。22歳。君と同い年だよ。仲良くできるんじゃないのか?なぁ、岡沢!」

 岡沢と言う人らしき、髭を生やした俺と似たチャらい人が、

 「そうっすね。」

 とあっけなくいった。

 「金を持ってくるのが遅いな………すまんな、待たせてしまって。」

 「いえいえ」

 と、首を振りながら俺は言った。

 「まぁいい。その間に、最期まで紹介してしまおう。次に、イチオクニセンマンブンノイチマンプロジェクト、第7号正社員、上野綾だ。21歳。こいつが入ってから、個々の事務所は明るくなったんだ。本当に明るいぞ。

な、上野!」

 呼ばれた背が小さい人は、元気よく、

 「はい!」

 と言った。

 「後は、俺だな。俺は、イチオクニセンマンブンノイチマンプロジェクト、第1号正社員の新沼だ。経歴はふせておく。なぜこの仕事をしたのかも黙っておこう。36歳だ。これで皆の紹介はおしまいだ。」

 すると、上野とかいう人が、

 「この人、本当に謎多き人なんですよ。」

 と言った。すると新沼が、

 「うるさい!」

 と笑いながら言った。

 「それにしても、武藤は遅いな。何をやってるんだ?」

 すると、蕎麦らしきものを頭にかぶった妖怪らしき武藤がこっちに向かってやってきたところだった。

 それを見て、みんなは大爆笑。笑いの渦が起こった。しまいには、新入りの俺まで笑ってしまった。

 岡沢がきいた。

 「どうしたんすか、武藤先輩!」

 そんなことを聞いている岡沢までもが笑っている。

 「いや、奥に行く時キッチンを通ったんだ。その時に間違えて滑ってしまって、キッチンに足をぶつけて置いてあった蕎麦が俺に落下したんだよ!あ~最悪!誰だよいったいこんなところに蕎麦置いたのは!」

 すると西前田が申し訳なさそうに小さな声で(いかにも西前田官房長官に似て、気の弱そうな奴だったからな)、僕です………。

 と言った。

 すると武藤は西前田を捕まえて、しまいにはしばいた。

 よく官房長官の息子でしかも年上なのにしばけるな………と思ったが、武藤さんだからしょうがないかと思いなおした。

 すると新沼が(なぜかボスなのにボスって感じがしないから心の中で呼び捨てしてしまう)こう言った。

 「馬鹿野郎!そんな幼稚なケンカしてどうする!しかも、これは武藤が悪いだろ!!お前がキッチンにぶつかって蕎麦が落ちて妖怪になったんだからしょうがないだろう!」

 と言い、2人を引き離した。そして上本が、

 「新沼さんの言う通りですわ。武藤さんがキッチンにぶつかって蕎麦が落ちたのですからしょうがないですわ。」

 と、さすが首相の娘だ、とてもお上品な言い方で言った。

 すると、上野までも、

 「ほんとだよ!武藤っちが悪いんじゃん!日ごろの行いが悪いからでしょ、武藤っちのばぁーか!」

 すごい!あんなにいかつい武藤さんに対して武藤っちってあだ名をつけて、しまいには馬鹿といい、すごいな、ある意味。

 すると武藤は俺が予想していた通りに、やはり上野にかんかんに怒って、顔を真っ赤にして、

 「何だとぉぉぉぉ!!」

 と言い、上野の事を追いかけ始めた。

 すると、上本が、

 「うるさいですわ。少し黙っててもらえません?」

 といい、しばかれた西前田はいまだに放心状態、上野と武藤は追いかけっこ、俺は、他人事の様に見届け、岡沢はキッチンでクールにそばの片づけを始め、新沼は大声で叱り飛ばし、もうなんだか幼稚園の様な、こんな殺風景な事務所にはまったくと言って似合わない、底抜けの明るさだった。

