1-4 僕の自由時間
なんで今日はこんなに疲れるのかなぁ。この服装のせいだ、うん。身体の方はまだ大丈夫だけど、なんだか、こう疲れるときって精神的なことが多いんだよね。しばらくすると楽になるけど。
そういえばお姉ちゃん、なんであの場所に居たんだろう。あの時間ならまだ学校で部活をやっているはずのお姉ちゃんなのに、なんで……?
そんなことを考えていたら、お姉ちゃんが教えてくれた。
「まったく祈梨のやつ、『僕が家に帰り着くころには家には誰も居ないだろうから安心して着替えられるよ』とか絶対思ってそうだから、たまには脅かしてやらないとね。しかも理由はどうであれ、お姉ちゃんの服を勝手に着てるんだから、お灸を吸えてやらないとね!」とのこと。うっ、僕ってどういう存在なんだろう。ちょっと傷付いたかも……。
でもその後、「祈梨のその姿を見て似合っててかわいいから許す!」って付け加えてた。やっぱりよくわかんない。
結局お姉ちゃんに怒られた後、僕は思った。
『いくら時間がなくても服はちゃんと選ぼう』って。そうした方がいい。そうしよう。でも遅刻しないようにしないといけないから、もっと早く寝て早く起きないと……。
この服装のままだとやっぱり恥ずかしいので、自分の部屋に戻って水色と白色の水玉模様のTシャツ、膝の上くらいまでしかない水色の短パン、水色と白色のストライプ模様の靴下に着替えてゆっくりしよう。部屋の中で靴下を履く人は居るのかなぁ? 寝るときには靴下は脱ぐけど。なんかこう、僕の服装を見たら『ボーイッシュな女の子』って思われるんだろうなぁ。僕って小さい方だし、髪の毛は瀬里奈ちゃんくらいあるし。って僕は男の子だけどね。
そういえばこの辺に読みたかった本があったはず……。えーっと、どこだっけ。
あ、あったあった。この本は、確か最近アニメ化したとかいう小説。俗に言うライトノベルに分類されるもので、アニメの放送もされてるらしい。よく行く本屋さんで偶然見かけたもので、表紙と世界観に惹かれて買ったものなんだよね。ちょっと高かったけどね。もしかしたら僕の小学校の図書室に置いてあるかもしれない。置いてたらうれしいけど、ないんだろうなぁ……。明日暇なときにでも図書室に寄ってあるかどうか見てみよう。
ついつい第1巻から第4巻まで衝動買いしちゃったからおこづかいがさみしいことになったけど。ライトノベルのタイトルは、なんとかオンライン。なんでこうライトノベルってちょっと高いんだろうね?
本を読むことは嫌いじゃないからいいんだけどね。さすがに分厚い本は読みたくないけど、それなりの厚さのものは読む気になれる。ちょうど手の中で収まるから読みやすいというのもあるし。大きくて分厚い本って、なかなか読みづらいもの。例えば、図鑑サイズの大きさの本。あれって大きいよね。しかも1ページ1ページが硬い。なんであんなに硬いんだろう?
「…………」
すごい! これカバーの表と裏と両方にイラストが描かれてある! リバーシブルってやつ?
なんでこれに気付いたのかと言うと、僕本を読むときは、カバーと、オビと1回全部取って、カバーの中に入れ込んで、整えて……。それでその上に本屋さんで貰ったカバーを上に被せる、と。そうでもしないと本をていねいに扱えないというのが難点なんだよね。僕って何かと手汗がよく出る方だし。それで困ることが多いから、ね……。
VRMMOってなんだろう? そもそもMMOって何だろう? 僕の知らない世界があるってこと? そんなこと気になっていたら読み進められない! まぁ、いっか!
それからしばらくして……。
「祈梨ー、祈梨ー。降りてきなさーい」
と
下の階からお母さんの声が聞こえる。読みふけていたせいか、ビクッと震えてしまった。
今のページは第2巻の174ページ目。読み進めていくときにもともと挿んであったしおりをそのページに挿む。これで次読むときどこから読み始めればいいかすぐにわかる。
「は、はーい」
今何時だろう? ふと気になったので時計を見ると夜7時(19:00)でした。ということは夜ご飯の時間……。
いつの間にこんな時間に!? 本を読んでいると時間が経つのって早いなぁ。
机の上に本を置いて、部屋から出る。今日はどんご飯なんだろう。楽しみ~。
☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
(今日の晚ご飯はなんだろうなぁ)
僕はそう思いながら自分の部屋から出て階段を下りていく。2階建ての僕の家は、1階がお母さんとお父さんの部屋、台所、リビング、トイレ、お風呂で、2階が僕の部屋とお姉ちゃんの部屋。結構広い。
「ガチャ」
リビングの扉を開けて、テーブルの上に並べられていた茶碗とお皿、つまるところの今日の晚ご飯。ご飯物? 食べられるかなぁ……。
今日の晚ご飯は、親子丼とお漬物。そしてお茶が1杯。どこかの老舗旅館に出ていそうな晚ご飯だった。
あっ、お母さん、ちゃんと僕が食べきれる量が置いてある。僕ってそんなに食べられないんだよね……。
でもすでにテーブルの椅子には、僕の方から見て奥にお母さんとお父さん、そしてお姉ちゃんが椅子に座っていて、どうやら僕を待っていたみたいだ。僕ってひとつのことに集中しちゃうと他のことに気が回らなくてときどき気付かずそのままで居ることがあるんだよね……。そんな僕の直さないといけないことを考えていると、お姉ちゃんがこう言った。
「えっへん! 今日は私もお母さんの料理手伝ったんだ! 多分おいしく出来てると思うから、召し上がれ!」
そうお姉ちゃんが言う。お姉ちゃんは今料理のお勉強中。ときどきお姉ちゃんがお母さんが料理を手伝ってる。なんでも『料理作るの楽しそうじゃん!』だって。まぁ僕も料理作ってみたいけど……。僕なんかが出来るのかなぁ。
「そうねぇ……、見てられなかったけど、なんとか完成したわ」
「むー、お母さん、それは言わないって約束でしょ?」
「あら、ごめんなさいね」
「もー!」
お母さんとお姉ちゃんは仲がいい。僕の家族は「みんな仲がいい」って言われる。瀬里菜ちゃんと真央ちゃんのところはどうなんだろう? また今度お邪魔してみようかな?
