2-11 暗闇の中で揺らぐ炎髪
フェニーチェの目の前に浮かんだ光の球が先程の戦いの様子を映し出す。
パルイフォックが放った銃弾は確かにプレステイルの額を穿つはずであった。
しかし、結果は銃弾はプレステイルを避けるような軌道で跳んでいった。
放たれた銃弾は直進するもの。
弾丸に外部からの力が加わらない限り、古今東西これは変わらない。
「身体の周りの大気を『加速』させたのですね」
差し詰め風の壁、バリアを張ったと言ったところだろうか。
そのバリアで銃弾から身を守ったのだ。
パルイフォックス自身の油断とも言えるのだが、彼自身勝ちを確信し次のアクションが無かった事も敗因の一つだろう。
これは賞金稼ぎとしては致命的なミスと言える。
フェニーチェはその彼の末路に満足したのか我がことのように薄く笑う。
「……貴方では暴風の役不足でしたか」
しかし、恐るべきは勝負強さ、いや、執念と言うべきか。
映像越しでも気迫を感じるようだ。
何が彼らをそうさせたのだろうか。
……何にせよ、我らが天敵になるに違いない。
直接見た今ならそれも現実味を帯びる。
直接見に行った?
いや、むしろあれは直接会いに行ったと言うべきか。
あの時は参謀という役割を投げ出してでもそこに行ってしまった。
そして、安心したのを覚えている。
何故、私は、そんな真似をしたのか?
何故、私は、そんな感情が湧き出たのか?
私は私が……わからない。
唐突に世界が回る感覚。
激しい頭痛に思わずよろけた。
頭に過るセピア色の映像。
見知らぬ笑顔の子供。
巻き上がる炎、阿鼻叫喚の地獄。
頭痛の波が二度、三度過ぎ去ったあと急にそれが消えてなくなった。
「……そうだ。 私は宇宙海賊の、エグスキの……フェニーチェ。 家族なぞーーいない」
紅の髪が炎のように揺らいだ。




