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疾風!プレステイル  作者: やくも
第二話 刹那の壁を打ち砕け
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2-8 エンゲージ、第三種接近中

「ここならーー」


 セツナは周りを見渡す。

裏口から出て直ぐにある物置小屋の小さな影、ここなら誰にも見つかる心配は無いだろう。


 左手には一本の柄、フェザーエヴォルダーが握られている。

セツナは手の中のそれをじっと見た。

そう、迷う必要は一つもない。


 右腰にフェザーエヴォルダーを当て、まるで刀のように引き抜く。

それには刃は存在せず、その代わりの緑の旋風が渦巻いていた。

セツナは深呼吸一つ、それを掲げる。


「『変身(コネクト)』……!」


 フェザーエヴォルダーが緑の粒子に分解され風が巻き起こる。

次の瞬間、光と風の奔流がセツナを呑み込む。

奔流はセツナの身体に纏わり付き、筋肉、あるいは翼へと変化していく。

クリスタルの仮面、中央の紅い宝玉が光放つ。

もはや少年では無い、バードマン……プレステイルが姿を表した。


「ナユタ、今行くからな」


 プレステイルは前腕部から伸びる翼を広げ跳躍した。

巨大な翼を羽ばたき、弾丸のように空を駆ける。

待っていろ、今すぐ僕が行くから…!


 徒歩で30分、自転車でも10分の道のりであろうと空を行けば関係ない。

直線距離にして約2km、ほんの数十秒の道のりだ。

だのに、何故遠く感じる?

こうしている間にもナユタは……!

焦れば焦る程がんじがらめになって行くようだ。


『セツナ!』


 頭の中に響く彼の声でハッとする。

目の前に赤い火球が迫っていた。

避けるには遅過ぎる。


「ーーくっ…! ブレイドバラム!」


 翼を硬質化し、飛行の慣性そのままに火球を弾き飛ばす。

弾き飛ばされた火球は遠くの空で消滅した。

プレステイルは翼の硬質化を解き、羽ばたきその場に滞空する。


『セツナ、あの建物の上だ!』


 彼が示す方向、商業ビルの上に誰かが、誰かがこちらを見ている。

その女性は夏であるのにロングコート、髪は燃えるように赤く、視線は凍える程に冷たい。


『な?! あなたがここにいるはずが……』

「ほう、勘は働くようですね…、暴風(プレステイル)


 女性は薄く笑った。

そして、彼女はあたかも最初からそこにいなかったかのように消えた。


「待て…! あなたには聞きたい事が……!」


 様々な感情が湧き上がる。

この感情は、そう、彼から流れ込んでくるものだ。

爆発した感情は一時的とは言えセツナの意識を奪うには十分だった。


 プレステイルはごちゃごちゃしかけている脳をハッキリさせるために頭を2、3回軽く振る。

このハプニングは彼の頭の中を混乱させたが、かえってセツナにとっては状況を冷静に見つめることができたと言えるだろう。

焦っていた感情が妙に冷えて冷静になっていく。


『すまない。 消えたものを追うより先にすべきことが有るな』

「二兎追う者は一兎も得ず、だな」

『ニトオ…?』

「…後で教える」


 こんな所で彼は宇宙人なのだという事を再確認するとは。



 何はともあれ、彼女、人質を救出する事。

それが優先すべきことだ。

根本的な解決にはならないが、今は降りかかった火の粉を振り払うしかない。


 当初の目的地、カフェを探す。

そこかーーそれはすぐに見つけることが出来た。

広いとは到底言えない道に警官やら機動隊がそれを取り囲んでいた。

周りにはテレビの中継車やレポーター、カメラマン……はてには野次馬の姿さえ見える。

プレステイルは小さく舌を打つ。


「見つけた…!」


 建物の中、窓際にあの狐男がいた。

その表情は挑発的に笑っていて、仇討ちと言うよりも挑戦すると言った方が自然に見える。

大方、人質もプレステイルを釣るためのエサのようなものだろうか。


「宇宙人ってのは、どうしてこう自信過剰なんだ?」

『私に聞かれても困るな』


 セツナ、どうする?ーー彼は既に決まっている問を投げ掛ける。

プレステイルはニヤリと笑った。


「決まっているだろう?」

『全く、きみも大した自信家だよ』


 彼がため息をつくのが分かる。


 その自信を真っ正面から打ち砕いてやる。

プレステイルは一層力強く羽ばたき、一直線に急降下した。

狙うは奴の首だ。


 その最中、この視界に捉えた狐面が一層口角を吊り上げたような気がした。

勘付く勘付かないはもはや関係無い。


「ブレイドーー」


 神速、弓を引くように右手を引き、翼を硬質化する。

狐男との間に、周りにも阻むものは無い。


「ーーバラム……ッ!」


 突き出された右腕がガラスを砕く。

ガラスの破片が太陽の光を浴びてキラキラ煌めく。

狐の眼光がギラついた。

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