#001 「月給500万」
21××年、7月1日。
強い日差しが照りつける中、××商事に面接に行っていた22歳の高卒、玉田優治がいた。
この時代、優治という古臭い名前はめったに無く、よく珍しがられたりもする。
そして、今日の面接はどうだったかと言うと、失敗。
高校時代の友達に言わせれば、目が細く、馬鹿っぽくて、やる気のなさそうな顔、という全くよろしくない第一印象を初めて見た人には、抱かれるらしい。
そう、今日も言われた。第一印象がよくない、さえてない顔をしているとまで言われてしまった。だが、こういうことは今までの面接で何回も言われ、もう慣れてきてしまった・
たぶんダメだ、そう思った。
兄は、25歳。玉田圭と言う。
アパレルメーカーの正社員として働き、十分に稼ぎ、彼女もいる。むっちゃくちゃうらやましい。仕事もなくて彼女もいない俺とは、天と地の差だ。
父親は、玉田英斗という。かっこいい名前だ。21××年では、当たり前なのだが。
母親は、玉田夢能という。むのう、と読む。すっごい名前だ。
だがこの二人、俺が、6歳というまだ物心がついていないころに離婚してしまった。俺と兄ちゃんは母さんに引き取られた。だから、父親の事はあまり覚えていない
母親は18歳の時に病で死んだ。父親は、何か離婚した後、何か正体不明のあやしいことをやった様で、何物かに殺されたと耳にはさんだ。
そんな人生を歩んだ優治と圭は、兄弟間のきずなが強かった。
この21××年も、就職難が続いている。2043年に、景気は一気に回復したのだが、世界的地位の低下、経済規模の縮小というダブルパンチを受け、2050年過ぎには景気が悪くなり、その後は政府がこれといった対策を打ち出せずにいた。
その不景気という時代に生まれ、就職難にあった優治は、家に帰り、これまで50通もきた不採用メールを見ていた。
こういうメールを見ていると、ストレスが溜まってきたため(見ようとしたのは自分だが。)最近全国ランキング4位という輝かしい成績をとった格闘系のオンラインゲームでストレスを発散することにした。
オンラインゲームを小1時間した後、そのオンラインゲームのプレイヤー交流掲示板に入った。
そして、1件の書き込みをした後、少しばかり書き込みを閲覧していると、ある広告が目に入った。
「あなたも億万長者!?日給5
00万!!!経験不問!!!男
女問いません!!!あなたもこ
の仕事を、やってみませんか?
」
という馬鹿らしい広告が目に入った。
どうせこういうのは嘘で、入ったところでろくな事が起きたためしがない為、目障りだ、そう思いながら航行を無視した。
そして数件書き込みをして、その日はパソコンを閉じた。
翌日、目を覚ますと7時半だった。やばい!その今日、面接をしに行く会社までは45分かかる為、面接なのに遅刻と言う、一発不合格も決まった様な事をしてしまう。今日は△△社という、新聞社の面接が9時から入っている。
パンを焼き、牛乳をコップに注ぎ、三分で飯を済ませた。そして歯を磨き、顔を洗い、身だしなみを整えて、服を着替えて、最終持ち物チェックという、いつもの朝の仕事を済ませて家を出た。
面接は上手くいった、と思う(思うだからまだ分からないが。)。きちんとこの会社に入社したい動機もきちんとかまずに言えたし、なにより22歳というのが効いたようだ。
新聞社には、タフな気持ちやスタミナが必要である。△△社もそういう人材を求めていた様で、俺がピッタリはまったのだ。
これは、3日後の面接の結果が楽しみだ、そう思った。
家に帰り、オンラインゲームをした。そして、ゲームを二時間ほどした後、掲示板に入ると、例の広告があった。
またそこに目を奪われたが、ろくな事が起きない、ろくな事が起きない、そう何回も心の中で繰り返して、クリックしたい気持ちを抑えた。
しかし、日に日にクリックしたい気持ちは大きくなって行った。
3日後の運命の7月5日、ついに採用・不採用メールが来る日が来た。とても緊張した。メールの受信音が鳴り響くたびに、ドキドキしてしまうのだが、メールの送り主は友達というパターンである。
この年で就職できない俺の様な友達も何人か居る。高校時代の同級生では、8割は就職できたが、残りの二割はまだ就職できずにいた。
そういう就職できない友達とのメールは、日増しに暗くなって行く。「面接どうだった?」「ダメ。」「そっか…おれもダメだと思う。」そして数日たって、「どうだった?」「不採用。」そんなメールのやり取りが続く。
はぁ、ダメかな…あの日給500万の仕事でもやろうかな、と本気で考え始めた頃、一通のメールが来た。
「玉田優治様。
あなたは、見事に面接に合格いたしま
した………………」
や、やった!!!合格だ!うっっしゃぁぁぁぁ!!!と思い、10分ほどこのメールは本当か確かめ、そして本当だ、夢でもない、嘘でもないとわかった時、とてつもない喜びが優治を包み込んだ。
あまりにもうれしくて、1時間ほど受かったということを母親や友達にも伝える事が出来なかった。だが、それに気づいて煤メールを送ろうとした時、俺の心の奥で、欲が出てしまった。
もちろん、新聞社の仕事は毎月二五万くらい稼げるし、安定している。が、しかし、あの広告が頭から離れないのだ。
日給500万―。
裏には絶対あやしい理由があると思うが、月にすると毎月3億稼げるのだ―。この広告を見た人は、誰しもやってみたい、そう思うのだろうがあと一歩が踏み出せないのだろうと、そう思った。
何日も悩んだ。△△社は、正社員として働くのか、どうするのか早く決めて下さい!今のご時世、普通断る人はいませんけど。というメールを何通も送りつけてきた。
苦渋の選択だった。
もちろん、新聞社もいいと思う。安定した金をもらえるし、このなんだか分からない仕事をやるよりは絶対に、いい。しこも、この△△社だと、世間に顔向けが出きるのだ母親や友達にこのことを話したら、絶対に行けよ、創言うだろう。だが―。日給500万が本当なら―。
悩んだ。悩みまくった。
だが、俺が出した結論は、欲に負けてしまった結果となってしまった。
ただ今の日本の人口
1億2000万人
火星KKS数
0人
ウイルス死者
0人
残り年月日
後16年と0カ月と0日