 ここが本当に国家極秘プロジェクトの事務所なのか?と疑った位だ。

 このうるささに喝を入れたのはやはりボスの新沼だった。

 「うっせぇぇぇぇ!!!!!少しはだまれぇぇぇぇ!!」

 おれは心の中で、新沼だってうるさいがな、そう思った。

 「少しは黙れ!ここは一応(一応ってなんだよ)、国家極秘プロジェクト、「イチオクニセンマンブンノイチマン」の本部なんだぞ!!!こんなのでどうする!?今日はしかも新入社員の玉田君が来たんだぞ!毎日のように大騒ぎして、本当に、ダメなやつだな、お前ら二人、武藤と上野!!わかっているのか本当に……………」

 新沼はぶつぶつと説教をし始めた。こんなのが毎日!?うんざりしてくる。新沼の言う事もわかる。国家極秘プロジェクトなのに、こんなうるささだ。極秘と言う感じがこっぱ微塵も感じない。

 5分ほど説教をし終わると、キッチンに置いてあったバックを持ってきて新沼はこう言った。

 「これが金だ。奥に5兆ある。そのうちの1億だ。これで何か文句あるか?手にとって本当か確かめるといいぞ。このプロジェクトにかけられた予算は50兆円だからな。」

 50兆?

 想像できない。

 50000000000000円だ?

 うひゃー!!なんだこりゃ!0が何個ある?訳わからん!

 とりあえず、この国家極秘プロジェクトにかけられた予算は、はんぱじゃないと理解した。

 「本当なんですね。」

 「あぁ。そういえば、個々に口座番号を書いてくれ。今日から振り込みをする。」

 やばいやばいやばい!!!

 最高だ!!

 本当だった!!日給500万は本当だったんだ!!

 何に使おう!?もう、500万と聞いただけで胸がわくわくしてきた。今まで、預金が50万も超えた事がなかったのに、500万も1日だけで振り込まれるなんて!こんなことを聞くのは嫌だったが、なぜ日給500万も出せるのか新沼に聞いてみた。

 「うむ。そう来たか。この仕事は、まだたったの32人しか火星に送っていない(しかという言い方が気に食わなかったが、心の中に留めておいた)。火星送還船第1号が行っただけだ。だが、同じ日本人という人たちを、これから何人も送りだしていくことになる。そうなると、泣きつかれたり、人々の非難の目にさらされたりするかもしれない。それをまとめて簡潔に言うと、「精神的負担」が大きいという事なんだ。このプロジェクトをこれから本格的に進めていくなかでのやる上での負担が、お金に換算すれば日給500万にイコールで結ばれると、上本首相が判断したんだよ。」

 なるほどな、納得できた。これから、僕たち正社員8人は、人々の絆を切ったり、人々の期待を裏切ったりすることになる。だから、精神的負担がどんどん肥大していくことを考えると、首相や新沼にとっては日給500万が妥当なのかな、そう思った。だが、さすがに、日給500万、月に換算すれば月給3億というのは出し過ぎだと思うけど。

 「大体の説明は終わったかな!」

 といい、新沼はさらに続けた。

 「他に質問はあるかい?」

 特になかったので、

 「いいえ、ありません。」

 と言った。

 すると社長が、

 「よし!みんな!玉田君の事を深く知ったり、仲良くする為に、火星送還船のチェックに向かっていていない前野が帰ってきてから、皆でレクをしようじゃないか!今日の仕事は前野の火星送還船のチェックしかないからな!」

 と言い、早速レクの準備を始めた。

 これが国家極秘プロジェクトのメンバーが本当にやる事なのか?と思って、岡沢に聞くと、

 「こんなの毎日だよ。仕事って感じだったのは2週間前に第1号火星送還船に日本人を強制送還する時ぐらいだったよ。ほんとみんな、幼稚だよな。けど、これもこれで楽しいぜ。」

 と言った。

 ま、これはこれでいいかと思い、俺はれ区の準備の手伝いをし始めた。

 こんな感じで、俺、玉田優治22歳、身長185センチ、体重75㌔という恵まれた体で、俺の国家極秘プロジェクト、「イチオクニセンマンブンノイチマン」の第8号正社員としての務めをスタートさせた。

 だがこの先に待っている現実が、そう甘いものではないという事をまだ優治は全く気付かなかった。





 ただ今の日本の人口

 1億1999万9964人


 火星KKS数

 32人


 ウイルス死者

 0人


残り年月日

後16年と0カ月と0日















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