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疾風!プレステイル  作者: やくも
第五話 素顔の仮面
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5-3 反省会、そして

 自然公園奥の草むらの中で変身を解いたセツナは一人悶絶していた。

せっかく隠していた正体をアッサリとバラしてしまうとは。

しかも、最も知られたくなかった人に見られたのだ。


「あぁ! もう自分が嫌になる!」

『いやー、でも素晴らしいと思うよ、私は、うん』


 頭の中の彼が言葉を選びつつセツナを慰める。

かれこれ彼は2時間はあーでもないこーでもないと唸っていた。


「ーーせめてナユタ以外に見られていたら暗殺も視野に入れるんだが……」

『セツナ……それはどうかと思うぞ?」

「流石に冗談だ、せめて精神崩壊を起こすほどの恐怖を植え付けるだけにしておく」

『キミはどこの悪役だ』

「冗談だ」


 冗談とは言うもののたまにセツナが本当に実行しそうで怖い時がある。

そんな時に限って黒く笑うのだ。

タチが悪い。


 彼は笑うことに疲れたようにフゥとため息をつき、頭をかく。


「まぁ、悔しいがあれは生身じゃ無理だった」


 思い返される先程の出来事。

あれは変身したからこそ間に合ったケースだ。

変身することに刹那でも躊躇いがあったならば、あの少年を助ける事は叶わない。

それどころか、自分諸共巻き込まれ大惨事になっていただろう。


 前回バスを止めた時のようにトラックに逆向きのベクトルを与えれば……いや、変身しなければその能力は使えない。

それに距離が足りず止まる前に少年を轢いてしまう。

なんの解決にはならない。


 彼はクシャリと髪をかき上げた。

もう起こったことだ。

こうすれば良かったで、解決できる問題ではない。


「あぁもう、とりあえず戻るぞ……!」

『そうだな、このままでは何も進展しないからなぁ』


 セツナが顔を上げて並木通りを進むと、一人の男が前から歩いてきていることに気が付いた。

それだけでは何の変哲もない、興味無い出来事だ。

違和感があるとすればその男は殺気を放っていたと言うこと。


 セツナは眉をひそめ、その男に思い当たる節を探した。

殺気を向けられる謂れは無い。

それどころか男に見憶えが無い、だが、殺気には覚えがある。


 いつの間にか、相手の間合いに入る。

男の顔は強い殺気を帯びながらも見下すように笑っていた。

セツナは蹴落とされぬように睨み返しつつ、間合いを測っていた。


 永遠とも思える一瞬。

互いに隙を見せぬように睨み合いすれ違う。

男が口を開く。

セツナが密かに身構える。


「ーー久々に鳥を喰いたいんだが、何処かいい所は無いもんかね?」

「……マーケットならあっちだ。 新鮮で、何より今の時間ならタイムサービス中でお買い得だ」

「そりゃ丁寧にどうも」


 男はニヤリと不敵に一瞥し、セツナに背を向け歩き出した。

セツナは男が立ち去り見えなくなるまで彼の背中を睨み警戒していた。

やがて見えなくなり完全に殺気が遠くに行った確認してから思い出したように息をつく。


『セツナ、気が付いてるな?』

「当たり前だ。 ーーベネノパイダス……また来やがったのか……!」


 思い起こされる前回の戦い。

セツナはまだくすぶっていた怒りが燃え盛ろうとしていくのを感じた。

あの男の様子を見る限りダメージは残ってはいなさそうだ。


『……様子を見に来た? いや、違うなーー』


 前回の戦いから察するにベネノパイダスは強者と戦って愉しむタイプではない。

むしろ、罠を張り巡らせその上で弱者をいたぶり愉悦に浸るタイプ。

目の前に現れたのは何らかの罠であると疑うのが自然であろう。


「ーーナユタが危ない」


 セツナは弾け飛ぶように駆け出した。

おそらくベネノパイダスはフェニーチェの入れ知恵を受けていると思われる。

彼女はプレステイルのーーいや、セツナの弱点となり得るものを勘付いている。

ベネノパイダスがそれを利用しない手はないだろう。


 蜘蛛の糸がジワリと首元に絡み付いた。

セツナは流れる汗を拭い去るように蜘蛛の糸を払う。

しかし、どんなに拭っても振り払えたような気がしなかった。

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