3-3 ベルセルク・ソウル
「フェニーチェ、今戻ったぞ」
暗闇の中にポツンといたフェニーチェは突然の声に驚いた風でもなく、ゆっくりと目を開けた。
目の前には銀髪の物乞いの様な風貌の男が立っていた。
「……ラウ様、今までどちらに?」
「地球観光だ」
赤い返り血を浴びているところを見るに、また、現地人を相手に戦いを楽しんでいたのだろう。
ただ、一人の格闘家として。
武人としては優秀な人物であろうが、しかし船長としてどうだろうか?
あっけらかんと言い放つ彼、ラウに厳しく問い詰める。
「ラウ様、貴方は太陽系方面部隊の船長である、と言う誇りを持って行動してください」
ラウは面白くなさそうに鼻を鳴らすと玉座にどっかりと座り込んだ。
彼の目が一瞬憐れみに帯びたのは気のせいか?
彼が静かに、しかし、つまらなそうにフェニーチェを見た。
「フェニーチェ、現在の状況は?」
「芳しいとは言えません」
これ以上無いほどにキッパリと言う。
嘘の報告は事態を見誤らせ、悪化させて行く。
それだけは避けねばなるまい。
「ーーほう、原因はなんだ?」
「……プレステイルと名乗る者による妨害のためであります」
「暴風だと……」
ラウが眉をひそめる。
プレステイル……同業者の間でまことしやかに語られる者だ。
確か『悪を刈り取る嵐』とも呼ばれており、悪とされる者には天敵と言っても過言でもない。
ラウ自身、それは単なる噂が独り歩きしたものだと思っていた。
が、しかし同時にそんなに強い奴がいるならば是非手合わせ願いたいと思っている。
思わずラウの口元が喜びに歪む。
「……それは真か?」
「十中八九……まさかラウ様?!」
「噂を確かめねばなるまいよ」
強き者がいるならば、そこに邁進する。
彼は戦いの中ででしか生きられない存在、まさに戦闘狂とでも言うべき人種なのだ。
フェニーチェは諦めたようにため息をついた。
どうせ、この人は制止など無視して勝手に行ってしまうのだろう。
いつもそうだ。
確かに、彼はそれだけの力量があり行動力がある。
慕う部下が多いのも頷ける。
だが、参謀の立場からしてみればドンと構えて欲しいものである。
……進言しても無駄であろうが。
「直ぐに出るぞ」
ラウが目をギラつかせながら玉座から立ち上がった。
「では、お気を付けてーー」
「手土産でも期待していろよ」
彼がこの場から出て行くのを見送ってからフェニーチェは1人呟いた。
さて今回も無事に切り抜けますかね? 、と。
彼女が薄く微笑を浮かべた。