『あっ、おいしい』
僕とお父さんが味見をするために何も言わずおそるおそる親子丼の具を口に運ぶ。そして僕とお父さんは同じことを同じタイミングで言う。
「何よー! お父さんも、祈梨も」
お姉ちゃんがプンスカしてる。あ、お姉ちゃんかわいい。
『いただきまーす!』
みんなで手を合わせて、今日の晩ご飯を作ってくれたお姉ちゃんとお母さんに向かってそういう。お姉ちゃんは照れくさそうにしてたけどね。
「そういえば祈梨ちゃん、今日はスカートで学校に行ったんだって?」
「ん~~~!? ゲッホゴッホ…… ゴクゴクゴク……」
食べてる最中に突然何を言い出すかなぁお姉ちゃんは! びっくりしてのどつまりかけたじゃないの! 慌てて水を飲む。あー、危なかったぁ……。
「そうなの祈梨ちゃん?」
「え、あ、まぁ、うん……」
今朝のこと、お母さんは気付いているのかな? お母さんのことだから、多分気付いていると思うけど。
「あ、もしかして今朝のあれのせいで時間なくなったとか?」
「お母さん、そうなの?」
お母さんがそう言うと、お姉ちゃんがそれに乗っかってきた。今はそれに答えられないので頷く。
「あー、やっぱりねー。なりふり構ってられないくらい時間なかったものねー。ねぇ祈梨ちゃん?」
「お母さん、お姉ちゃん、ごめんなさい。……ってだから僕は男の子!!」
お母さんに言われた通りなのでそうとしか返せないです。本当にごめんなさい。
「ふーん、そうだったんだ。だから祈梨はあの服装だったのねぇー。」
「あっ、もしかしてお姉ちゃん僕のこと信用してない?」
「だってー、嘘だと思ったもん」
うっ。そんなこと言われたら……。いくらお姉ちゃんでも傷つくなぁ……。
「ねーねー、祈梨ちゃんに女の子の服を着せたら、どうなると思う?」
「んん!? けほっ、ごほっ! お姉ちゃんいきなりなんてこと――」
「あっ、それいいかもね!」
そんなことを思っているときに、さっきのお返しと言わんばかりにお姉ちゃんがとんでもないことを言い出した。それでこの提案にお母さんが乗っかる。
「お母さんまで!? なんで!?」
『だって祈梨ちゃん女の子の服似合いそうだもん』
あれ、なんで僕は期待の眼差しで見つめられてるんだろう。しかもお姉ちゃんとお母さん同じことを同じタイミングでハーモニーを奏でたし……。
「この状況、助けてー!!」っていう目線をお父さんに向ける。でも……。
「祈梨、ごめんな。実はお父さんもその姿見てみたいんだ」
「えぇ……」
「じゃあ決まりだね! 今週の日曜日、みんなで祈梨ちゃんの服を買いに行こう!!」
『おー!!』
どうして、こうなったんだろう……。
さーて、どうなるかな。祈梨に自分の自由時間を与えてみました。
と言っても、私自身の自由時間だったりするのですけどね。
お察しのいい人は、すぐに何の作品かわかるはずです。
【2014/08/16 01:30 追記】 旧4話は旧3話と統合しました。現3話の☆マークより下が旧4話『1-4 奇妙な家』の内容です。この話もいずれは改稿します。
【2014/08/16 21:00 追記】 改稿作業途中ですが、一時保存のため一時的にはありますが作業途中のまま保存します。データが飛ぶのは嫌ですからね。ご了承をば。つまりは、いつものことです。
【2014/10/15 14:30 追記】 仕事の休憩中にちょっとだけ編集
【2014/10/15 18:30 追記】 仕事明けの電車の中で改稿作業終了しました (仮)
【2014/10/18 04:00 追記】 これで大丈夫な、はず……。